[PH46] 大学生における対人関係重要度に関する意識調査
キーワード:大学生, 対人関係, 意識調査
問題と目的
わが国の自殺率は国際的に高い水準にあるが,2003年の25.5%をピークに,減少傾向にある。(厚生労働省29年版自殺対策白書)一方で,若年者層(15歳~24歳)の自殺率は,依然上昇を続けており,90年代後半以降、先進国の中ではトップをキープし続けている。
原因・動機別の細かい統計によると,20代では『うつ病』や『統合失調症』になど精神疾患によるものが上位3位を占めており,続いて4位『仕事疲れ』,5位『職場の人間関係』と続く。精神疾患が資質だけでなく,個人を取り巻く環境と相関関係にある事からも,今後の予防と対策には,彼らを取り巻く環境と彼ら自身が何に対してストレスを感じるのかを,追っていくことが重要である。
本調査では特に,若年者層の自殺理由の上位に挙がる対人関係についての調査を行った。
方 法
紙面によるアンケート調査を実施。
調査対象者 福岡市の私立大学に通う学生265名(男性:21名,女性244名,平均年齢19.5歳)を調査対象とした。なお、分析対象は回答に不備のあった1名を除く,264名を対象としている。
調査内容 自身を取り巻く対人関係においての重要度を5項目からランキング形式で回答頂いた。項目は「A家族など身内との関係」,「B友人や恋人など家族以外の親しい関係」,「C学校や会社などの関係」,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」,「Eその他」,とした。また,共通の回答をした被験者の心理に大きな乖離が生じていないか確認する目的で選択理由記述欄を設けた。
結果と考察
5つの項目の中で最も重要度が高い関係と低い関係と回答された項目に対し分析を行った。最も重要度が高いと回答されたのは「B友人や恋人など家族以外の親しい関係」51%であった。続いて「C学校や会社などの関係」25%,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」9%,「A家族など身内との関係」8%,「Eその他」7%と続いた。
順位が最下位(重要でない)と回答された項目については,回答が多い順に「A家族など身内との関係」54%,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」41%,「C学校や会社などの関係」5%,という結果が得られた。
大学生における対人関係重要度は,学校を中心とした日常で最も接する機会の多い範囲における対人関係で高い数値を示した。これらの選択理由として,“在学中の充実度に関係する”“うまくやっていかなくてはならないと思うから”等,集団の中で適応していく必要性から選択したと思われるものが半数を超えた。
一方で,「A家族など身内との関係」は最下位の結果となるも,理由項目では、“家族は気を使わなくても良いから”“もう関係構築出来ているから”等の意見が多数見られ,安心感を持っているがゆえの下位であった可能性が見て取れた。つまり大学生における対人関係重要度は,自身にとってその関係が大切か否かというよりむしろ,いかにその関係にエネルギーを使って関係の構築・維持に努める必要があるか,という感覚でとらえられた可能性が高いことが考えられた。
主要文献
橋本 剛(2000)大学生における対人ストレスイベントと社会的スキル・対人方略の関連 日本教育心理学研究48 94-102
八木成和(2008) 青年期の対人関係に関する研究(Ⅳ)対人関係における対処行動と友人関係,対人不安との関連について四天王寺大学紀要第46号
わが国の自殺率は国際的に高い水準にあるが,2003年の25.5%をピークに,減少傾向にある。(厚生労働省29年版自殺対策白書)一方で,若年者層(15歳~24歳)の自殺率は,依然上昇を続けており,90年代後半以降、先進国の中ではトップをキープし続けている。
原因・動機別の細かい統計によると,20代では『うつ病』や『統合失調症』になど精神疾患によるものが上位3位を占めており,続いて4位『仕事疲れ』,5位『職場の人間関係』と続く。精神疾患が資質だけでなく,個人を取り巻く環境と相関関係にある事からも,今後の予防と対策には,彼らを取り巻く環境と彼ら自身が何に対してストレスを感じるのかを,追っていくことが重要である。
本調査では特に,若年者層の自殺理由の上位に挙がる対人関係についての調査を行った。
方 法
紙面によるアンケート調査を実施。
調査対象者 福岡市の私立大学に通う学生265名(男性:21名,女性244名,平均年齢19.5歳)を調査対象とした。なお、分析対象は回答に不備のあった1名を除く,264名を対象としている。
調査内容 自身を取り巻く対人関係においての重要度を5項目からランキング形式で回答頂いた。項目は「A家族など身内との関係」,「B友人や恋人など家族以外の親しい関係」,「C学校や会社などの関係」,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」,「Eその他」,とした。また,共通の回答をした被験者の心理に大きな乖離が生じていないか確認する目的で選択理由記述欄を設けた。
結果と考察
5つの項目の中で最も重要度が高い関係と低い関係と回答された項目に対し分析を行った。最も重要度が高いと回答されたのは「B友人や恋人など家族以外の親しい関係」51%であった。続いて「C学校や会社などの関係」25%,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」9%,「A家族など身内との関係」8%,「Eその他」7%と続いた。
順位が最下位(重要でない)と回答された項目については,回答が多い順に「A家族など身内との関係」54%,「D日常的には会わない友人や実務的なやり取りをする相手」41%,「C学校や会社などの関係」5%,という結果が得られた。
大学生における対人関係重要度は,学校を中心とした日常で最も接する機会の多い範囲における対人関係で高い数値を示した。これらの選択理由として,“在学中の充実度に関係する”“うまくやっていかなくてはならないと思うから”等,集団の中で適応していく必要性から選択したと思われるものが半数を超えた。
一方で,「A家族など身内との関係」は最下位の結果となるも,理由項目では、“家族は気を使わなくても良いから”“もう関係構築出来ているから”等の意見が多数見られ,安心感を持っているがゆえの下位であった可能性が見て取れた。つまり大学生における対人関係重要度は,自身にとってその関係が大切か否かというよりむしろ,いかにその関係にエネルギーを使って関係の構築・維持に努める必要があるか,という感覚でとらえられた可能性が高いことが考えられた。
主要文献
橋本 剛(2000)大学生における対人ストレスイベントと社会的スキル・対人方略の関連 日本教育心理学研究48 94-102
八木成和(2008) 青年期の対人関係に関する研究(Ⅳ)対人関係における対処行動と友人関係,対人不安との関連について四天王寺大学紀要第46号