[PH49] 成人愛着と不快情動の自己評価及び攻撃性の関連についての検討
キーワード:見捨てられ不安, 攻撃性, 不快情動
問題と目的
近年の刑法犯少年全体に占める再犯者の割合は18年連続で増加し続けており(法務省,2016),子どもの反社会行動の抑止は社会全体で重要な課題となっている(浅野ら,2016)。
Hirschi(1995)は,社会的逸脱行為の統制要素の一つに「愛着」を挙げている。先行研究において,他者との関係に過度に囚われる「見捨てられ不安」の高さは,自分に危険や脅威をもたらす可能性のある他者の怒りに敏感で,他者の抱く恐れや不安に対して不快な気持ちを抱きやすい可能性が示唆されている(坂上,1999)。すなわち,怒りや悲しみといった不快情動を自己で否定的に評価するため,情動の適応的側面が発揮されず,「見捨てられ不安」が高まり,結果として自己防衛的な攻撃性が表出されると考えられる。
そこで本研究は,攻撃性を強化する要因の検討を目的とし,怒りと悲しみに対する否定的評価が成人愛着の下位概念である「見捨てられ不安」を高め,結果として攻撃性に影響を及ぼすという仮説に基づき,モデルの検討を行うこととする。
方 法
調査対象 大学生と大学院生合わせて394名(男子174名,女子220名)。
調査時期 2017年7~8月
使用尺度 ECR-GO(中尾・加藤,2004),日本語版Buss-Perry 攻撃性質問紙(安藤他,1999),情動への評価尺度(悲しみ・怒り)(奥村,2008)を実施した。
結果と考察
因果モデルの検討結果をFigure 1に示す。自己の情動に対して他者を意識した否定的評価をするという内容である「他者懸念(悲しみ)」及び「他者懸念(怒り)」から「見捨てられ不安」を媒介して攻撃性に至ることが明らかとなった。「他者懸念(悲しみ)」から「見捨てられ不安」のパスについて,悲しみを否定評価することで,悲しみの適応的側面である援助(Izard,1991)や慰め(塙,1999)を他者から引き出すことが難しくなり,他者から見捨てられる不安を抱きやすくなっていることが考えられる。「他者懸念(怒り)」から「見捨てられ不安」のパスについて,怒りは,喜びや悲しみ,恐れといった他の情動に比べて対人関係を破壊するリスクをもっとも多く含んでいる情動とされている(吉田・高井,2008)。そのため,他者との関係破壊を助長する怒りを抱くことが「見捨てられ不安」を高めていると考えられる。
「見捨てられ不安」から「身体的攻撃」にパスがひかれなかったことについて,「見捨てられ不安」と特徴の類似が見られる「不適応完全主義者」は,怒りや敵意を抱いたとしても,他者からの拒否を避けるために行動に表出しない傾向があることが明らかにされている(齋藤ら,2008)。このことから,「見捨てられ不安」も他者からの排除を恐れ,「敵意」や「短気」を抱いたとしても,それを普段は表出せず自己内で留めているが,「敵意」が抑えきれなくなった際に,衝動的に身体的攻撃となって攻撃行動が表出されることがあると予想される。
以上より,自己の不快情動に対して他者を意識した否定評価をすることが「見捨てられ不安」につながり,自己防衛的な攻撃性に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
近年の刑法犯少年全体に占める再犯者の割合は18年連続で増加し続けており(法務省,2016),子どもの反社会行動の抑止は社会全体で重要な課題となっている(浅野ら,2016)。
Hirschi(1995)は,社会的逸脱行為の統制要素の一つに「愛着」を挙げている。先行研究において,他者との関係に過度に囚われる「見捨てられ不安」の高さは,自分に危険や脅威をもたらす可能性のある他者の怒りに敏感で,他者の抱く恐れや不安に対して不快な気持ちを抱きやすい可能性が示唆されている(坂上,1999)。すなわち,怒りや悲しみといった不快情動を自己で否定的に評価するため,情動の適応的側面が発揮されず,「見捨てられ不安」が高まり,結果として自己防衛的な攻撃性が表出されると考えられる。
そこで本研究は,攻撃性を強化する要因の検討を目的とし,怒りと悲しみに対する否定的評価が成人愛着の下位概念である「見捨てられ不安」を高め,結果として攻撃性に影響を及ぼすという仮説に基づき,モデルの検討を行うこととする。
方 法
調査対象 大学生と大学院生合わせて394名(男子174名,女子220名)。
調査時期 2017年7~8月
使用尺度 ECR-GO(中尾・加藤,2004),日本語版Buss-Perry 攻撃性質問紙(安藤他,1999),情動への評価尺度(悲しみ・怒り)(奥村,2008)を実施した。
結果と考察
因果モデルの検討結果をFigure 1に示す。自己の情動に対して他者を意識した否定的評価をするという内容である「他者懸念(悲しみ)」及び「他者懸念(怒り)」から「見捨てられ不安」を媒介して攻撃性に至ることが明らかとなった。「他者懸念(悲しみ)」から「見捨てられ不安」のパスについて,悲しみを否定評価することで,悲しみの適応的側面である援助(Izard,1991)や慰め(塙,1999)を他者から引き出すことが難しくなり,他者から見捨てられる不安を抱きやすくなっていることが考えられる。「他者懸念(怒り)」から「見捨てられ不安」のパスについて,怒りは,喜びや悲しみ,恐れといった他の情動に比べて対人関係を破壊するリスクをもっとも多く含んでいる情動とされている(吉田・高井,2008)。そのため,他者との関係破壊を助長する怒りを抱くことが「見捨てられ不安」を高めていると考えられる。
「見捨てられ不安」から「身体的攻撃」にパスがひかれなかったことについて,「見捨てられ不安」と特徴の類似が見られる「不適応完全主義者」は,怒りや敵意を抱いたとしても,他者からの拒否を避けるために行動に表出しない傾向があることが明らかにされている(齋藤ら,2008)。このことから,「見捨てられ不安」も他者からの排除を恐れ,「敵意」や「短気」を抱いたとしても,それを普段は表出せず自己内で留めているが,「敵意」が抑えきれなくなった際に,衝動的に身体的攻撃となって攻撃行動が表出されることがあると予想される。
以上より,自己の不快情動に対して他者を意識した否定評価をすることが「見捨てられ不安」につながり,自己防衛的な攻撃性に影響を及ぼしていることが明らかとなった。