日本教育心理学会第60回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-73)

2018年9月17日(月) 13:00 〜 15:00 D203 (独立館 2階)

在席責任時間 奇数番号13:00~14:00 偶数番号14:00~15:00

[PH41] 青年期におけるライフイベントとホープレスネスとの関連

社会的スキルによる検討

勝愛里1, 矢崎裕美子2 (1.名古屋市立大学, 2.日本福祉大学)

キーワード:ホープレスネス, ライフイベント, 社会的スキル

目  的
 本研究では,意欲に着目し,青年期のライフイベントとホープレスネスの関連について社会的スキルによる検討を行う。ホープレスネスとは,(a)強く欲求する結果が起こらない(または,強く嫌悪する結果が起こる)という「ネガティブな結果予測」と,(b)それらの結果の生起可能性を変える事に関して自分が無力であるという「無力感の予期」の両方をもつことである(高比良,19998)。すなわち,ホープレスネスが高いと,将来に対しての意欲を持ちにくくなるだろう。都築(2008)は,青年が「現代社会は夢を持てない社会だ」と認識していることを指摘している。ホープレスネス理論においてネガティブなライフイベントがホープレスネスをより高めることが明らかにされている(高比良,1998)。しかし,ネガティブイベントの経験を予防するよりも,ネガティブライフイベントを経験してもホープレスネスを過度に高めないことが必要であろう。そこで,本研究は社会的スキルに着目する。

方  法
調査対象者と手続き 高校二年生408名(男性205,女性203)大学一二年生281名(男性135,女性146)を分析対象とする。2017年7月末,高校と大学の授業内で質問紙調査を実施した。
調査内容 ①ホープレスネス:拡張版ホープレスネス尺度(以下EHS)より達成・対人領域別20項目,計40項目(高比良,1998)②社会的スキル:KiSS-18(以下SS)より18項目(菊池,1998)③達成・対人領域別のライフイベント:ここ一週間のポジティブ・ネガティブなライフイベントの自由記述

結果と考察
 ライフイベントは,記述があったものを「1」,ないものを「0」とした。高校生は,対人ネガティブライフイベントあり125名,なし283名,対人ポジティブライフイベントあり167名,なし241名,達成ネガティブライフイベント,あり178名,なし230名,達成ポジティブライフイベントあり119名,なし289名であり,大学生は,対人ネガティブライフイベントありが160名,なし121名,対人ポジティブライフイベントあり164名,なし117名,達成ネガティブライフイベントあり202名,なし79名,達成ポジティブライフイベントあり128名,なし153名であった。
 尺度の信頼性は,SSがα=.889,対人EHSがα=.883,達成EHSがα=.889であった。対人・達成EHS得点それぞれを従属変数,ライフイベントの有無・SSの群(平均値により高・低)・校種(高校・大学)を独立変数とした3要因分散分析を行った。その結果,対人EHSを従属変数にして行った場合の,「SSと対人ネガティブライフイベント」の交互作用に有意傾向がみられた(F(3,684)=0.787,p<.05)。単純主効果を検討した結果,対人ネガティブライフイベントなしの人において,SS高群がSS低群より対人EHS得点が有意に低かった(Figure1)。全体的に対人領域において,学校(F(8.926)=1.688,p<.05),SS(F (21.478)=4.062, p <.05)対人領域において,学校(F (6.369)=1.395, p <.05)SS,(F (10.661)=2.335,<. p)の主効果がみられた。これらの結果から,SS高群は,ライフイベントをネガティブに捉えない可能性が考えられる。