[PH67] 大学生における困り感と被援助志向性の関連
パーソナリティを統制変数とした検討
キーワード:困り感, 被援助志向性, パーソナリティ
問題と目的
近年,困り感をもちながら生活を送る大学生は多い。学生相談室の利用者統計を見てみると,抱える困り感に対する大学側のサポートを求める大学生が,一定数存在していることがわかる(日本学生支援機構,2015)。しかし,困り感を抱いている大学生すべてがこの統計に反映されているわけではない。困り感を抱えていながら,学生相談室の利用に抵抗感をもっている大学生も少なくないのではないかと考える。先行研究では,どのような困り感をもつ大学生の被援助志向性が強いのかが明らかにされており,対人関係や学業上の問題を抱える大学生ほど,援助への抵抗が強いということが示唆されている(下山ら,2012)。しかし,同じ困り感を抱えていた大学生でも,その援助を求める姿勢が同じであると考えてよいのか疑問がある。個人の性格による被援助志向性も結果に影響を与えているのではないかと考える。
そこで,本研究では,困り感と被援助志向性の関連を調整する要因としてパーソナリティを取り上げ,その関連を調査する。
方 法
調査対象:調査対象者は,A大学の大学生436名。
調査期日:平成29年1~2月。
調査項目:大学生の大学生活における困り感を困り具合に関するチェックリスト(佐藤,2012)32項目4件法,被援助志向性を被援助志向性尺度(田村・石隈,2001)10項目4件法,パーソナリティをBig Five尺度(和田,1995)60項目7件法を用いて回答を求めた。
結果及び考察
因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,困り感は「計画性のなさ」「自己への不安」「学習上の困難」「対人不安」「衝動・融通のなさ」に分かれた。被援助志向性は,「援助への抵抗感」「援助への欲求」に分かれた。パーソナリティは「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」に分かれた。
パーソナリティが困り感と被援助志向性の関係性に及ぼす影響を調べるため,被援助志向性を従属変数,困り感とパーソナリティを独立変数とした階層的重回帰分析を行った(Table1,2)。援助への抵抗感は,Step2におけるR²の変化量から有意であり,対人不安(β=.34,p<.001)が高いほど援助への抵抗感が高かった。援助への欲求も, Step2におけるR²の変化量から有意であり,自己への不安(β=.24,p<.001)が高いほど,学習上の困難(β=.12,p<.05)が高いほど援助への欲求が高かった。
以上のことから,本研究では,パーソナリティを統制した結果,現在の友人関係や人と接することに不安を抱えている学生は,他者に援助求めることへの抵抗感が強いということが示された。また,自己への自信が低く将来への不安を抱える学生および文章理解や計算などの学習上の困り感を抱えている学生は,他者からの援助への欲求が強いということが示された。
本研究では,パーソナリティの観点を含んだ場合においても,大学生が大学生活において抱える一部の困り感と被援助志向性の間に関係が見られるということが明らかになった。今後は,パーソナリティが大学生の困り感と被援助志向性の関係に与える影響を検討していくことが必要であると考える。
近年,困り感をもちながら生活を送る大学生は多い。学生相談室の利用者統計を見てみると,抱える困り感に対する大学側のサポートを求める大学生が,一定数存在していることがわかる(日本学生支援機構,2015)。しかし,困り感を抱いている大学生すべてがこの統計に反映されているわけではない。困り感を抱えていながら,学生相談室の利用に抵抗感をもっている大学生も少なくないのではないかと考える。先行研究では,どのような困り感をもつ大学生の被援助志向性が強いのかが明らかにされており,対人関係や学業上の問題を抱える大学生ほど,援助への抵抗が強いということが示唆されている(下山ら,2012)。しかし,同じ困り感を抱えていた大学生でも,その援助を求める姿勢が同じであると考えてよいのか疑問がある。個人の性格による被援助志向性も結果に影響を与えているのではないかと考える。
そこで,本研究では,困り感と被援助志向性の関連を調整する要因としてパーソナリティを取り上げ,その関連を調査する。
方 法
調査対象:調査対象者は,A大学の大学生436名。
調査期日:平成29年1~2月。
調査項目:大学生の大学生活における困り感を困り具合に関するチェックリスト(佐藤,2012)32項目4件法,被援助志向性を被援助志向性尺度(田村・石隈,2001)10項目4件法,パーソナリティをBig Five尺度(和田,1995)60項目7件法を用いて回答を求めた。
結果及び考察
因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行った結果,困り感は「計画性のなさ」「自己への不安」「学習上の困難」「対人不安」「衝動・融通のなさ」に分かれた。被援助志向性は,「援助への抵抗感」「援助への欲求」に分かれた。パーソナリティは「神経症傾向」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」に分かれた。
パーソナリティが困り感と被援助志向性の関係性に及ぼす影響を調べるため,被援助志向性を従属変数,困り感とパーソナリティを独立変数とした階層的重回帰分析を行った(Table1,2)。援助への抵抗感は,Step2におけるR²の変化量から有意であり,対人不安(β=.34,p<.001)が高いほど援助への抵抗感が高かった。援助への欲求も, Step2におけるR²の変化量から有意であり,自己への不安(β=.24,p<.001)が高いほど,学習上の困難(β=.12,p<.05)が高いほど援助への欲求が高かった。
以上のことから,本研究では,パーソナリティを統制した結果,現在の友人関係や人と接することに不安を抱えている学生は,他者に援助求めることへの抵抗感が強いということが示された。また,自己への自信が低く将来への不安を抱える学生および文章理解や計算などの学習上の困り感を抱えている学生は,他者からの援助への欲求が強いということが示された。
本研究では,パーソナリティの観点を含んだ場合においても,大学生が大学生活において抱える一部の困り感と被援助志向性の間に関係が見られるということが明らかになった。今後は,パーソナリティが大学生の困り感と被援助志向性の関係に与える影響を検討していくことが必要であると考える。