[PE45] 社会人講話が大学生のキャリア意識に与える影響
職業キャリア・レディネスの変化に着目して
Keywords:キャリア・レディネス, キャリア教育, 対応のあるt検定
問題と目的
本研究は,大学生のキャリア意識が社会人講話の受講前後でどのように変化したのかを,職業キャリア・レディネスの概念の変化に着目して検討することを目的とする。中教審答申(2011)によると,大学(学部)の約88%が,職業意識・能力の形成を目的とした教育を実施し,教育界と産業界の連携の一つとして社会人講話を実施していることを報告している。そこで,本研究では,社会人講話の効果を調べるため,講話の前後で職業キャリア・レディネスが変化するかどうか検討することとした。
方 法
調査対象者は,関西圏の中堅私立文系大学でキャリア形成科目を履修している学生であった。質問項目は,坂柳(1996)の職業レディネス尺度27項目であった。回答選択肢は,5段階であった。受講前調査は,15週に渡って行われる授業の第4回目(2017年10月),受講後調査は第14回目(2017年12月~2018年1月)の授業内にそれぞれ集合調査法で行った。社会人講話は,第5回~13回の隔週で行われ,社会人講話の翌週の授業で,担当教員が前回の振り返りと次回講話者の業界に関する事前学習を行った。
結 果
分析対象者は,受講前後で対応する回答の得られた欠損値のない2年生226名(男126名,女100名)であった。先行研究(坂柳,1996)と同様の因子構造を確認するために,先行研究で示された3因子それぞれについて検証的因子分析を受講前後それぞれで行った。その結果,坂崎の示した因子から2~3項目を削除することで適合モデルが得られた。関心性は6項目,自律性は7項目で適合モデルが得られ,前後で同一項目となった。計画性は前後で5項目が同じ,1項目が異なるモデルが得られた。
次に,得られたモデルから合成得点を作成し,受講前後で対応のあるt検定を行った。その結果,関心性はt(225)=-1.819,自律性はt(225)=0.463,計画性はt(225)=-3.163*となり,計画性のみ有意差が見られた。Table1は,各合成得点の記述統計量を示している。
考 察
本研究の結果,社会人から仕事や職業についてのリアルな話を聞くことによって,大学生の職業キャリア・レディネスの計画性が高まることが分かった。この因子は,前後で1項目入れ替えがあった。その項目は,受講前が「今希望している職業は変わるかもしれない」,受講後が「どのような職業人になりたいのか,自分なりの目標をもっている」であった。社会や仕事・職業について実感をもって理解するようになったと考えることができ,妥当である。宮入(2013)は,社会人との対話が学生の進路選択行動の遂行可能性を高めるのに有効であることを明らかにしている。この指摘は,本研究の結果とも合致していると思われる。以上のことから,社会人講話のキャリア教育としての効果は,計画性にポジティブな影響を与えることが示唆された。
参考文献
宮入小夜子(2013).社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響~キャリア教育に関する準実験による実践的研究~,日本橋学館大学紀要第12号.
本研究は,大学生のキャリア意識が社会人講話の受講前後でどのように変化したのかを,職業キャリア・レディネスの概念の変化に着目して検討することを目的とする。中教審答申(2011)によると,大学(学部)の約88%が,職業意識・能力の形成を目的とした教育を実施し,教育界と産業界の連携の一つとして社会人講話を実施していることを報告している。そこで,本研究では,社会人講話の効果を調べるため,講話の前後で職業キャリア・レディネスが変化するかどうか検討することとした。
方 法
調査対象者は,関西圏の中堅私立文系大学でキャリア形成科目を履修している学生であった。質問項目は,坂柳(1996)の職業レディネス尺度27項目であった。回答選択肢は,5段階であった。受講前調査は,15週に渡って行われる授業の第4回目(2017年10月),受講後調査は第14回目(2017年12月~2018年1月)の授業内にそれぞれ集合調査法で行った。社会人講話は,第5回~13回の隔週で行われ,社会人講話の翌週の授業で,担当教員が前回の振り返りと次回講話者の業界に関する事前学習を行った。
結 果
分析対象者は,受講前後で対応する回答の得られた欠損値のない2年生226名(男126名,女100名)であった。先行研究(坂柳,1996)と同様の因子構造を確認するために,先行研究で示された3因子それぞれについて検証的因子分析を受講前後それぞれで行った。その結果,坂崎の示した因子から2~3項目を削除することで適合モデルが得られた。関心性は6項目,自律性は7項目で適合モデルが得られ,前後で同一項目となった。計画性は前後で5項目が同じ,1項目が異なるモデルが得られた。
次に,得られたモデルから合成得点を作成し,受講前後で対応のあるt検定を行った。その結果,関心性はt(225)=-1.819,自律性はt(225)=0.463,計画性はt(225)=-3.163*となり,計画性のみ有意差が見られた。Table1は,各合成得点の記述統計量を示している。
考 察
本研究の結果,社会人から仕事や職業についてのリアルな話を聞くことによって,大学生の職業キャリア・レディネスの計画性が高まることが分かった。この因子は,前後で1項目入れ替えがあった。その項目は,受講前が「今希望している職業は変わるかもしれない」,受講後が「どのような職業人になりたいのか,自分なりの目標をもっている」であった。社会や仕事・職業について実感をもって理解するようになったと考えることができ,妥当である。宮入(2013)は,社会人との対話が学生の進路選択行動の遂行可能性を高めるのに有効であることを明らかにしている。この指摘は,本研究の結果とも合致していると思われる。以上のことから,社会人講話のキャリア教育としての効果は,計画性にポジティブな影響を与えることが示唆された。
参考文献
宮入小夜子(2013).社会人との対話が学生の職業観・勤労観の形成に与える影響~キャリア教育に関する準実験による実践的研究~,日本橋学館大学紀要第12号.