The 60th Annual Meeting of the Japanese Association of Educational Psychology

Presentation information

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-71)

Sun. Sep 16, 2018 1:30 PM - 3:30 PM D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:30~14:30 偶数番号14:30~15:30

[PE20] タブレットを用いた音読学習教材の活用可能性

小学校3年生のペア学習において

東原文子1, 鳥海楓華2 (1.聖徳大学, 2.聖徳大学大学院)

Keywords:音読, ICT, 小学生

はじめに
 新学習指導要領の小学校国語解説では,中学年での思考力,判断力,表現力等C(読むこと)において「同じ文章を読んでも,一人一人の感じ方などに違いがあることに気づくとともに,互いの感じたことや考えたことを理解し,他者の感じ方などの良さに気づくことが大切である」とされている。すなわち,協働の学びの中で,「感じ方」を知らせ合うにはどうしたらよいかを研究する必要があるであろう。東原(2017)は,表計算ソフトMicrosoft Excelを利用した簡易な教材で,小学生がタブレットの画面上で,文字の大きさや背景色を変えることで,詩のイメージを視覚化し,音読表現に活かすという学習を展開した。しかしながら,成果を客観的に示すことができなかった。そこで,本研究ではその教材を用いた学習と,前後の児童の音読を録音し,それらの記録から,教材を用いて詩のイメージを考える学習が音読に活かされるのか調べることを目的とした。

方  法
(1) 対象・時期・場所
 筆者がICT活用を担当している小学校で,2018年2月の朝学習時間(40分)に,3年生2名に対し東原(2017)の教材を用いた音読ペア学習を行なった。聖徳大学倫理委員会の指導下で実施し,事前に校長・参加児・保護者の同意を得ている。
(2) 手続き
・プレ音読:初期状態(文字の大きさは16ポイントで揃えてあり,背景色なし)での音読。
・ペア学習:タブレットを操作し,話し合いながら,文字の大きさや背景色(それ以外は変えられないように設定してある)を変える学習。
・タブレットを見ながらの音読:タブレット画面での文字の大きさや背景色を見ながらの音読。
・ポスト音読:プレ音読同様初期状態に戻して。
(3) 分析方法
 プレ音読とポスト音読の波形を比較した(使用ソフトNCH WavePad ver.7.08)。また,どのような意図があってその背景色を使ったのか等の教材操作の根拠を録音から抽出し,考察に加えた。

結果及び考察
 ペア学習時A児は考えを発話しながら操作していたが,B児は発言が少なかった。詩の文字の大きさや背景色を変える操作は,1フレーズずつ交代して行った。完成後,「今」の文字の背景色を青くしたのはなぜか尋ねてもB児は答えられなかったが,A児が,「ぼくが思うにはなんか,澄み切ってるような感じ」と代弁するのを否定しなかった。文字の大きさについては,A児が大きくしているのを見て,「自分も」と言いながら,A児のイメージに合わせるように大きさを再調整していた。その結果,「今」は最も大きくなった(26ポイント)。A児の詩の音読の音声波形の一部をプレポストで比較したのがFigure 1である。縦軸(強さ)と横軸(時間)のスケールを揃えた。ポストの方がプレよりも声は大きくなり,特に,「ああ 今」の所を強調するように,その前後の「間」(ポーズ)が長くなっている。余郷(2000)の小学校2年生を対象とした研究では,指導後は指導前よりも「間」の時間が長くなり,指導後は意味構造やイメージに即した「間」を取る傾向が認められたと述べている。本研究でも,教材で文字の色や大きさで示した詩に対する「イメージ」が音読の変化に結びついた可能性が考えられる。今後は第三者による印象評定を用いた音読変化の評価を加えていきたい。

引用文献
東原文子他(2017)表計算ソフトを用いたタブレットPC用教材の小学生ペア学習における利用可能性.聖徳大学児童学研究所紀要,19,51-57.
余郷裕次(2000)パソコンによる音読音声の分析―会話表現の音読を中心に―.大阪国語教育研究会編『野地潤家先生傘寿記念論集』,63-72.