[PA30] 現職教員と教員志望学生の授業観に関する研究(2)
教員志望学生の授業観の変容に関する検討
キーワード:授業観, 教員志望学生, 変容
問題と目的
本研究の目的は,教員志望学生の授業観の変容について検討を加えることであった。特に,幼児・児童・生徒の発達と学習に関わる教職科目(学習/学習指導に係る教職科目受講経験),その中でも,学習/学習指導に係る内容の受講前(4月)と受講後(7月)で何からの変化が見られるのかを検討した。
藤田ら(2018)では,授業観尺度の作成および下位構造の検討を行った。その結果,授業観として「児童生徒の積極的関与」「知識獲得」の2側面の存在が示された。しかしながら,藤田らにおいては,参加者への調査が4月(授業開始直後)1回のみであったことから,教職科目受講によって受講前後の授業観に何らかの変容がみられるのかなど,授業観の変容については検討がなされてこなかった。このことから,本研究では,発達と学習に関わる教職科目受講前と後で,授業観に何らかの変容が見られるのかどうかについて検討した。
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生133名(男性93名,女性40名,平均年齢18.2歳 年齢は18歳~23歳)であった。
材料 質問紙(授業観尺度):予備調査によって得られた36項目で構成され,1(まったくあてはまらない)~4(非常によくあてはまる)の4件法の尺度であった。
手続き 調査は,2017年4月~7月にかけて,心理学関係の授業(発達と学習に関わる授業)の一部を利用し,集団で行われた。まず,受講前(4月)の授業において,授業観をたずねるための質問紙調査を実施した。その際,回答は任意であり,
本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた。次に,受講後(7月)にも上記と同様の手続きで調査を実施した。
結果と考察
藤田ら(2018)で見出された下位尺度において,授業観に何らかの変容が見られるのかどうかを検討するため,対応のあるt検定を行った。その結果,「知識獲得」(第2因子)においてt値が有意であり,受講後(7月)の評定値が低かった。また,「児童生徒の積極的関与」(第1因子)においてはt値が有意であり,受講後(7月)の評定値が低くなる傾向が見られた。
次に,各々の下位尺度を構成する項目ごとに,受講前(4月)―受講後(7月)間で対応のあるt検定を行ったところ,以下の結果が得られた(Table 1参照)。
まず「児童生徒の積極的関与」では項目7「みんなが楽しく学べる授業」において,授業受講前(4月)よりも授業受講後(7月)の評定値の方が低くなった。項目12「時間の経つのが早い授業」,項目22「生徒が楽しく学べる授業」においても同様の結果が得られた。
次に,「知識獲得」では,項目2「説明がわかりやすい授業」,項目24「誰もが内容を理解できる授業」,項目33「知らないことを学べる授業」において,「児童生徒の積極的関与」尺度同様の結果が得られた。
これらの結果が得られた理由として,授業受講後の方が参加者自身,学習指導を行う立場から授業というものを捉える機会を得たことにより,授業そのものを厳しめに捉えるようになったことが考えられる。
本研究の目的は,教員志望学生の授業観の変容について検討を加えることであった。特に,幼児・児童・生徒の発達と学習に関わる教職科目(学習/学習指導に係る教職科目受講経験),その中でも,学習/学習指導に係る内容の受講前(4月)と受講後(7月)で何からの変化が見られるのかを検討した。
藤田ら(2018)では,授業観尺度の作成および下位構造の検討を行った。その結果,授業観として「児童生徒の積極的関与」「知識獲得」の2側面の存在が示された。しかしながら,藤田らにおいては,参加者への調査が4月(授業開始直後)1回のみであったことから,教職科目受講によって受講前後の授業観に何らかの変容がみられるのかなど,授業観の変容については検討がなされてこなかった。このことから,本研究では,発達と学習に関わる教職科目受講前と後で,授業観に何らかの変容が見られるのかどうかについて検討した。
方 法
調査参加者 近畿地方の大学生133名(男性93名,女性40名,平均年齢18.2歳 年齢は18歳~23歳)であった。
材料 質問紙(授業観尺度):予備調査によって得られた36項目で構成され,1(まったくあてはまらない)~4(非常によくあてはまる)の4件法の尺度であった。
手続き 調査は,2017年4月~7月にかけて,心理学関係の授業(発達と学習に関わる授業)の一部を利用し,集団で行われた。まず,受講前(4月)の授業において,授業観をたずねるための質問紙調査を実施した。その際,回答は任意であり,
本調査に同意をした者だけが回答するよう求めた。次に,受講後(7月)にも上記と同様の手続きで調査を実施した。
結果と考察
藤田ら(2018)で見出された下位尺度において,授業観に何らかの変容が見られるのかどうかを検討するため,対応のあるt検定を行った。その結果,「知識獲得」(第2因子)においてt値が有意であり,受講後(7月)の評定値が低かった。また,「児童生徒の積極的関与」(第1因子)においてはt値が有意であり,受講後(7月)の評定値が低くなる傾向が見られた。
次に,各々の下位尺度を構成する項目ごとに,受講前(4月)―受講後(7月)間で対応のあるt検定を行ったところ,以下の結果が得られた(Table 1参照)。
まず「児童生徒の積極的関与」では項目7「みんなが楽しく学べる授業」において,授業受講前(4月)よりも授業受講後(7月)の評定値の方が低くなった。項目12「時間の経つのが早い授業」,項目22「生徒が楽しく学べる授業」においても同様の結果が得られた。
次に,「知識獲得」では,項目2「説明がわかりやすい授業」,項目24「誰もが内容を理解できる授業」,項目33「知らないことを学べる授業」において,「児童生徒の積極的関与」尺度同様の結果が得られた。
これらの結果が得られた理由として,授業受講後の方が参加者自身,学習指導を行う立場から授業というものを捉える機会を得たことにより,授業そのものを厳しめに捉えるようになったことが考えられる。