[PG44] 高校生の学科別にみた職業興味,職務遂行の自信度,日常生活の基礎的志向性
職業レディネス・テストを用いた検討
Keywords:職業興味, 学科, 高校生
問題・目的
職業レディネス・テスト(以下,VRT)は中学生,高校生の職業への準備度を測定する検査として,1972年の公表以来,広く活用されてきた。今日までに2回改訂されたが,現行版(第3版)は2006年の公表以来12年が経過している。本稿では,検査の信頼性・妥当性の検証の一環として,高等学校の学科と検査得点との関連について検討を行う。
方 法
分析データ:全日制の高等学校に在籍する1~3年生,計345,834名(男子196,832名,女子149,002名)。採点処理機関の協力により個人情報を削除した上で提供された数値データで,2007年度~2017年度までに全国で実施(北海道・東北13.9%,東京以外の関東33.6%,東京6.7%,東海・中部・北陸18.7%,近畿4.9%,中国・四国10.0%,九州・沖縄12.2%)。
材料:VRT第3版(A検査:職業興味,B検査:日常生活の基礎的志向性,C検査:職務遂行の自信度を測定)。A検査とC検査はHolland,J.L.の職業興味の6領域(R:現実的,I:研究的,A:芸術的,S:社会的,E:企業的,C:慣習的),B検査はDPT(D:対情報,P:対人,T:対物)の3つの志向性で整理。A検査とC検査では54項目(6領域×各9項目)の職務内容の記述に対して3件法 で回答。B検査は日常生活での行動や志向を記述する64項目(D志向とP志向は各24項目,T志向は16項目)に2件法で回答。
結果・考察
A検査とC検査ではVRTの採点方法に従い,興味や自信が高い順に各項目を2,1,0点で採点,B検査では「あてはまる」と回答された項目に1点を与え,得点化した。A検査とC検査の各領域は0~18点,B検査はD志向とP志向が0~24点,T志向が0~16点の範囲をとる。
VRTでは男女別の換算基準をもっているため,男女別に各学科グループ別の各下位尺度得点の平均値と標準偏差を算出した(Table 1)。学科グループの区分はVRT第3版の標準化の時と同様に,普通,農業+水産,工業+情報,商業,家庭+看護+福祉,総合+その他の6つとした。
分散分析の結果,各下位尺度とも学科グループの平均値間で有意差がみられた(p<.0001)。学科グループでの多重比較の結果(p<.05),機械操作や物作り,身体作業と関連するR領域やデータの分析,研究に関連するI領域は,興味と自信において,男女ともに工業+情報や農業+水産が他よりも高い。創造的活動に関連するA領域は,女子では興味に関して工業+情報が他よりも高いが,男子では家庭+看護+福祉と商業が高かった。奉仕や対人的活動に関連するS領域では,男女ともに興味も自信も家庭+看護+福祉と商業が高い。企画・立案,組織運営に関連するE領域では,男子では興味・自信ともに商業と家庭+看護+福祉が高く,女子では商業と工業+情報が高かった。定型的で規則的な作業に関連するC領域では,男女ともに興味も自信も商業と工業+情報が高かった。B検査では,データや情報処理を好むD志向は男女ともに商業,工業+情報が高く,人との関わりを好むP志向は男女ともに家庭+看護+福祉と商業が他よりも高い。物や動植物を扱うことを好むT志向は,農業+水産,工業+情報が男女ともに高かった。これらの結果は学科の特徴を反映しており,VRTの妥当性を裏付ける結果となった。
職業レディネス・テスト(以下,VRT)は中学生,高校生の職業への準備度を測定する検査として,1972年の公表以来,広く活用されてきた。今日までに2回改訂されたが,現行版(第3版)は2006年の公表以来12年が経過している。本稿では,検査の信頼性・妥当性の検証の一環として,高等学校の学科と検査得点との関連について検討を行う。
方 法
分析データ:全日制の高等学校に在籍する1~3年生,計345,834名(男子196,832名,女子149,002名)。採点処理機関の協力により個人情報を削除した上で提供された数値データで,2007年度~2017年度までに全国で実施(北海道・東北13.9%,東京以外の関東33.6%,東京6.7%,東海・中部・北陸18.7%,近畿4.9%,中国・四国10.0%,九州・沖縄12.2%)。
材料:VRT第3版(A検査:職業興味,B検査:日常生活の基礎的志向性,C検査:職務遂行の自信度を測定)。A検査とC検査はHolland,J.L.の職業興味の6領域(R:現実的,I:研究的,A:芸術的,S:社会的,E:企業的,C:慣習的),B検査はDPT(D:対情報,P:対人,T:対物)の3つの志向性で整理。A検査とC検査では54項目(6領域×各9項目)の職務内容の記述に対して3件法 で回答。B検査は日常生活での行動や志向を記述する64項目(D志向とP志向は各24項目,T志向は16項目)に2件法で回答。
結果・考察
A検査とC検査ではVRTの採点方法に従い,興味や自信が高い順に各項目を2,1,0点で採点,B検査では「あてはまる」と回答された項目に1点を与え,得点化した。A検査とC検査の各領域は0~18点,B検査はD志向とP志向が0~24点,T志向が0~16点の範囲をとる。
VRTでは男女別の換算基準をもっているため,男女別に各学科グループ別の各下位尺度得点の平均値と標準偏差を算出した(Table 1)。学科グループの区分はVRT第3版の標準化の時と同様に,普通,農業+水産,工業+情報,商業,家庭+看護+福祉,総合+その他の6つとした。
分散分析の結果,各下位尺度とも学科グループの平均値間で有意差がみられた(p<.0001)。学科グループでの多重比較の結果(p<.05),機械操作や物作り,身体作業と関連するR領域やデータの分析,研究に関連するI領域は,興味と自信において,男女ともに工業+情報や農業+水産が他よりも高い。創造的活動に関連するA領域は,女子では興味に関して工業+情報が他よりも高いが,男子では家庭+看護+福祉と商業が高かった。奉仕や対人的活動に関連するS領域では,男女ともに興味も自信も家庭+看護+福祉と商業が高い。企画・立案,組織運営に関連するE領域では,男子では興味・自信ともに商業と家庭+看護+福祉が高く,女子では商業と工業+情報が高かった。定型的で規則的な作業に関連するC領域では,男女ともに興味も自信も商業と工業+情報が高かった。B検査では,データや情報処理を好むD志向は男女ともに商業,工業+情報が高く,人との関わりを好むP志向は男女ともに家庭+看護+福祉と商業が他よりも高い。物や動植物を扱うことを好むT志向は,農業+水産,工業+情報が男女ともに高かった。これらの結果は学科の特徴を反映しており,VRTの妥当性を裏付ける結果となった。