[PE26] ほめ言葉とフィードバックによる課題遂行の変化
計算課題とパズル課題を用いた検討
キーワード:ほめ言葉, フィードバック, 課題遂行
目 的
課題遂行を促す目的で「ほめ」が用いられることがある。しかしながら,「ほめ」は常に有効に機能するとは限らない。高崎(2011)は,インタビューデータの分析を行い,ほめが効果的でなかった状況として,ほめる側とほめられる側の考え方にずれが生まれる8つのパターンを見出している。
本研究では,100マス計算課題とパズル課題を用いて,会話の中でほめることが,課題遂行に有効に機能するのか明らかにすることを目的とした。加えて,結果のフィードバックの効果と比較検討を行った。
方 法
実験参加者 東北地区の私立大学の大学生40名(男性22名,女性18名,平均20.90歳,SD=1.37)。
実験条件 ほめ言葉(あり・なし)×フィードバック(あり・なし)の4条件に,10名ずつの参加者を無作為に割り当てた。
実験課題 引き算を行う百マス計算とラッキーパズル(はなやま株式会社)を用いた。
実験手続き 先に計算課題,後にパズル課題の順で,個別の実験を行った。
計算課題では,「計算方法は(縦)-(横)であること」「計算の向きは縦方向,横方向のどちらへ行ってもよいこと」を伝え,質問の有無を確認した後,参加者には計測時間を伝えず,3分間の遂行量とエラー数を計測した。計測後,フィードバックあり群では,エラー数を参加者と振り返った。また,ほめ言葉あり群では,課題を参加者と振り返りつつ「他の参加者よりも進んでいます」「課題を遂行するスピードが速いですね」等の声かけを行った。ほめ言葉なし群では,参加者と雑談を行い,休憩を2分間とった。その後,同様の課題を行った。
パズル課題では,ピースを見せながら「7個のピースを,入っていた箱へ戻すこと」が課題であることを伝えた。計算課題と同様,参加者へは計測時間(1分間)を伝えなかった。課題終了後,フィードバックあり群では,参加者と一緒に振り返るため「箱へはめたピースのうち,何個が正しい位置へ置けていると思うか」という質問を行い,参加者の答えに対し,正答数を答えた。フィードバックなし群は,雑談を行った。ほめ言葉あり群では,課題を参加者と振り返りつつ「もうちょっとでできそう」「すごく惜しいです」等の声かけを行った。2分後,ヒントとして1つのピースを正答の部分へ置き,再度課題を行った。2回とも成功しなかった参加者には,時間があるので延長して課題を行うかと尋ね,やると答え場合は,再度課題に取り組み始めてから成功するまで,または諦めるまでの時間を計測した。参加者が諦めた時点で正答を示し,終了した。
結果と考察
計算課題 遂行数を従属変数として分散分析を行った結果,測定時期の主効果のみが有意であった(F(1, 36)=18.42, p<.001, η2=.04)。すべての条件で遂行数は増加した。また,エラー数を従属変数として分散分析を行った結果,2次の交互作用が有意だった(F(1, 36)=5.82, p=.021, η2=.02)ため,下位検定を行った。ほめ言葉なしの1回目でのフィードバックの主効果(F(1, 72)=5.09, p=.027, η2=.06),ほめ言葉とフィードバックがともにある場合,および,ともにない場合の測定時期の主効果が有意だった(F(1, 36)=6.06, p=.019, η2=.02; F(1, 36)=8.42, p=.006, η2=.03)。エラー数はいずれの場合も減少していた。ほめ言葉やフィードバックよりも,同じ課題を繰り返したことの効果の方が大きかったと考えられる。
パズル課題 4条件×選択でクロス集計した。χ2検定の結果は有意であった(χ²(3)=9.89, p<.05)。残差分析の結果からは,ほめ言葉のみが与えられると課題を継続せず(7/9人),フィードバックのみが与えられたときには課題を継続する(8/9人)可能性が示唆された。無理にほめることよりも,正答数を確認することの方が,この種の課題の遂行には有効に機能すると考えられる。
引用文献
高崎文子(2011).「ほめ」に効果がない状況の要因分析:ほめられる側に焦点をあてた分析から ソーシャル・モチベーション研究 6, 40-53.
課題遂行を促す目的で「ほめ」が用いられることがある。しかしながら,「ほめ」は常に有効に機能するとは限らない。高崎(2011)は,インタビューデータの分析を行い,ほめが効果的でなかった状況として,ほめる側とほめられる側の考え方にずれが生まれる8つのパターンを見出している。
本研究では,100マス計算課題とパズル課題を用いて,会話の中でほめることが,課題遂行に有効に機能するのか明らかにすることを目的とした。加えて,結果のフィードバックの効果と比較検討を行った。
方 法
実験参加者 東北地区の私立大学の大学生40名(男性22名,女性18名,平均20.90歳,SD=1.37)。
実験条件 ほめ言葉(あり・なし)×フィードバック(あり・なし)の4条件に,10名ずつの参加者を無作為に割り当てた。
実験課題 引き算を行う百マス計算とラッキーパズル(はなやま株式会社)を用いた。
実験手続き 先に計算課題,後にパズル課題の順で,個別の実験を行った。
計算課題では,「計算方法は(縦)-(横)であること」「計算の向きは縦方向,横方向のどちらへ行ってもよいこと」を伝え,質問の有無を確認した後,参加者には計測時間を伝えず,3分間の遂行量とエラー数を計測した。計測後,フィードバックあり群では,エラー数を参加者と振り返った。また,ほめ言葉あり群では,課題を参加者と振り返りつつ「他の参加者よりも進んでいます」「課題を遂行するスピードが速いですね」等の声かけを行った。ほめ言葉なし群では,参加者と雑談を行い,休憩を2分間とった。その後,同様の課題を行った。
パズル課題では,ピースを見せながら「7個のピースを,入っていた箱へ戻すこと」が課題であることを伝えた。計算課題と同様,参加者へは計測時間(1分間)を伝えなかった。課題終了後,フィードバックあり群では,参加者と一緒に振り返るため「箱へはめたピースのうち,何個が正しい位置へ置けていると思うか」という質問を行い,参加者の答えに対し,正答数を答えた。フィードバックなし群は,雑談を行った。ほめ言葉あり群では,課題を参加者と振り返りつつ「もうちょっとでできそう」「すごく惜しいです」等の声かけを行った。2分後,ヒントとして1つのピースを正答の部分へ置き,再度課題を行った。2回とも成功しなかった参加者には,時間があるので延長して課題を行うかと尋ね,やると答え場合は,再度課題に取り組み始めてから成功するまで,または諦めるまでの時間を計測した。参加者が諦めた時点で正答を示し,終了した。
結果と考察
計算課題 遂行数を従属変数として分散分析を行った結果,測定時期の主効果のみが有意であった(F(1, 36)=18.42, p<.001, η2=.04)。すべての条件で遂行数は増加した。また,エラー数を従属変数として分散分析を行った結果,2次の交互作用が有意だった(F(1, 36)=5.82, p=.021, η2=.02)ため,下位検定を行った。ほめ言葉なしの1回目でのフィードバックの主効果(F(1, 72)=5.09, p=.027, η2=.06),ほめ言葉とフィードバックがともにある場合,および,ともにない場合の測定時期の主効果が有意だった(F(1, 36)=6.06, p=.019, η2=.02; F(1, 36)=8.42, p=.006, η2=.03)。エラー数はいずれの場合も減少していた。ほめ言葉やフィードバックよりも,同じ課題を繰り返したことの効果の方が大きかったと考えられる。
パズル課題 4条件×選択でクロス集計した。χ2検定の結果は有意であった(χ²(3)=9.89, p<.05)。残差分析の結果からは,ほめ言葉のみが与えられると課題を継続せず(7/9人),フィードバックのみが与えられたときには課題を継続する(8/9人)可能性が示唆された。無理にほめることよりも,正答数を確認することの方が,この種の課題の遂行には有効に機能すると考えられる。
引用文献
高崎文子(2011).「ほめ」に効果がない状況の要因分析:ほめられる側に焦点をあてた分析から ソーシャル・モチベーション研究 6, 40-53.