[PG34] 算数科の授業におけるユニバーサルデザインを踏まえた指導の工夫について
Keywords:算数科の授業, 授業のユニバーサルデザイン, 指導の工夫
問題と目的
近年,特別支援教育の視点から,「授業のユニバーサルデザイン(以下,「授業のUD」とする)」が注目されている。授業のUDとは,「特別な支援が必要な子も含めて,通常学級の全員の子が,楽しく学び合い『わかる・できる』ことを目指す授業デザイン(桂,2016)」であり,その1つとして,「指導の工夫」が挙げられる(桂,2012)。桂(2012)は「指導の工夫」の視点として,「視覚化」「共有化」「焦点化」の3つを挙げている。
ところが,算数科における授業のUDでは,指導の工夫についての解釈が様々である。例えば,青木(2013)は,子どもの思考が可視化されることを視覚化としているが,伊藤(2014)は,この可視化を,子どもの思考を「そろえる」ことから共有化としている。そこで,本研究では,算数科における授業のUDのうち「指導の工夫」に焦点を当て,視覚化,焦点化,共有化の観点に基づき,先行論文や実践記録から分類・整理することを目的とする。
方 法
対象:「算数 ユニバーサルデザイン」をキーワードに「CiNii」及び「Google」で論文と実践記録を検索した。2017年7月27日現在,データがPDF形式でリンクされている,または東京学芸大学附属図書館に所蔵されている実践記録や論文を対象とした。検索の結果得られた15件の実践記録や論文と,「算数授業のユニバーサルデザイン 全員で楽しく『数学的な見方・ 考え方』を身に付ける!(伊藤,2015)」を分類・整理の対象とした。
手続き:先行論文や実践記録を分類・整理する手続きは,Table 1に示す通り,手続き1.対象から指導の工夫とされている記述を抽出する(例:文献から「思考過程を問う発問…発表内容の続きを予測させる発問をする」という記述を抽出する)。手続き2.抽出された記述を実際に授業で用いられた,あるいは用いられ得る文脈を考慮した上で,視覚化,焦点化,共有化の視点で分類する(例:「思考過程を問う発問」を『焦点化かつ共有化』,『覚化かつ焦点化かつ共有化』に分類する)。手続き3.分類した中で類似したデータを1つにまとめ,再命名し,「指導の工夫の分類モデル」を提案する(例:『視覚化かつ焦点化かつ共有化』の「思考過程を問う発問」と「ICT機器の活用」を1つにまとめ,「視覚情報を用いた発表内容を解釈させる問い」とする。モデルに関してはFigure 1 とTable 2参照)。手続き4.指導の工夫の分類モデルの妥当性を検証するため,授業分析を繰り返し,モデルを精緻化する。(例:『視覚化かつ焦点化かつ共有化』の「視覚情報を用いた発表内容を解釈させる問い」を「教師による学習内容を解釈させる視覚的な問い」と再命名する)。なお,授業分析の対象とした授業は,東京学芸大学「国際算数数学授業研究プロジェクト」HPに掲載されている授業動画であった。
結果と考察
先行論文や実践記録を分類・整理した結果から,指導の工夫はFigure 1に示すような4つの領域に分類できることが確認された。また,Table 2に示すように,各領域の指導の工夫が「内容」として更に分類された。
近年,特別支援教育の視点から,「授業のユニバーサルデザイン(以下,「授業のUD」とする)」が注目されている。授業のUDとは,「特別な支援が必要な子も含めて,通常学級の全員の子が,楽しく学び合い『わかる・できる』ことを目指す授業デザイン(桂,2016)」であり,その1つとして,「指導の工夫」が挙げられる(桂,2012)。桂(2012)は「指導の工夫」の視点として,「視覚化」「共有化」「焦点化」の3つを挙げている。
ところが,算数科における授業のUDでは,指導の工夫についての解釈が様々である。例えば,青木(2013)は,子どもの思考が可視化されることを視覚化としているが,伊藤(2014)は,この可視化を,子どもの思考を「そろえる」ことから共有化としている。そこで,本研究では,算数科における授業のUDのうち「指導の工夫」に焦点を当て,視覚化,焦点化,共有化の観点に基づき,先行論文や実践記録から分類・整理することを目的とする。
方 法
対象:「算数 ユニバーサルデザイン」をキーワードに「CiNii」及び「Google」で論文と実践記録を検索した。2017年7月27日現在,データがPDF形式でリンクされている,または東京学芸大学附属図書館に所蔵されている実践記録や論文を対象とした。検索の結果得られた15件の実践記録や論文と,「算数授業のユニバーサルデザイン 全員で楽しく『数学的な見方・ 考え方』を身に付ける!(伊藤,2015)」を分類・整理の対象とした。
手続き:先行論文や実践記録を分類・整理する手続きは,Table 1に示す通り,手続き1.対象から指導の工夫とされている記述を抽出する(例:文献から「思考過程を問う発問…発表内容の続きを予測させる発問をする」という記述を抽出する)。手続き2.抽出された記述を実際に授業で用いられた,あるいは用いられ得る文脈を考慮した上で,視覚化,焦点化,共有化の視点で分類する(例:「思考過程を問う発問」を『焦点化かつ共有化』,『覚化かつ焦点化かつ共有化』に分類する)。手続き3.分類した中で類似したデータを1つにまとめ,再命名し,「指導の工夫の分類モデル」を提案する(例:『視覚化かつ焦点化かつ共有化』の「思考過程を問う発問」と「ICT機器の活用」を1つにまとめ,「視覚情報を用いた発表内容を解釈させる問い」とする。モデルに関してはFigure 1 とTable 2参照)。手続き4.指導の工夫の分類モデルの妥当性を検証するため,授業分析を繰り返し,モデルを精緻化する。(例:『視覚化かつ焦点化かつ共有化』の「視覚情報を用いた発表内容を解釈させる問い」を「教師による学習内容を解釈させる視覚的な問い」と再命名する)。なお,授業分析の対象とした授業は,東京学芸大学「国際算数数学授業研究プロジェクト」HPに掲載されている授業動画であった。
結果と考察
先行論文や実践記録を分類・整理した結果から,指導の工夫はFigure 1に示すような4つの領域に分類できることが確認された。また,Table 2に示すように,各領域の指導の工夫が「内容」として更に分類された。