日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-76)

2018年9月15日(土) 15:30 〜 17:30 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号15:30~16:30 偶数番号16:30~17:30

[PC53] 嫉妬と内的作業モデルおよび自尊心との関連

伊藤俊樹1, 佐々木真子#2, 小田切大河#3, 筒井速人#4, 前川芽衣#5, 原凛太郎#6 (1.神戸大学, 2.神戸大学, 3.神戸大学, 4.神戸大学, 5.神戸大学, 6.神戸大学)

キーワード:嫉妬, 内的作業モデル, 自尊心

問題と目的
 嫉妬とは,神野(2017)によると自分が占有しているパートナーや価値あるものとの重要な関係が,ライバルのせいで喪失の脅威にさらされたとき経験される感情とされる。本研究では嫉妬と関連する概念として内的作業モデルと自尊心に注目した。本研究では,神野(2016)による嫉妬を多次元的に捉えた尺度を用いて,内的作業モデル,自尊心と嫉妬との関連を調べる事を目的とする。また,神野(2015)によると,嫉妬を抱えた際にどうそれを表現・対処していくのかということも重要である。よって本研究では嫉妬を感じた際に予測される行動についても合わせて調査する。

方  法
調査対象 大学生185名(男性86名,女性99名,平均年齢20.3歳,SD=1.26)
質問紙の構成 ①性別,年齢,学年
②内的作業モデル 戸田(1988)の内的作業モデル尺度を用いた。安定,アンビバレント,回避の3因子。③自尊心 Rosenberg(1965)の自尊感情尺度の山本ほか(1982)による日本語版を用いた。④嫉妬感情 神野(2016)の多次元恋愛嫉妬尺度。猜疑的認知,排他的感情,警戒行動の3因子。⑤嫉妬行動 神野(2017)の架空の浮気場面への予測行動尺度を用いた。攻撃志向,沈黙志向,別れ志向,対話志向,ライバル志向の5因子。

結  果
 愛着モデル,自尊尺度と多次元嫉妬尺度の下位尺度の相関を求めたところ,アンビバレントと猜疑の間に1%水準で有意な弱い正の相関が,また回避と対話,自尊と猜疑,沈黙の間に1%水準で有意な弱い負の相関が見られた。更に,愛着尺度の下位項目ごとに合計得点の上位4分の1と下位4分の1を抽出し,高群・低群間の嫉妬尺度の平均値の差を検定した。その結果愛着のすべての下位尺度と猜疑との間に1%水準で有意差または有意傾向が見られ,その他には安定と別れ,アンビバレントと沈黙との間に有意傾向が,回避と対話との間に5%水準で有意差が見られた。
更に愛着モデルの3つの下位尺度得点を元にして,被験者を3つのクラスターに分類した。3つのクラスターを不安定複合群,平均群,アンビバレント・回避低群と名付け,各群間の嫉妬尺度得点の平均値の差を検定した。結果,猜疑,沈黙においては不安定複合群,平均群の方がアンビバレント・回避低群の被検者群よりも大きく,対話においてはアンビバレント・回避低群の被検者群の方が不安定複合群,平均群の被検者群よりも大きかった。

考  察
内的作業モデルと嫉妬感情との関係
 結果から,安定傾向が低く,アンビバレント傾向が高く,また親密性回避が高ければ猜疑しやすいと考えられる。自尊心との関係ははっきり認められなかった。クラスター分析より,不安定複合群および平均群がアンビバレント・回避低群よりも猜疑の得点が有意に高かったことからも,愛着スタイルの不安定感により猜疑が生じ易いと言えるだろう。
内的作業モデルと架空の浮気場面への予測行動との関係
 結果より回避と対話の間には負の関係がある事がわかった。回避傾向の高い人は,ストレス時に愛着対象への物理的もしくは心的な近接的要求が満たされないと,愛着対象から距離をとろうとする。故に,嫉妬体験時に相手と距離をとり,対話が解決に繋がると思っていない為,対話志向が低いと考えられる。又,アンビバレントと沈黙の間には正の関係がある事が分かった。全体的に自信がなく不安感が強いアンビバレントでは,何も言えずに,抑圧的な動機を含む沈黙をしてしまうと考えられる。一方で,クラスター分析において,不安定複合群および平均群はアンビバレント・回避低群よりも沈黙の得点が有意に高く,対話の得点が有意に低かったことから,アンビバレントと回避の両方が相互に作用しあって嫉妬感情体験時の予測行動に影響を及ぼしていると推測できる。更に結果から,安定傾向が低いと別れ志向が高くなると考えられる。先に述べた安定傾向が低いと猜疑が高くなり,猜疑が高くなると別れ志向が高くなることから,以上の結果が生じたと考えられる。