[PA22] 学習理解度の自己判定における基準の有無
Keywords:理解度, 自己判定, 基準
問題と目的
メタ認知など心理学的観点から自己状況の判断について調べられてきた。また,コンピュータプログラミングは情報技術として重要である上,論理的思考力などが期待されて教育に導入されることがある。本報告では,プログラミング学習における理解度の基準標示が有るか無いかによる自己判定の様子を検討することを目的とする。
方 法
対象:2010年4月から2018年2月にかけて大学の情報系学科において,C言語プログラミングの入門科目とそれに続く初級科目に延べ470名の2年生が授業時間外に任意,無償で,理解度自己判定の調査回答に参加した。なお,学習分野面の比較対象として,同じ期間に同じ調査を英語科目の別の420名の1年生に対して実施した。
手順:参加者は15週各回の授業内容および宿題内容に対する理解度について,6件法による調査項目に回答した。6高~1低の6段階の上から3段階目が到達度6割として必要な理解度の基準として標示するか,しないかを年度によって分けた。そのようにして得られた回答を集計した。回答は参加者に返却して振り返りの資料にしてもらった。
結果と分析
理解度の基準標示の有・無と学修結果による上位・下位層の2分化により,参加者を4群に分けた。プログラミング初級科目の結果を回答値とその回答数構成比でFigure 1に示す。入門科目の結果も,ほぼ同様の分布傾向であった。理解度の基準が有ると,上位層は基準の1つ上の段階に,下位層は基準段階に回答値が集まりやすかった。これは,成績評価との連想という基準への参照作用が反映されていると推測される。なお,Figure 1a)において,低い理解度段階にも回答があり,数人に特徴的な傾向が現れたものと考えられる。
また,大学に入る以前から継続して学習している分野である英語科目の30週にわたる集計結果では,そのような基準標示を目安として判定する傾向が弱く,Figure 2に上位層のみを示すように,基準有・無の間で差が小さい分布であった。
考 察
今回の結果からは,限られた調査範囲だが,学習内容の理解度の程度を相対的に判断することが多く,成果を展望して評点と結び付けて基準を内的に設定することは少ないが,例えばコンピュータプログラミングのように作成・動作結果で達成が比較的判断しやすい分野においては,理解程度の基準が外的に標示されていると,それへの参照度が高くなるものと推測される。
このような調査検討は,学生が自身の学修状況を判断する場合などの認知的分析や教育的分析における資料になりうると考えられる。
メタ認知など心理学的観点から自己状況の判断について調べられてきた。また,コンピュータプログラミングは情報技術として重要である上,論理的思考力などが期待されて教育に導入されることがある。本報告では,プログラミング学習における理解度の基準標示が有るか無いかによる自己判定の様子を検討することを目的とする。
方 法
対象:2010年4月から2018年2月にかけて大学の情報系学科において,C言語プログラミングの入門科目とそれに続く初級科目に延べ470名の2年生が授業時間外に任意,無償で,理解度自己判定の調査回答に参加した。なお,学習分野面の比較対象として,同じ期間に同じ調査を英語科目の別の420名の1年生に対して実施した。
手順:参加者は15週各回の授業内容および宿題内容に対する理解度について,6件法による調査項目に回答した。6高~1低の6段階の上から3段階目が到達度6割として必要な理解度の基準として標示するか,しないかを年度によって分けた。そのようにして得られた回答を集計した。回答は参加者に返却して振り返りの資料にしてもらった。
結果と分析
理解度の基準標示の有・無と学修結果による上位・下位層の2分化により,参加者を4群に分けた。プログラミング初級科目の結果を回答値とその回答数構成比でFigure 1に示す。入門科目の結果も,ほぼ同様の分布傾向であった。理解度の基準が有ると,上位層は基準の1つ上の段階に,下位層は基準段階に回答値が集まりやすかった。これは,成績評価との連想という基準への参照作用が反映されていると推測される。なお,Figure 1a)において,低い理解度段階にも回答があり,数人に特徴的な傾向が現れたものと考えられる。
また,大学に入る以前から継続して学習している分野である英語科目の30週にわたる集計結果では,そのような基準標示を目安として判定する傾向が弱く,Figure 2に上位層のみを示すように,基準有・無の間で差が小さい分布であった。
考 察
今回の結果からは,限られた調査範囲だが,学習内容の理解度の程度を相対的に判断することが多く,成果を展望して評点と結び付けて基準を内的に設定することは少ないが,例えばコンピュータプログラミングのように作成・動作結果で達成が比較的判断しやすい分野においては,理解程度の基準が外的に標示されていると,それへの参照度が高くなるものと推測される。
このような調査検討は,学生が自身の学修状況を判断する場合などの認知的分析や教育的分析における資料になりうると考えられる。