[PD39] 恋愛関係崩壊後のアタッチメント・ネットワーク
横断的研究による検討
キーワード:アタッチメント, アタッチメント対象, 関係崩壊
問題と目的
アタッチメントとは,「ストレスフルな状況において,特定の他者へ物理的・心理的に近接し,安心感を得ようとする傾向」であり,アタッチメントを向けられる人物はアタッチメント対象と呼ばれる(Bowlby, 1969/1982)。人は,複数のアタッチメント対象とのつながり,すなわちアタッチメント・ネットワークを有しており,青年期や成人期では,恋人を主たるアタッチメント対象として選択しやすい。しかし,恋愛関係が崩壊すると,主たるアタッチメント対象であった恋人を失うことになり,アタッチメント・ネットワークの再構成が必要となる。本研究では,6ヶ月以内に失恋をした成人を対象にし,元恋人がアタッチメント・ネットワークの中で,どのような役割を果たしているかを横断的研究によって検討する。
方 法
調査対象 (株)マクロミルが保有するwebモニターの中から半年以内に恋人との関係崩壊を経験した443名(男性118名,女性325名,平均年齢26.1±4.11歳)を対象とした。元恋人との平均交際期間は24.2±20.19ヶ月,関係崩壊から平均3.1±1.69ヶ月経過。 調査項目 (1)WHOTO (Fraley & Davis, 1997) (2)新しい恋人の有無。
結果と考察
元恋人がアタッチメント対象となっているかを検討するため,WHOTOの各項目(近接性探索,安全な避難場所,安全基地が各2項目)における順位をもとに得点を算出した。得点はDoherty & Feeney(2004)を援用し,1位=3点,2位=2点,3位=1点とした。
アタッチメント対象としての元恋人 各アタッチメント機能に対して,対象(参加者内)×新しい恋人(参加者間)の分散分析を行った。その結果(Table 1),近接性探索の得点は,友人>元恋人,父親>母親の順に得点が高かった。安全な避難場所の得点は,友人>元恋人,父親,母親の順に得点が高かった。安全基地は,父親,友人>元恋人>母親の順に得点が高かった。これらの結果から,成人において,関係崩壊後のアタッチメント・ネットワークにおいて友人が重要な役割を果たしていることが示唆される。
元恋人のアタッチメント機能の関連要因 元恋人のアタッチメント機能と関連する要因を検討するため,性別,年齢,新しい恋人の有無,元恋人との交際期間,失恋からの経過期間,別れの主導権を説明変数とした重回帰分析を行った(Table 2)。
その結果,いずれのアタッチメント機能も自分から別れを切り出したことが,得点の低さと関連した。この結果は,別れの主導権が自分にあることが元恋人へのアタッチメント欲求を低下させることを示しており,別れを切り出された人は元恋人への思い残しが強いとする先行研究(Fagundes, 2011; LeBel & Campbell, 2009; Spielman et al., 2012)と整合していた。また,関係崩壊からの期間は,安全な避難場所と負の関連を示した。安全な避難場所機能は,交際してからある程度時間を経過しなければ形成されない(Fraley & Davis, 1997; Zeifman & Hazan, 1994)。そのため,失恋直後は,安全な避難場所機能を求められる人物が元恋人しかおらず,得点が減衰しにくい可能性がある。
アタッチメントとは,「ストレスフルな状況において,特定の他者へ物理的・心理的に近接し,安心感を得ようとする傾向」であり,アタッチメントを向けられる人物はアタッチメント対象と呼ばれる(Bowlby, 1969/1982)。人は,複数のアタッチメント対象とのつながり,すなわちアタッチメント・ネットワークを有しており,青年期や成人期では,恋人を主たるアタッチメント対象として選択しやすい。しかし,恋愛関係が崩壊すると,主たるアタッチメント対象であった恋人を失うことになり,アタッチメント・ネットワークの再構成が必要となる。本研究では,6ヶ月以内に失恋をした成人を対象にし,元恋人がアタッチメント・ネットワークの中で,どのような役割を果たしているかを横断的研究によって検討する。
方 法
調査対象 (株)マクロミルが保有するwebモニターの中から半年以内に恋人との関係崩壊を経験した443名(男性118名,女性325名,平均年齢26.1±4.11歳)を対象とした。元恋人との平均交際期間は24.2±20.19ヶ月,関係崩壊から平均3.1±1.69ヶ月経過。 調査項目 (1)WHOTO (Fraley & Davis, 1997) (2)新しい恋人の有無。
結果と考察
元恋人がアタッチメント対象となっているかを検討するため,WHOTOの各項目(近接性探索,安全な避難場所,安全基地が各2項目)における順位をもとに得点を算出した。得点はDoherty & Feeney(2004)を援用し,1位=3点,2位=2点,3位=1点とした。
アタッチメント対象としての元恋人 各アタッチメント機能に対して,対象(参加者内)×新しい恋人(参加者間)の分散分析を行った。その結果(Table 1),近接性探索の得点は,友人>元恋人,父親>母親の順に得点が高かった。安全な避難場所の得点は,友人>元恋人,父親,母親の順に得点が高かった。安全基地は,父親,友人>元恋人>母親の順に得点が高かった。これらの結果から,成人において,関係崩壊後のアタッチメント・ネットワークにおいて友人が重要な役割を果たしていることが示唆される。
元恋人のアタッチメント機能の関連要因 元恋人のアタッチメント機能と関連する要因を検討するため,性別,年齢,新しい恋人の有無,元恋人との交際期間,失恋からの経過期間,別れの主導権を説明変数とした重回帰分析を行った(Table 2)。
その結果,いずれのアタッチメント機能も自分から別れを切り出したことが,得点の低さと関連した。この結果は,別れの主導権が自分にあることが元恋人へのアタッチメント欲求を低下させることを示しており,別れを切り出された人は元恋人への思い残しが強いとする先行研究(Fagundes, 2011; LeBel & Campbell, 2009; Spielman et al., 2012)と整合していた。また,関係崩壊からの期間は,安全な避難場所と負の関連を示した。安全な避難場所機能は,交際してからある程度時間を経過しなければ形成されない(Fraley & Davis, 1997; Zeifman & Hazan, 1994)。そのため,失恋直後は,安全な避難場所機能を求められる人物が元恋人しかおらず,得点が減衰しにくい可能性がある。