[PH08] 幼稚園実習における精神的負担感の要因と信頼感との関連
キーワード:幼稚園実習, 精神的負担感, 信頼感
研究の目的
谷川(2010)は,実習におけるとまどいや葛藤による保育に対する認識の変容のプロセスには,保育者との出会いのあり方が影響していると指摘している。出会いのあり方によって,とまどいや葛藤が保育者としての成長につながるか,もしくは意欲を低下させるのか,方向付ける要因になるという。しかしながら,保育者との出会いのあり方は,他者からの働きかけ方をどのように受け止めるのかという実習生側の要因も大きく関係していると考えられる。
では,実習生側の要因としてはどのようなことが考えられるのであろうか。基本的な信頼感は,他者が示す表情を含む言動を適切に読み取ったり,自分の現状を好転させるために他者から助力を引き出すことに成功しやすいことが指摘されている(遠藤,2016)。このことから,基本的な信頼感の高さは,実習におけるとまどいや葛藤等の精神的な負担感を,実習生自身の成長につなげていくことを可能にする要因になりえる,と考えられる。
そこで本研究は,幼稚園実習における保育者との出会いのあり方に影響すると考えられる実習生の要因を検討するために,実習中の精神的負担感の要因と自他信頼感との関連を分析する。
研究の方法
東京都内の幼稚園教諭および保育士養成を行っている4年制大学に質問紙調査を依頼した。調査時期は2017年7月,調査対象は継続4週間の教育実習を終了した4年生114名である。調査内容は,①実習中の精神負担感の変動(4件法)とその理由【選択項目(複数回答可):「自分の子どもへの理解・かかわり」,「保育者とのかかわり・指導」,「責任実習の準備や実施」,「保育者の子どもへのかかわりや園の保育方針」,「その他」)および精神的な支え(「仲間」,「家族」,「大学の教員」,「子ども」,「園の先生」,「特にいない」,「その他」)】【ライフウェーブ図(西村・目良,2007】,②信頼感尺度(天貝1994),③保育者の仕事内容に対する意識。
結 果
1.「保育者とのかかわりを原因とした精神的負担
感と信頼感との関連
実習1週目~4週目の内,2週以上精神的負担感の原因として「保育者とのかかわり・指導」を選んだ学生をすべて抽出し,精神的負担感が高いグループ(H群:4週間のうち2週以上負担感が高い)と低いグループ(L群:4週間のうち2週以上負担感が低い)に分けた。なお,2週間は負担感が高く,2週間は負担感が低い学生は除外した。
「保育者とのかかわり・指導」を原因とした精神的の高低(H群・L群)と自己信頼に差があるかどうかについてt検定を行ったところ,有意差がみられた(t=2.379,df=44,P<.01)。この結果と平均値をみると,精神的負担感が低い人は,高い人よりも自己信頼感が高いことが明らかになった。
2.精神的負担感の原因における信頼感の影響
実習1週目~4週目における精神的負担感の原因として2週以上同じ原因を選択している学生のうち,【「保育者とのかかわり・指導」,「保育者とのかかわり・指導」と「子どもへの理解・かかわり」】(以下:「保育者α」),【「責任実習の準備や指導」,「責任実習の準備や指導」と「子どもへの理解・かかわり」】(以下:「責任実習α),【「保育者とのかかわり・指導」と「責任実習の準備や指導」,両者と「子どもへの理解・かかわり】(以下:「保育者・責任実習α」)を選んでいる学生で分けた。各グループの精神的負担感の平均値を算出し,一元配置分散分析を行ったところ,有意差があった(F(3,108)=4.134,P<.01)。Tukeyを用いた多重比較をすると,「保育者・責任実習α」は「保育者α」よりも精神的負担感が高かった。また,精神的負担感の原因における信頼感の影響を分析するために,一元配置分散分析をおこなったところ,他者信頼の効果は有意であった(F(3,97)=2.784,P<.05)。Tukeyを用いた多重比較をすると,精神的負担感の原因である「保育者α」と「責任実習α」の間には有意差があった。「保育者α」を選択した人は,「責任実習α」を選択した人よりも,他者信頼が高いことが明らかになった。
考 察
実習中に保育者から助力を得て精神的負担感が低い学生は,保育者が原因で負担感が高い学生よりも自己信頼感が高い。また,負担感の原因として「保育者」と「責任実習」を同時に選択している学生(保育者・責任実習α)よりも,「保育者α」を選択している学生のほうが負担感は低く,「責任実習α」を選択している学生よりも他者信頼が高いことから,「保育者α」の学生は保育者からの助力を上手く引き出している可能性がある。
谷川(2010)は,実習におけるとまどいや葛藤による保育に対する認識の変容のプロセスには,保育者との出会いのあり方が影響していると指摘している。出会いのあり方によって,とまどいや葛藤が保育者としての成長につながるか,もしくは意欲を低下させるのか,方向付ける要因になるという。しかしながら,保育者との出会いのあり方は,他者からの働きかけ方をどのように受け止めるのかという実習生側の要因も大きく関係していると考えられる。
では,実習生側の要因としてはどのようなことが考えられるのであろうか。基本的な信頼感は,他者が示す表情を含む言動を適切に読み取ったり,自分の現状を好転させるために他者から助力を引き出すことに成功しやすいことが指摘されている(遠藤,2016)。このことから,基本的な信頼感の高さは,実習におけるとまどいや葛藤等の精神的な負担感を,実習生自身の成長につなげていくことを可能にする要因になりえる,と考えられる。
そこで本研究は,幼稚園実習における保育者との出会いのあり方に影響すると考えられる実習生の要因を検討するために,実習中の精神的負担感の要因と自他信頼感との関連を分析する。
研究の方法
東京都内の幼稚園教諭および保育士養成を行っている4年制大学に質問紙調査を依頼した。調査時期は2017年7月,調査対象は継続4週間の教育実習を終了した4年生114名である。調査内容は,①実習中の精神負担感の変動(4件法)とその理由【選択項目(複数回答可):「自分の子どもへの理解・かかわり」,「保育者とのかかわり・指導」,「責任実習の準備や実施」,「保育者の子どもへのかかわりや園の保育方針」,「その他」)および精神的な支え(「仲間」,「家族」,「大学の教員」,「子ども」,「園の先生」,「特にいない」,「その他」)】【ライフウェーブ図(西村・目良,2007】,②信頼感尺度(天貝1994),③保育者の仕事内容に対する意識。
結 果
1.「保育者とのかかわりを原因とした精神的負担
感と信頼感との関連
実習1週目~4週目の内,2週以上精神的負担感の原因として「保育者とのかかわり・指導」を選んだ学生をすべて抽出し,精神的負担感が高いグループ(H群:4週間のうち2週以上負担感が高い)と低いグループ(L群:4週間のうち2週以上負担感が低い)に分けた。なお,2週間は負担感が高く,2週間は負担感が低い学生は除外した。
「保育者とのかかわり・指導」を原因とした精神的の高低(H群・L群)と自己信頼に差があるかどうかについてt検定を行ったところ,有意差がみられた(t=2.379,df=44,P<.01)。この結果と平均値をみると,精神的負担感が低い人は,高い人よりも自己信頼感が高いことが明らかになった。
2.精神的負担感の原因における信頼感の影響
実習1週目~4週目における精神的負担感の原因として2週以上同じ原因を選択している学生のうち,【「保育者とのかかわり・指導」,「保育者とのかかわり・指導」と「子どもへの理解・かかわり」】(以下:「保育者α」),【「責任実習の準備や指導」,「責任実習の準備や指導」と「子どもへの理解・かかわり」】(以下:「責任実習α),【「保育者とのかかわり・指導」と「責任実習の準備や指導」,両者と「子どもへの理解・かかわり】(以下:「保育者・責任実習α」)を選んでいる学生で分けた。各グループの精神的負担感の平均値を算出し,一元配置分散分析を行ったところ,有意差があった(F(3,108)=4.134,P<.01)。Tukeyを用いた多重比較をすると,「保育者・責任実習α」は「保育者α」よりも精神的負担感が高かった。また,精神的負担感の原因における信頼感の影響を分析するために,一元配置分散分析をおこなったところ,他者信頼の効果は有意であった(F(3,97)=2.784,P<.05)。Tukeyを用いた多重比較をすると,精神的負担感の原因である「保育者α」と「責任実習α」の間には有意差があった。「保育者α」を選択した人は,「責任実習α」を選択した人よりも,他者信頼が高いことが明らかになった。
考 察
実習中に保育者から助力を得て精神的負担感が低い学生は,保育者が原因で負担感が高い学生よりも自己信頼感が高い。また,負担感の原因として「保育者」と「責任実習」を同時に選択している学生(保育者・責任実習α)よりも,「保育者α」を選択している学生のほうが負担感は低く,「責任実習α」を選択している学生よりも他者信頼が高いことから,「保育者α」の学生は保育者からの助力を上手く引き出している可能性がある。