日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-70)

2018年9月16日(日) 10:00 〜 12:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号10:00~11:00 偶数番号11:00~12:00

[PD08] 友人関係において傷ついた出来事を他者に相談することについて

他者への相談の有無と相手の反応の違いによる比較

永井暁行 (北星学園大学)

キーワード:友人関係, 傷つき経験

目  的
 本研究では,友人関係の中で生じた傷ついた経験を,その後他者に相談したか否か,またその時の相手の反応によって,傷ついた経験の影響をどのように感じるかを検討した。
 青年にとって友人関係は重要な関係であると言われている。そのような友人関係の中で,時に青年が傷つくということも報告されている(Leary et al., 1998; 小田部他, 2009)。
 傷つくということは否定的な感情を伴う,一般的にネガティブな経験である。しかし,ネガティブな経験に対して意味づけが行われることによって,その経験を肯定的なものとして捉える過程も示されている(Park, 2008, 2010)。
 意味づけの過程は必ずしも個人の内部で完結するわけではなく,他者との関わりによっても影響を受ける。たとえば,他者からの支えを感じられないことは悲観的な意味づけに繋がり,ネガティブな出来事によって自身への評価が低くなることが示されている(松下,2007)。
 そこで本研究では,友人関係で生じた傷つき経験を大学生がどのように感じているのかを,他者への相談の有無から検討する。

方  法
 調査は2017年7月に行った。有効回答数は199名であり(男性57名,女性141名,不明1名),平均年齢は19.16歳(SD=1.40)であった。いずれの調査においても各大学の授業担当者の了解を得た上で調査用紙を配布し,自宅で回答後翌週に質問用紙の提出を求めた。
 質問用紙の配布の際には,調査の目的についての説明と,以下の倫理的な配慮を行い,同意が得られた場合に質問用紙への回答を求めた。第1に回答をしないことによる不利益がないことを伝えた。第2に調査の途中で回答をやめても不利益がないことを伝えた。第3に調査によって得られた個人情報は厳重に管理することを伝えた。
 本研究における調査内容は1.フェイスシート,2.認知的評価尺度(加藤,2001),3. 友人関係における傷つき経験の影響尺度(永井,2017),4. 知覚された相談相手の反応尺度(高橋,2013)から構成された。

結  果
 知覚された相談相手の反応に対してward法,平方ユークリッド距離を用いたクラスタ分析を行った。その結果,3クラスタに分類することができた。第1クラスタを受容群(n=26),第2クラスタを受容・助言群(n=60),第3クラスタを反応不十分群(n=41)とした。以下,これらのクラスタに相談なし群(n=59)を加えて分析を行った。
 相談の有無および相談相手の反応を独立変数とし,傷つき経験の影響を従属変数とした分散分析を行った(Table 1)。その結果,相談をしなかった大学生に比べて,相談をした相手からの受容を受けた大学生と,受容と解決の示唆や助言を受けた大学生は,傷つき経験を引きずりにくいことが明らかになった。また,同じく相談をしなかった大学生に比べて,相談をした相手からの受容と助言を受けた大学生は,新しい視点や態度の獲得や友人への気遣いの増加を感じやすかった。

結  論
 相談の相手が受容的な態度をとるような相手であれば,傷つき経験を引きずらないために相談することが有効であることが示された。また,さらに解決への示唆や助言を与えてくれる相手であれば,傷つき経験による影響を肯定的にとらえることにも繋がることが示唆された。