[PF43] 大学生のSNS利用と心理的ウェルビーイングの関係
主要SNSの影響の比較
キーワード:SNS, ウェルビーイング, 置いてきぼり不安(Fear of Missing Out)
ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)は多くの人にとって日常生活の重要な一部となっている。一方でそれがネット依存などの不適応につながっていると警鐘を鳴らず専門家はいるものの,研究報告におけるエビデンスではSNS利用が心理的なウェルビーイングに悪影響を示すことが一貫して示されている訳ではない。
日本では個々のSNSの影響を検討した研究は見あたらないが,英国ではRoyal Society for Public Health(RSPH,2017)が1479人の青年を対象に5つのSNSの精神的健康との関連を調べた結果,Instagramの影響が最も悪かったと結論づけている。しかしその報告内容を精査すると,悪影響が必ずしも大きくないとの解釈が適当のように見える。ウェルビーイングの指標によってはSNS利用と正の関連を示すものもあった。
一方Przybylski et al.(2013)は,個人特性とSNS利用を媒介する要因として置いてきぼり不安(Fear of Missing Out:FoMO)を提唱し,それがSNS利用と正の関連,人生満足度等の心理的ウェルビーイング指標とは負の関連があったと報告している。
本研究では日本の大学生が多く利用するLINE,Twitter,Instagram,Facebookの4つのSNSに注目し,それらのFoMOおよび心理的ウェルビーイングとの関連の強さを比較検討する。
方 法
調査対象者
関東甲信地方にある2大学の大学生164名(男性65名,女性97名,その他2名)の協力を得た。
調査内容
SNSについては,それぞれの1日あたりの利用時間の他に以下を尋ねた。LINE:登録されているグループ数,友だち数;Twitter:投稿数,フォロー数,フォロワー数;Instagram:投稿数,フォロー数,フォロワー数;Facebook:友だち数。その際,スマートホンを見ながら回答してよいと伝えた。
心理的ウェルビーイングの指標は,角野(1995)の人生に対する肯定的評価尺度(7件法12項目),諸井(1996)の改定UCLA孤独感尺度(4件法20項目),そして吉森(2015)の自己肯定感尺度(5件法9項目)を用いた。
FoMOについてはPrzybylski et al.(2013)のFoMO Scaleを日本語訳して用いた(5件法10項目)。
結果と考察
SNSの利用状況に関する変数はどれも分布が著しく偏っていたため,すべてダミー化した。予備分析で相関係数を算出して検討した結果,相互に高い相関を示したダミー変数を取捨選択し,以降の分析ではLINE利用時間(60分以下/超),LINE友だち数(100人以下/超),Twitter利用時間(60分以下/超),Twitter投稿数(500以下/超),Instagram利用時間(なし/あり),Facebook利用時間(なし/あり)のみを使用した。
使用した尺度のクロンバックα係数はいずれも充分だった(人生肯定的評価:.85,孤独感:.90,自己肯定感:.79,FoMO:.81)。
性別と学年を統制変数としてSNS利用の各尺度との関連を重回帰分析で検討した(Table 1)。
FoMOはいずれのSNS利用状況の指標とも有意な関連を示さなかった。このことはPrzybylski et al.(2013)やRSPH(2017)の結果と一致しない。日本では英国と違い,FoMOがSNS利用の促進要因となっていないのかも知れない。一方でSNS利用方法の聞き方の違いによる可能性もあり,今後も検証が必要だろう。
本研究ではSNS利用のウェルビーイングへの悪影響を示唆する結果がほとんどなかった。Twitter利用時間は孤独感と正の関連を示したが, 大部分のSNS利用指標とウェルビーイング指標は関連がなく,その他の有意および有意傾向だった指標はいずれもむしろウェルビーイングと正の関連が示唆された。
FoMOがSNS利用の影響を調整している可能性をふまえ,FoMOと各SNS指標の交互作用をも探索的に調べたが,有意な交互作用はなかった。
本研究はSNS利用が心理的な悪影響を強く示す結果ではなかった。本研究はサンプルが限定的だったことから,一般化可能性については慎重に考えるべきだろう。いずれにせよ,SNSの影響についての実証的な検証は引き続きなされるべきである。
日本では個々のSNSの影響を検討した研究は見あたらないが,英国ではRoyal Society for Public Health(RSPH,2017)が1479人の青年を対象に5つのSNSの精神的健康との関連を調べた結果,Instagramの影響が最も悪かったと結論づけている。しかしその報告内容を精査すると,悪影響が必ずしも大きくないとの解釈が適当のように見える。ウェルビーイングの指標によってはSNS利用と正の関連を示すものもあった。
一方Przybylski et al.(2013)は,個人特性とSNS利用を媒介する要因として置いてきぼり不安(Fear of Missing Out:FoMO)を提唱し,それがSNS利用と正の関連,人生満足度等の心理的ウェルビーイング指標とは負の関連があったと報告している。
本研究では日本の大学生が多く利用するLINE,Twitter,Instagram,Facebookの4つのSNSに注目し,それらのFoMOおよび心理的ウェルビーイングとの関連の強さを比較検討する。
方 法
調査対象者
関東甲信地方にある2大学の大学生164名(男性65名,女性97名,その他2名)の協力を得た。
調査内容
SNSについては,それぞれの1日あたりの利用時間の他に以下を尋ねた。LINE:登録されているグループ数,友だち数;Twitter:投稿数,フォロー数,フォロワー数;Instagram:投稿数,フォロー数,フォロワー数;Facebook:友だち数。その際,スマートホンを見ながら回答してよいと伝えた。
心理的ウェルビーイングの指標は,角野(1995)の人生に対する肯定的評価尺度(7件法12項目),諸井(1996)の改定UCLA孤独感尺度(4件法20項目),そして吉森(2015)の自己肯定感尺度(5件法9項目)を用いた。
FoMOについてはPrzybylski et al.(2013)のFoMO Scaleを日本語訳して用いた(5件法10項目)。
結果と考察
SNSの利用状況に関する変数はどれも分布が著しく偏っていたため,すべてダミー化した。予備分析で相関係数を算出して検討した結果,相互に高い相関を示したダミー変数を取捨選択し,以降の分析ではLINE利用時間(60分以下/超),LINE友だち数(100人以下/超),Twitter利用時間(60分以下/超),Twitter投稿数(500以下/超),Instagram利用時間(なし/あり),Facebook利用時間(なし/あり)のみを使用した。
使用した尺度のクロンバックα係数はいずれも充分だった(人生肯定的評価:.85,孤独感:.90,自己肯定感:.79,FoMO:.81)。
性別と学年を統制変数としてSNS利用の各尺度との関連を重回帰分析で検討した(Table 1)。
FoMOはいずれのSNS利用状況の指標とも有意な関連を示さなかった。このことはPrzybylski et al.(2013)やRSPH(2017)の結果と一致しない。日本では英国と違い,FoMOがSNS利用の促進要因となっていないのかも知れない。一方でSNS利用方法の聞き方の違いによる可能性もあり,今後も検証が必要だろう。
本研究ではSNS利用のウェルビーイングへの悪影響を示唆する結果がほとんどなかった。Twitter利用時間は孤独感と正の関連を示したが, 大部分のSNS利用指標とウェルビーイング指標は関連がなく,その他の有意および有意傾向だった指標はいずれもむしろウェルビーイングと正の関連が示唆された。
FoMOがSNS利用の影響を調整している可能性をふまえ,FoMOと各SNS指標の交互作用をも探索的に調べたが,有意な交互作用はなかった。
本研究はSNS利用が心理的な悪影響を強く示す結果ではなかった。本研究はサンプルが限定的だったことから,一般化可能性については慎重に考えるべきだろう。いずれにせよ,SNSの影響についての実証的な検証は引き続きなされるべきである。