[PF19] 大学での履修科目選択と成績との関連
キーワード:大学, GPA, IR(Institutional Research)
学部のディプロマ・ポリシーに定めた人材を育成するために,学生が知識やスキルを体系的に構築できるようカリキュラムを構成する。しかし,必修科目以外の履修は学生の選択にゆだねられているため,学生の履修行動は適切でないことも多い。たとえば,カリキュラム体系を考慮せず,いわゆる「楽単」ばかり選択する学生がいる。
本研究では,学生がどのような基準で履修科目を選択しており,その選択が成績(GPA)と関連しているかどうかを調査した。
方 法
調査対象者:2016年12月に,青山学院大学社会情報学部の1年生に調査への協力を依頼し,218名から回答を得た。
調査項目:いくつかの調査項目のうちから,本発表では以下の2つの項目に焦点を当てる。GPAは,倫理委員会および学生の許可のもと,大学の事務部署より得た。
1.履修科目の選択方法:自由に履修を決められる科目を10科目選ぶとする。そのうち,(1) 将来役立ちそうか(Table 1およびTable 2での「有用」),(2) 友達が履修するか(同「友人」),(3) 興味を持てるか(同「興味」),(4) 単位の取得が楽か(同「楽単」),(5) 良い成績をとれそうかどうか(同「成績」),が選択において重要となる科目は,それぞれ何科目ぐらいあるかを尋ねた。0科目,1から2科目(分析では1.5科目とした),3から4科目(同3.5科目),・・・,9から10科目のいずれかで回答を求めた。
2.成績評価の好み:少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目と,普段の授業での提出物など平常点が比較的大きなウェイトを占める科目のいずれが自分にとって望ましいかを尋ねた。
結果と考察
履修科目の選択方法
履修する科目を10科目選択するとき,5つの基準それぞれで選択する科目数の平均値と標準偏差をTable 1に示す。将来役立ちそうかと,興味を持てるかを基準に選ぶ科目が相対的に多く,それぞれ平均値で4.6科目と5.3科目であった。いわゆる「楽単」であるかどうかは,他の基準と比べて特に重視されているわけではなかった。ただし,望ましいと考えられる基準での科目数を多く回答するバイアスはあると考えられる。
5つの基準それぞれで選択する科目数間の相関係数を求めた。「有用」と「興味」に .50,「友人」と「楽単」に .40,「友人」と「成績」に .33の相関が認められた。友人が履修することは,単位取得の助けになると考えられているのだろう。
履修科目の選択方法とGPA
科目選択における5つの基準それぞれでの科目数と,1年次および2年次のGPAとの間の相関係数をTable 2に示す。いくつかの相関係数は有意であるが,明確な関連は認められなかった。負の相関ではあるが,「楽単」を基準に科目を選択することは,GPAと明確には関係していなかった。
成績評価の好みとGPA
多くの学生は平常点で評価される科目を好んでいた。少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目が望ましいと回答した学生は61名,平常点が比較的大きなウェイトを占める科目が望ましいと回答した学生は157名であった。
少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目が望ましいと回答した学生の,1年次および2年次GPAの平均はそれぞれ2.14(SD = 0.67)と2.04(SD = 0.68)であった。平常点が比較的大きなウェイトを占める科目が望ましいと回答した学生の,1年次および2年次GPAの平均はそれぞれ2.35(SD = 0.68)と2.25(SD = 0.61)であった。1年次および2年次GPAともに,平常点で評価される科目を好む学生の方が,GPAが高かった。(1年次:t(216) = 1.99, p = .048, d = 0.30, 95% CI [.002, .404];2年次:t(213) = 2.24, p = .026, d = 0.34, 95% CI [.026, .400])。ただし,効果量(Cohen's d)は小さく,あまり意味のある差ではないだろう。
本研究では,学生がどのような基準で履修科目を選択しており,その選択が成績(GPA)と関連しているかどうかを調査した。
方 法
調査対象者:2016年12月に,青山学院大学社会情報学部の1年生に調査への協力を依頼し,218名から回答を得た。
調査項目:いくつかの調査項目のうちから,本発表では以下の2つの項目に焦点を当てる。GPAは,倫理委員会および学生の許可のもと,大学の事務部署より得た。
1.履修科目の選択方法:自由に履修を決められる科目を10科目選ぶとする。そのうち,(1) 将来役立ちそうか(Table 1およびTable 2での「有用」),(2) 友達が履修するか(同「友人」),(3) 興味を持てるか(同「興味」),(4) 単位の取得が楽か(同「楽単」),(5) 良い成績をとれそうかどうか(同「成績」),が選択において重要となる科目は,それぞれ何科目ぐらいあるかを尋ねた。0科目,1から2科目(分析では1.5科目とした),3から4科目(同3.5科目),・・・,9から10科目のいずれかで回答を求めた。
2.成績評価の好み:少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目と,普段の授業での提出物など平常点が比較的大きなウェイトを占める科目のいずれが自分にとって望ましいかを尋ねた。
結果と考察
履修科目の選択方法
履修する科目を10科目選択するとき,5つの基準それぞれで選択する科目数の平均値と標準偏差をTable 1に示す。将来役立ちそうかと,興味を持てるかを基準に選ぶ科目が相対的に多く,それぞれ平均値で4.6科目と5.3科目であった。いわゆる「楽単」であるかどうかは,他の基準と比べて特に重視されているわけではなかった。ただし,望ましいと考えられる基準での科目数を多く回答するバイアスはあると考えられる。
5つの基準それぞれで選択する科目数間の相関係数を求めた。「有用」と「興味」に .50,「友人」と「楽単」に .40,「友人」と「成績」に .33の相関が認められた。友人が履修することは,単位取得の助けになると考えられているのだろう。
履修科目の選択方法とGPA
科目選択における5つの基準それぞれでの科目数と,1年次および2年次のGPAとの間の相関係数をTable 2に示す。いくつかの相関係数は有意であるが,明確な関連は認められなかった。負の相関ではあるが,「楽単」を基準に科目を選択することは,GPAと明確には関係していなかった。
成績評価の好みとGPA
多くの学生は平常点で評価される科目を好んでいた。少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目が望ましいと回答した学生は61名,平常点が比較的大きなウェイトを占める科目が望ましいと回答した学生は157名であった。
少数のテストあるいはレポートだけで最終成績が決まる科目が望ましいと回答した学生の,1年次および2年次GPAの平均はそれぞれ2.14(SD = 0.67)と2.04(SD = 0.68)であった。平常点が比較的大きなウェイトを占める科目が望ましいと回答した学生の,1年次および2年次GPAの平均はそれぞれ2.35(SD = 0.68)と2.25(SD = 0.61)であった。1年次および2年次GPAともに,平常点で評価される科目を好む学生の方が,GPAが高かった。(1年次:t(216) = 1.99, p = .048, d = 0.30, 95% CI [.002, .404];2年次:t(213) = 2.24, p = .026, d = 0.34, 95% CI [.026, .400])。ただし,効果量(Cohen's d)は小さく,あまり意味のある差ではないだろう。