[PF41] 協同するゲームにおいて生起する社会的相互作用の分析
アナログ―デジタルゲーム間の差異の検討
キーワード:社会的相互作用, コミュニケーション, ゲーム
問題と目的
ゲームを活用した教育活動,特にコミュニケーションに焦点を当てた取り組みについて様々に報告されている。例えば,山﨑(2016)はボードゲームを通して保育学生のコミュニケーション能力育成について報告している。また,渡邉・新井(2012)は,異なる役割や立場の人が協力して意思決定を行うことのシミュレーションとして協力型ボードゲームを用いて実験を行った結果,グループによって差があることを報告している。これらの先行研究は高等教育機関に在籍する学生を対象として行われているが,その他に自閉スペクトラム症(以下,ASD)のある子どもに対する研究も報告されている。ASDなどの発達障害のある子どもは,対人コミュニケーションは勿論,ルール理解等にも困難がある場合も多く,ソーシャルスキルトレーニングの一環としてゲームを取り入れることも多い(例えば岡田・後藤・上野,2005)。しかし,近年んは単なるソーシャルスキルトレーニングとしてだけではなく,発達障害当事者同士でゲームを楽しむことで,QOLの向上を目指したゲームの活用についても検討されはじめた(加藤・藤野,2016)。
本報告では、大学生が協力型のアナログゲーム(ボードゲーム等)とデジタルゲーム(TVゲーム)を用いることでどのような社会的相互作用が生まれるのかを予備的に検討し、発達障害当事者に対するコミュニケーション支援に活用する知見を得たい。
方 法
研究参加者:ボードゲーム参加者6名,TVゲーム参加者4名の合計10名。参加者は全員短期大学で保育について学んでいる学生であった。
手続き:
1)ボードゲーム
研究参加者のうち一名にゲームの内容と手続きを事前に説明した。その後他5名の参加者に説明しながらゲームを進めていくこととした。本報告で用いたゲームはGameWright®「Forbidden Island」で,プレイヤー全員が冒険家のチームとなり,水没の危機にある島から協力して4つの財宝を獲得し脱出することを目指す内容である。各プレイヤーにはゲームを進める上で役立つ,異なる技能を持つキャラクターが設定される。
2)TVゲーム
任天堂製「Switch」のソフトウェア「いっしょにチョキッとスニッパーズ プラス」を4人同時プレイにて実施した。最初に操作に慣れるため,比較的簡単な内容の問題を実施し,その後は自由にプレイするように指示した。このゲームでは,キャラクターの機能は全員同じであり,問題解決するためには必ず協力しないとクリアできないような仕組みが設定されている。
結果と考察
各ゲーム参加者のプレイ場面をビデオ録画し、参加者の発話を分析した結果、アナログゲームとデジタルゲームの両者ともゲームの課題をどのように解決するかの「プランニング」の発話が最初に行われ、その後に問題解決の具体的行動に移すための「提案」またはどのように進めていくかの「相談」が生起していた。その後、「提案」または「相談」の内容に対して同意か別意見かの「評価」が行われ、実際の「操作」が実施される、といった一連の枠組があることが示唆された。そして、その「操作」を実行する者から発せられる「モニタリング」と操作を観察している別の参加者からの「評価」が行われ、再度、課題解決に向けた「プランニング」や、次の取るべき行動の「提案」、他者との「相談」といったサイクルがあることが示唆された。
ボードゲームでは頻繁に発話が為されるのに対し、TVゲームでは「操作」による結果を待つ時間が生まれることから、数秒の沈黙(見守り)といった状況が生まれることが分かる。更に詳細に分析し、支援の有用性について検討したい。
引用文献
山﨑玲奈(2016)保育者養成における学生のコミュニケーション能力育成の試み-ボードゲームという遊びを通して-.京都光華女子大学京都光華女子大学短期大学部研究紀要,54,237-246.
渡邉万記子・新井健(2012)協力型ボードゲームを用いた協同のシミュレーション.経営情報学会 全国研究発表大会要旨集,61.
岡田智・後藤大士・上野一彦(2005)ゲームを取り入れたソーシャルスキルの指導に関する事例研究-LD,ADHD,アスペルガー症候群の3事例の比較検討を通して-.教育心理学研究,53,565-578.
ゲームを活用した教育活動,特にコミュニケーションに焦点を当てた取り組みについて様々に報告されている。例えば,山﨑(2016)はボードゲームを通して保育学生のコミュニケーション能力育成について報告している。また,渡邉・新井(2012)は,異なる役割や立場の人が協力して意思決定を行うことのシミュレーションとして協力型ボードゲームを用いて実験を行った結果,グループによって差があることを報告している。これらの先行研究は高等教育機関に在籍する学生を対象として行われているが,その他に自閉スペクトラム症(以下,ASD)のある子どもに対する研究も報告されている。ASDなどの発達障害のある子どもは,対人コミュニケーションは勿論,ルール理解等にも困難がある場合も多く,ソーシャルスキルトレーニングの一環としてゲームを取り入れることも多い(例えば岡田・後藤・上野,2005)。しかし,近年んは単なるソーシャルスキルトレーニングとしてだけではなく,発達障害当事者同士でゲームを楽しむことで,QOLの向上を目指したゲームの活用についても検討されはじめた(加藤・藤野,2016)。
本報告では、大学生が協力型のアナログゲーム(ボードゲーム等)とデジタルゲーム(TVゲーム)を用いることでどのような社会的相互作用が生まれるのかを予備的に検討し、発達障害当事者に対するコミュニケーション支援に活用する知見を得たい。
方 法
研究参加者:ボードゲーム参加者6名,TVゲーム参加者4名の合計10名。参加者は全員短期大学で保育について学んでいる学生であった。
手続き:
1)ボードゲーム
研究参加者のうち一名にゲームの内容と手続きを事前に説明した。その後他5名の参加者に説明しながらゲームを進めていくこととした。本報告で用いたゲームはGameWright®「Forbidden Island」で,プレイヤー全員が冒険家のチームとなり,水没の危機にある島から協力して4つの財宝を獲得し脱出することを目指す内容である。各プレイヤーにはゲームを進める上で役立つ,異なる技能を持つキャラクターが設定される。
2)TVゲーム
任天堂製「Switch」のソフトウェア「いっしょにチョキッとスニッパーズ プラス」を4人同時プレイにて実施した。最初に操作に慣れるため,比較的簡単な内容の問題を実施し,その後は自由にプレイするように指示した。このゲームでは,キャラクターの機能は全員同じであり,問題解決するためには必ず協力しないとクリアできないような仕組みが設定されている。
結果と考察
各ゲーム参加者のプレイ場面をビデオ録画し、参加者の発話を分析した結果、アナログゲームとデジタルゲームの両者ともゲームの課題をどのように解決するかの「プランニング」の発話が最初に行われ、その後に問題解決の具体的行動に移すための「提案」またはどのように進めていくかの「相談」が生起していた。その後、「提案」または「相談」の内容に対して同意か別意見かの「評価」が行われ、実際の「操作」が実施される、といった一連の枠組があることが示唆された。そして、その「操作」を実行する者から発せられる「モニタリング」と操作を観察している別の参加者からの「評価」が行われ、再度、課題解決に向けた「プランニング」や、次の取るべき行動の「提案」、他者との「相談」といったサイクルがあることが示唆された。
ボードゲームでは頻繁に発話が為されるのに対し、TVゲームでは「操作」による結果を待つ時間が生まれることから、数秒の沈黙(見守り)といった状況が生まれることが分かる。更に詳細に分析し、支援の有用性について検討したい。
引用文献
山﨑玲奈(2016)保育者養成における学生のコミュニケーション能力育成の試み-ボードゲームという遊びを通して-.京都光華女子大学京都光華女子大学短期大学部研究紀要,54,237-246.
渡邉万記子・新井健(2012)協力型ボードゲームを用いた協同のシミュレーション.経営情報学会 全国研究発表大会要旨集,61.
岡田智・後藤大士・上野一彦(2005)ゲームを取り入れたソーシャルスキルの指導に関する事例研究-LD,ADHD,アスペルガー症候群の3事例の比較検討を通して-.教育心理学研究,53,565-578.