日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-71)

2018年9月16日(日) 16:00 〜 18:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号16:00~17:00 偶数番号17:00~18:00

[PF11] 教職課程初期段階の学生の動機づけと教師効力感・アイデンティティの関連

田中希穂 (同志社大学)

キーワード:教職課程, 動機づけ, アイデンティティ

目  的
 新たな知識や技術の活用により社会の進歩や変化のスピードが速まる中,教員の資質能力向上は重要な課題である。一方,近年の教員の大量退職・大量採用傾向は今後数年内に落ちつき,新卒採用者数は減少に転じると予測される。このような状況において,大学の教職課程が教員としての必要な資質能力を学生に確実に身につけさせ,教職志望の優秀な人材を育成するためには,教職課程の改善・充実に向けた更なる取り組みが必要である。
 大学の教職課程が学生に培わせるべき教師としての資質能力の中核には教職への志望意識があり(仲山,2007),教職への志望意識の形成過程を分析することは,教職課程の質向上に有効である。そこで,教職課程履修学生について,早期の段階での教職への意思や意欲・動機を把握し,その推移をとらえることや,教職関連講義や実践実習を通した教員としての資質能力の獲得過程などを把握することは,大学側の適切かつ効果的な支援や介入を可能とし,優秀な人材の育成につながると考えらえる。そこで,本研究では,早期の段階での教職への意思や意欲・動機を把握し,教師としてより適応的状態と関連するとされている教師効力感や教師アイデンティティとの関連を検討する。

方  法
参加者:4年制総合大学で教職課程を履修している2年生115名。
測度:①教師志望理由‐藤原(2004)の尺度のうち1項目を削除,1項目を追加した14項目を用いた。最尤法プロマックス回転による因子分析の結果から「内的要因」「外的要因」「職業的憧れ」「職業的価値」を下位尺度とした。②教職課程履修動機‐Black & Deci(2000)のSRQ-Lの12項目を修正し用いた。因子分析の結果から「自律的調整」「統制的調整」を下位尺度とした。③教師効力感‐ Schwarzer, Schmitz, & Daytner(1999)のTeacher Self-Efficacy Scaleの10項目を用いた。因子分析の結果から「子ども・親への対応」「教育的取り組み」を下位尺度とした。④教師アイデンティティ‐松井・柴田(2008)の職業的アイデンティティから16項目を用いた。因子分析の結果,「教師としての自負」「教師としての社会貢献」を下位尺度とした。

結果および考察
 教師志望理由,教職課程履修動機,教師効力感,教師アイデンティティの関連性を検討するためにパス解析を行った(Figure 1)。その結果,教師を志望する理由として子どもが好きや性格がむいているなどの「内的要因」が直接的あるいは自律的な動機づけを介して間接的に教師効力感・アイデンティティに影響した。親や教師・知人に勧められたなどの「外的要因」や教師への憧れなどの「職業的憧れ」は教師効力感・アイデンティティと関連しなかった。教師が社会的に重要な職業であるなどの「職業的価値」は,自律的な動機づけを介して教師効力感・アイデンティティと関連したが,一方で不適応的な学習過程と関連するといわれている統制的な動機づけとも関連した。
 教師を志望する学生が,教職課程の履修を通して,教師としての高い適応感と関連する教師効力感やアイデンティティを発達させるには,教師という職業への単なる憧れや他者からの勧めという志望理由では不十分であり,子どもが好きであり,子どもとの生活に充実感を感じ,また教師の職業的な重要性の認識など,子どもとの関係性や教職への価値観の認識が重要であることが示唆された。教職課程の初期の段階において,子どもとの関係性構築や教職・教育の社会的意義の認識を促進する支援を積極的に大学が行うことが,教職課程への自律的な動機づけの促進や教師として必要な資質能力向上につながるのではないかと考えらえる。