[PD49] 学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度の作成
キーワード:学生相談, 利用勧奨, 利益とリスク予期
問 題
大学生の自らの抑うつ症状に対する専門家への援助要請を促す要因として身近な友人からの利用勧奨が挙げられている(Vogel et al., 2007)。利用勧奨意図の関連要因として,利用勧奨に伴う自他への損益の予期が示唆されているが(河合,2016 ; 木村,2015),その損益を体系的に測定できる尺度は存在しない。
本研究では,身近な友人が抑うつ症状を呈する身近な仲のよい友人に対する学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度を作成し,その妥当性と信頼性を検証することを目的とする。
方 法
対象者と手続き 本研究は予備調査,調査Ⅰ,調査Ⅱの3つの調査から成り,それぞれ異なる対象者に対してweb上で質問紙調査を実施した。予備調査の調査対象者はインターネット調査会社Xにモニター登録している大学(院)生500名(男性201名,女性295名,その他4名:平均年齢21.34歳,SD=2.07)であった。調査Ⅰの調査対象者は予備調査と同じ調査会社にモニター登録している大学生200名(男性100名,女性100名:平均年齢21.27歳,SD=2.06)であった。調査Ⅱの調査対象者はインターネット調査会社Zにモニター登録している大学生310名(男女とも155名,平均年齢21.36歳,SD=1.20)であった。尚,本研究は,著者の所属する大学の研究倫理審査委員会の承認を受け実施した。
質問紙 予備調査では,うつ病の状態や症状を呈する人物が描かれた事例を呈示し,その人物に対象者の身近な仲のよい友人を想定してもらった上で,当該友人を援助する・しないことに伴う損益について自由記述式回答を求めた。調査Ⅰでは,①学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度原案(42項目6件法),②学生相談機関イメージ尺度(伊藤,2006),③心理専門職への援助要請に対する態度尺度(大畠・久田,2010),④うつ病事例と同様の経験の有無,専門家からの被援助経験の有無等を尋ねた。調査Ⅱでは,①学生相談機関への利用を勧める意図(1項目7件法),②学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度(26項目6件法),③学生相談の利用メリット尺度(木村・水野,2008)等を尋ねた。
結果と考察
調査Ⅰ 予備調査にて収集された自由記述式回答に基づき42項目から成る学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度原案を作成した。因子負荷量.40未満の項目や複数の因子に対して因子負荷量.40以上であった項目を削除し,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を繰り返し行った結果,最終的に5因子が抽出された(Table1)。また,構成概念の検証のために関連尺度との間の相関係数を算出した(Table2)。以上の結果から,信頼性と一定程度の妥当性(外的側面の証拠)を有することが示唆された。
調査Ⅱ 調査Ⅰとは異なる関連尺度(学生相談の利用メリット尺度)との関連から構成概念を検証することに加え,他のサンプルにおいても調査Ⅰで抽出された因子構造が再現されるか検証するため確認的因子分析を行った。基準関妥当性の検証の結果はTable2の通りであった。確認的因子分析の結果,CFI=.92,RMSEA=.06,SRMR=.06であり,適合度は許容範囲内であった。
付 記
本研究はJSPS科研費 JP16H06708の助成を受け実施した。
大学生の自らの抑うつ症状に対する専門家への援助要請を促す要因として身近な友人からの利用勧奨が挙げられている(Vogel et al., 2007)。利用勧奨意図の関連要因として,利用勧奨に伴う自他への損益の予期が示唆されているが(河合,2016 ; 木村,2015),その損益を体系的に測定できる尺度は存在しない。
本研究では,身近な友人が抑うつ症状を呈する身近な仲のよい友人に対する学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度を作成し,その妥当性と信頼性を検証することを目的とする。
方 法
対象者と手続き 本研究は予備調査,調査Ⅰ,調査Ⅱの3つの調査から成り,それぞれ異なる対象者に対してweb上で質問紙調査を実施した。予備調査の調査対象者はインターネット調査会社Xにモニター登録している大学(院)生500名(男性201名,女性295名,その他4名:平均年齢21.34歳,SD=2.07)であった。調査Ⅰの調査対象者は予備調査と同じ調査会社にモニター登録している大学生200名(男性100名,女性100名:平均年齢21.27歳,SD=2.06)であった。調査Ⅱの調査対象者はインターネット調査会社Zにモニター登録している大学生310名(男女とも155名,平均年齢21.36歳,SD=1.20)であった。尚,本研究は,著者の所属する大学の研究倫理審査委員会の承認を受け実施した。
質問紙 予備調査では,うつ病の状態や症状を呈する人物が描かれた事例を呈示し,その人物に対象者の身近な仲のよい友人を想定してもらった上で,当該友人を援助する・しないことに伴う損益について自由記述式回答を求めた。調査Ⅰでは,①学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度原案(42項目6件法),②学生相談機関イメージ尺度(伊藤,2006),③心理専門職への援助要請に対する態度尺度(大畠・久田,2010),④うつ病事例と同様の経験の有無,専門家からの被援助経験の有無等を尋ねた。調査Ⅱでは,①学生相談機関への利用を勧める意図(1項目7件法),②学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度(26項目6件法),③学生相談の利用メリット尺度(木村・水野,2008)等を尋ねた。
結果と考察
調査Ⅰ 予備調査にて収集された自由記述式回答に基づき42項目から成る学生相談機関の利用勧奨に伴う利益とリスク予期尺度原案を作成した。因子負荷量.40未満の項目や複数の因子に対して因子負荷量.40以上であった項目を削除し,探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)を繰り返し行った結果,最終的に5因子が抽出された(Table1)。また,構成概念の検証のために関連尺度との間の相関係数を算出した(Table2)。以上の結果から,信頼性と一定程度の妥当性(外的側面の証拠)を有することが示唆された。
調査Ⅱ 調査Ⅰとは異なる関連尺度(学生相談の利用メリット尺度)との関連から構成概念を検証することに加え,他のサンプルにおいても調査Ⅰで抽出された因子構造が再現されるか検証するため確認的因子分析を行った。基準関妥当性の検証の結果はTable2の通りであった。確認的因子分析の結果,CFI=.92,RMSEA=.06,SRMR=.06であり,適合度は許容範囲内であった。
付 記
本研究はJSPS科研費 JP16H06708の助成を受け実施した。