[PE16] 学習における動機づけの増減に関する素人理論VII
動機づけ増減認識と動機づけ変数との関係
キーワード:素人理論, 認識, 動機づけ
近年,学習に関する動機づけには様々な理論があり,それぞれの理論は独自性をもって発展している。一方でこれらの理論は,当初は学習者の経験に基づいて発展してきたかもしれないが,現在では必ずしもその傾向はみられない。そこで,加藤他(2015)と中川他(2015)は学習者がもつ動機づけの増減に関する素人理論を自由記述によって測定し,中川他(2017)と山口他(2017)は自由記述からカテゴリーとその項目を作成し,因子構造を提案している。
本研究(本件および2, 3件目)では,山口他(2017)が提案した動機づけの素人理論の下位概念について,既存の動機づけ理論(達成動機,達成目標,自律的学習動機)との関係性に注目する。本件では,動機づけの増減に関する認識の尺度を確認的因子分析によって因子構造を再確認した上で,達成動機,達成目標,自律的学習動機との相関関係を明確にする。
方 法
参加者と手続き
都内の私立大学に通う大学生98名(女性62名; Mage = 20.19, SDage = 1.96, Rangeage = 19 - 31, 年齢不明1名)を対象とした。調査は,授業時間中に講師の協力を経て実施した。上記の学生は,研究の趣旨に同意した参加者である。調査の趣旨に同意できない,あるいは一つ以上の尺度に無回答の参加者は除外している。
使用尺度
山口他(2017)の動機づけの増減に関する認識の尺度(以降,動機づけ増減認識尺度)を用いた。既存の動機づけ理論の尺度として達成動機(光浪, 2010),達成目標(山口, 2015),自律的学習動機(西村他, 2011)を
取り上げた。
結 果
因子構造の確認 増加認識尺度(χ2 [164] = 282.51, RMSEA = .08, CFI = .71, TLI = .67, SRMR = .09)および減少認識尺度(χ2 [164] = 331.82, RMSEA = .10, CFI = .63, TLI = .57, SRMR = .12)のいずれにおいても適合度は良いとはいえなかった。ただし,内的整合性の指標(ωs > .70)の値は受け入れられる値であり,以降ではTable 1に示すような下位尺度の構成を用いることとした。
相関関係の検討 動機づけ増減認識と既存の動機づけとの単相関をTable 1に示す。相関係数は大きくはないが,認識ごとに,有意な相関関係が示された動機づけ変数は異なった。
考 察
まず,確認的因子分析の結果,増加・減少のいずれにおいても適合度は良いとはいえなかった。この点について山口他(2017)の因子構造が普遍的でなかったことも指摘できるが,内的整合性は悪くなく,またそもそも1因子あたりの項目数が多いことや,本研究のサンプルサイズが小さいことも適合度が良くない原因の一つとして上げられる。そのため,本研究では山口他(2017)の提案した因子構造を採用することとした。
認識尺度と動機づけ変数との相関の解釈について, 例えば,課題ができる見通しがたつと動機づけが上がる有能実感が高い学習者は失敗や劣等感を避ける傾向にあることや,外的な要因で動機づけが下がる外的合理化が高い学習者は同じく失敗を回避したい傾向にあるが,内発的動機づけも低いといった違いがみられた。
引用文献
中川華林他 (2017). 日本教育心理学会第59回総会発表論文集, 552.
本研究(本件および2, 3件目)では,山口他(2017)が提案した動機づけの素人理論の下位概念について,既存の動機づけ理論(達成動機,達成目標,自律的学習動機)との関係性に注目する。本件では,動機づけの増減に関する認識の尺度を確認的因子分析によって因子構造を再確認した上で,達成動機,達成目標,自律的学習動機との相関関係を明確にする。
方 法
参加者と手続き
都内の私立大学に通う大学生98名(女性62名; Mage = 20.19, SDage = 1.96, Rangeage = 19 - 31, 年齢不明1名)を対象とした。調査は,授業時間中に講師の協力を経て実施した。上記の学生は,研究の趣旨に同意した参加者である。調査の趣旨に同意できない,あるいは一つ以上の尺度に無回答の参加者は除外している。
使用尺度
山口他(2017)の動機づけの増減に関する認識の尺度(以降,動機づけ増減認識尺度)を用いた。既存の動機づけ理論の尺度として達成動機(光浪, 2010),達成目標(山口, 2015),自律的学習動機(西村他, 2011)を
取り上げた。
結 果
因子構造の確認 増加認識尺度(χ2 [164] = 282.51, RMSEA = .08, CFI = .71, TLI = .67, SRMR = .09)および減少認識尺度(χ2 [164] = 331.82, RMSEA = .10, CFI = .63, TLI = .57, SRMR = .12)のいずれにおいても適合度は良いとはいえなかった。ただし,内的整合性の指標(ωs > .70)の値は受け入れられる値であり,以降ではTable 1に示すような下位尺度の構成を用いることとした。
相関関係の検討 動機づけ増減認識と既存の動機づけとの単相関をTable 1に示す。相関係数は大きくはないが,認識ごとに,有意な相関関係が示された動機づけ変数は異なった。
考 察
まず,確認的因子分析の結果,増加・減少のいずれにおいても適合度は良いとはいえなかった。この点について山口他(2017)の因子構造が普遍的でなかったことも指摘できるが,内的整合性は悪くなく,またそもそも1因子あたりの項目数が多いことや,本研究のサンプルサイズが小さいことも適合度が良くない原因の一つとして上げられる。そのため,本研究では山口他(2017)の提案した因子構造を採用することとした。
認識尺度と動機づけ変数との相関の解釈について, 例えば,課題ができる見通しがたつと動機づけが上がる有能実感が高い学習者は失敗や劣等感を避ける傾向にあることや,外的な要因で動機づけが下がる外的合理化が高い学習者は同じく失敗を回避したい傾向にあるが,内発的動機づけも低いといった違いがみられた。
引用文献
中川華林他 (2017). 日本教育心理学会第59回総会発表論文集, 552.