[PE49] 自律性向上プログラムのプロセスと事例検討
キーワード:キャリア・カウンセリング, 自己決定理論, 動機づけ
問題・目的
心理カウンセリングにおけるキャリア支援において,自律性を高める積極的介入方法の研究・提案が求められているものの,具体的な支援策の心理学的研究は不足しているのが現状である。そこで,自己決定理論(Self-determination theory: SDT, Deci & Ryan, 1985)に基づいたこれまでの著者の研究から導き出された知見から,自律性向上プラグラムとして,各自律性の段階(内発的動機づけ,統合的調整,同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整,無力状態)にある者について具体的な働きかけのプロセスをまとめ,実際のカウンセリング現場において自律性向上プログラムを活用した事例を検討する。
その際にRogers(1951)のクライエント中心療法(client-centered therapy)の考え方を礎とする。本研究ではSDTにおける関係性が重視され,カウンセリングの場でのキャリア支援においては,単なる情報の提供にとどまらないカウンセリング・マインドが支援者に求められると想定されるからである。クライアントのあるがままを受容するRogersの立場とキャリア・サポートの立場の融合のためには,従来のキャリア・カウンセリングと心理カウンセリングが相反するものではないというカウンセラーの立場が求められるだろう。
方 法
これまでの研究結果および考察を用いて,自律性向上プログラムのプロセスの詳細を考案し,実際のカウンセリング場面で実施をした事例を検討する。
結果・考察
自律性向上プラグラムとして,各自律性の段階にある者について,具体的な働きかけの手法を示した。
そして,支援のプロセスは,①まず青年に自らのライフコース展望について考えさせ,それを紙面に書かせるか,あるいは口頭で話してもらい,②PMLSや自律性の保持段階を判定する面接で自律性の判定をして,③職業生活・家庭生活・余暇生活・精神生活の各領域ごと,あるいは全般的に,自律性向上プログラムにしたがって支援するという順序である。その際にカウンセリング・マインドをもって,青年の最もよい部分が開花するように対応することが大事である。すなわち,有能さへの支援はもちろん,関係性への支援も重視し,さらに自律性を向上させていく働きかけをすることが必要になるだろう。
このような自律性向上プログラムを,心理カウンセリングにおけるキャリアに関する支援において取り入れた事例を検討したところ,結果的に本研究における理論を裏付ける変容がみられた。
本研究では心理カウンセリングにおけるキャリアに関する支援に自律性向上プログラムを取り入れることを想定しているが,キャリア・カウンセラーや教員による一般的なキャリア支援においても,人生の転機となるライフイベントについての支援が主なテーマとなる傾向がある点では,心理カウンセリングという領域に限らず共通しているといえるだろう。
心理カウンセラーのみならずキャリア・カウンセラーや教員が動機づけのパラダイムで考案された自律性向上プログラムを現場の支援に取り入れるための実践面での具体的な提案は,青年のライフコース展望において生じる心理的な課題をサポートするカウンセリングを実施する上で有益な知見となるであろう。
引用文献
Deci, E. L. & Ryan, R. M. 1985 Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. New York:Plenum.
Rogers, C. R. 1951 Client-centerd Therapy. (友田不二男・伊藤 博・堀淑昭・佐治守夫・畠瀬 稔・村山正治編 1966-1968 ロージァズ全集 3, 5, 7, 8, 16巻).
心理カウンセリングにおけるキャリア支援において,自律性を高める積極的介入方法の研究・提案が求められているものの,具体的な支援策の心理学的研究は不足しているのが現状である。そこで,自己決定理論(Self-determination theory: SDT, Deci & Ryan, 1985)に基づいたこれまでの著者の研究から導き出された知見から,自律性向上プラグラムとして,各自律性の段階(内発的動機づけ,統合的調整,同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整,無力状態)にある者について具体的な働きかけのプロセスをまとめ,実際のカウンセリング現場において自律性向上プログラムを活用した事例を検討する。
その際にRogers(1951)のクライエント中心療法(client-centered therapy)の考え方を礎とする。本研究ではSDTにおける関係性が重視され,カウンセリングの場でのキャリア支援においては,単なる情報の提供にとどまらないカウンセリング・マインドが支援者に求められると想定されるからである。クライアントのあるがままを受容するRogersの立場とキャリア・サポートの立場の融合のためには,従来のキャリア・カウンセリングと心理カウンセリングが相反するものではないというカウンセラーの立場が求められるだろう。
方 法
これまでの研究結果および考察を用いて,自律性向上プログラムのプロセスの詳細を考案し,実際のカウンセリング場面で実施をした事例を検討する。
結果・考察
自律性向上プラグラムとして,各自律性の段階にある者について,具体的な働きかけの手法を示した。
そして,支援のプロセスは,①まず青年に自らのライフコース展望について考えさせ,それを紙面に書かせるか,あるいは口頭で話してもらい,②PMLSや自律性の保持段階を判定する面接で自律性の判定をして,③職業生活・家庭生活・余暇生活・精神生活の各領域ごと,あるいは全般的に,自律性向上プログラムにしたがって支援するという順序である。その際にカウンセリング・マインドをもって,青年の最もよい部分が開花するように対応することが大事である。すなわち,有能さへの支援はもちろん,関係性への支援も重視し,さらに自律性を向上させていく働きかけをすることが必要になるだろう。
このような自律性向上プログラムを,心理カウンセリングにおけるキャリアに関する支援において取り入れた事例を検討したところ,結果的に本研究における理論を裏付ける変容がみられた。
本研究では心理カウンセリングにおけるキャリアに関する支援に自律性向上プログラムを取り入れることを想定しているが,キャリア・カウンセラーや教員による一般的なキャリア支援においても,人生の転機となるライフイベントについての支援が主なテーマとなる傾向がある点では,心理カウンセリングという領域に限らず共通しているといえるだろう。
心理カウンセラーのみならずキャリア・カウンセラーや教員が動機づけのパラダイムで考案された自律性向上プログラムを現場の支援に取り入れるための実践面での具体的な提案は,青年のライフコース展望において生じる心理的な課題をサポートするカウンセリングを実施する上で有益な知見となるであろう。
引用文献
Deci, E. L. & Ryan, R. M. 1985 Intrinsic motivation and self-determination in human behavior. New York:Plenum.
Rogers, C. R. 1951 Client-centerd Therapy. (友田不二男・伊藤 博・堀淑昭・佐治守夫・畠瀬 稔・村山正治編 1966-1968 ロージァズ全集 3, 5, 7, 8, 16巻).