[PE29] アクティブ・ラーニング型授業における学習効果の個人差
学習者のコミュニケーション不安の影響に注目して
キーワード:アクティブ・ラーニング, 学習効果, 個人差
近年,多くの大学で,アクティブ・ラーニング型授業が採用されてきている。そこでは,単なる知識の習得を越え,実社会で多くの人々と生活や仕事を協働して行っていくために必要な技能や基礎的な力(ジェネリックスキル)の養成が目指されている。一方で,アクティブ・ラーニング型授業は,その効果に個人差があることも指摘されている。本研究では,学習者のコミュニケーション不安に注目し,ディスカッションに対して持つ不安や緊張の個人差が,コミュニケーション行為やジェネリックスキル,学習意欲の向上等とどのように関連するのか,経時的変化も含め,検討する。
方 法
調査対象者 神戸市外国語大学で2016年度と2017年度前期の「人間関係論1」の受講者40名。
授業概要 週1回の授業で,テキストの内容確認を主体とした講義回とグループ・ディスカッションを主体とした演習回を1セットにして進めた。グループ・ディスカッションは4名前後のグループで行われ,講義回にも挿入された。
調査内容 (1)コミュニケーション行為の測定 「積極的発言」「場の進行」「他者意見の傾聴」「脱線」「発言抑制」のカテゴリー毎に,各2項目について7段階で評定。
(2)コミュニケーション不安の測定 McCroskey(1982)から選出した4項目について7段階評定。
(3)ジェネリックスキルの測定 「対人関係能力」「自己管理能力」「課題解決能力」(辻・杉山, 2015)のカテゴリー毎に,2項目ずつ7段階で評定。
(4)学習意欲 4項目について7段階で評定。
手続き 初回授業で,コミュニケーション不安の測定を行い(事前調査),その後,1ヶ月毎に3回(調査1~調査3),上記内容の調査を行った。
結果と考察
コミュニケーション不安の平均評定値をもとに,コミュニケーション不安の低群(平均値未満)と高群(平均値以上)に群分けした。
コミュニケーション不安について コミュニケーション不安の群毎に,不安度の平均値について,調査時期を繰り返し要因とする一要因分散分析を行った。その結果,不安低群(F(3, 48)=27.18, p<.01),不安高群(F(3,66)=8.00, p<.01)共に,調査時期の主効果が有意であった。多重比較の結果,不安低群では,事前調査と調査2及び調査3時点で,不安高群では,調査2と調査3以外のすべての時点間で有意差が見出された。このことは,アクティブ・ラーニング型授業が,コミュニケーション不安の低減に貢献し,またその効果は,コミュニケーション不安の高い者に,より短期間のうちに現れることを示唆している。
コミュニケーション行為について コミュニケーション不安2×調査時期3の分散分析を行った。
「積極的発言」については,調査時期の主効果(F(2, 76)=5.97, p<.01)とコミュニケーション不安の主効果(F(1, 38)=4.85, p<.01)が有意であり,調査2よりも調査3時点において,また,コミュニケーション不安高群よりも低群において評定値が高かった。「場の進行」についても,調査時期の主効果(F(2, 76)=5.97, p<.01)とコミュニケーション不安の主効果(F(1, 38)=9.91, p<.01)が有意であり,調査1よりも調査3時点で,また,不安高群よりも低群で,評定値が高かった。
これらの結果は,積極的発言や場の進行等のポジティブな行為は,時間経過と共に多く見出されるようになるが,それは,コミュニケーション不安が低い者に顕著であることを示している。
一方,「脱線」や「発言抑制」等のネガティブな行為については,コミュニケーション不安の主効果のみが見出され,脱線は,コミュニケーション不安の高群(M=2.40)よりも低群(M=3.21)において(F(1, 38)=6.14, p<.05),発言抑制は,逆に,低群(M=2.64)よりも高群(M=3.21)において(F(1, 38)=6.11, p<.05),多く見出される傾向にあった。
ジェネリックスキルと学習意欲について コミュニケーション不安2×調査時期3の分散分析を行った。「対人関係能力」については,調査時期の主効果のみが有意で(F(2, 76)=3.62, p<.05),調査1よりも調査3時点で評定値が高かった。これは,アクティブ・ラーニング型授業の反復経験が,コミュニケーション不安の高低に関わらず,対人関係能力の向上に寄与しうることを示唆している。
一方,「自己管理能力」や「課題解決能力」では,調査時期の効果は得られず,コミュニケーション不安の主効果のみが有意(後者は有意傾向)で,不安高群よりも低群において,評定値が高かった。
以上より,アクティブ・ラーニング型授業の効果は,(少なくとも半期間程度の受講では)対人関係能力にのみ限定的に作用するものと思われる。
なお,学習意欲については,各群とも,全調査時期を通じて,高く評定されていた(M=5.37以上)。
方 法
調査対象者 神戸市外国語大学で2016年度と2017年度前期の「人間関係論1」の受講者40名。
授業概要 週1回の授業で,テキストの内容確認を主体とした講義回とグループ・ディスカッションを主体とした演習回を1セットにして進めた。グループ・ディスカッションは4名前後のグループで行われ,講義回にも挿入された。
調査内容 (1)コミュニケーション行為の測定 「積極的発言」「場の進行」「他者意見の傾聴」「脱線」「発言抑制」のカテゴリー毎に,各2項目について7段階で評定。
(2)コミュニケーション不安の測定 McCroskey(1982)から選出した4項目について7段階評定。
(3)ジェネリックスキルの測定 「対人関係能力」「自己管理能力」「課題解決能力」(辻・杉山, 2015)のカテゴリー毎に,2項目ずつ7段階で評定。
(4)学習意欲 4項目について7段階で評定。
手続き 初回授業で,コミュニケーション不安の測定を行い(事前調査),その後,1ヶ月毎に3回(調査1~調査3),上記内容の調査を行った。
結果と考察
コミュニケーション不安の平均評定値をもとに,コミュニケーション不安の低群(平均値未満)と高群(平均値以上)に群分けした。
コミュニケーション不安について コミュニケーション不安の群毎に,不安度の平均値について,調査時期を繰り返し要因とする一要因分散分析を行った。その結果,不安低群(F(3, 48)=27.18, p<.01),不安高群(F(3,66)=8.00, p<.01)共に,調査時期の主効果が有意であった。多重比較の結果,不安低群では,事前調査と調査2及び調査3時点で,不安高群では,調査2と調査3以外のすべての時点間で有意差が見出された。このことは,アクティブ・ラーニング型授業が,コミュニケーション不安の低減に貢献し,またその効果は,コミュニケーション不安の高い者に,より短期間のうちに現れることを示唆している。
コミュニケーション行為について コミュニケーション不安2×調査時期3の分散分析を行った。
「積極的発言」については,調査時期の主効果(F(2, 76)=5.97, p<.01)とコミュニケーション不安の主効果(F(1, 38)=4.85, p<.01)が有意であり,調査2よりも調査3時点において,また,コミュニケーション不安高群よりも低群において評定値が高かった。「場の進行」についても,調査時期の主効果(F(2, 76)=5.97, p<.01)とコミュニケーション不安の主効果(F(1, 38)=9.91, p<.01)が有意であり,調査1よりも調査3時点で,また,不安高群よりも低群で,評定値が高かった。
これらの結果は,積極的発言や場の進行等のポジティブな行為は,時間経過と共に多く見出されるようになるが,それは,コミュニケーション不安が低い者に顕著であることを示している。
一方,「脱線」や「発言抑制」等のネガティブな行為については,コミュニケーション不安の主効果のみが見出され,脱線は,コミュニケーション不安の高群(M=2.40)よりも低群(M=3.21)において(F(1, 38)=6.14, p<.05),発言抑制は,逆に,低群(M=2.64)よりも高群(M=3.21)において(F(1, 38)=6.11, p<.05),多く見出される傾向にあった。
ジェネリックスキルと学習意欲について コミュニケーション不安2×調査時期3の分散分析を行った。「対人関係能力」については,調査時期の主効果のみが有意で(F(2, 76)=3.62, p<.05),調査1よりも調査3時点で評定値が高かった。これは,アクティブ・ラーニング型授業の反復経験が,コミュニケーション不安の高低に関わらず,対人関係能力の向上に寄与しうることを示唆している。
一方,「自己管理能力」や「課題解決能力」では,調査時期の効果は得られず,コミュニケーション不安の主効果のみが有意(後者は有意傾向)で,不安高群よりも低群において,評定値が高かった。
以上より,アクティブ・ラーニング型授業の効果は,(少なくとも半期間程度の受講では)対人関係能力にのみ限定的に作用するものと思われる。
なお,学習意欲については,各群とも,全調査時期を通じて,高く評定されていた(M=5.37以上)。