[PA09] 学業的満足遅延行動に及ぼす愛着の内的作業モデル,セルフコンパッション,学業的動機づけの影響
キーワード:学業的満足遅延行動、愛着の内的作業モデル、セルフコンパッション
問題・目的
学業的満足遅延行動とは学業達成場面で,「試験に合格する」「良い成績を取る」等,将来の,より価値の高い目標を達成するために,「今すぐ遊びたい」等の欲求あるいは衝動の直接的及び即時的充足を自制し,先延ばしすることと定義されている(Bembenutty & Karabenick, 1998)。本研究は,学業的満足遅延の及ぼす要因としての愛着の内的作業モデルに端を発して,引き続いてセルフコンパッションと自己効力感や自律的動機づけを媒介要因として想定して,学業的満足遅延に至るプロセスについて検討することを主な目的とした。
方 法
調査対象 大学生170名(男名41,女128名,不明1名)。平均年齢20.09歳(SD=0.948)。
手続き:下の測定尺度からなる質問紙を実施した。
測定尺度
(1)学業的満足遅延行動測定尺度:小川内・龍・大塚・光冨(2013)の14項目。回答は5件法。
(2)セルフコンパッション測定尺度:宮川・谷口(2016):8回答群からなる。自分が失敗や挫折をしたことを想定。セルフコンパッションに該当する2項目と非セルフコンパッションに該当する2項目の計4項目。4項目中から2項目を選択。
(3)自己効力感測定尺度:Pintrich & DeGroot (1990) の(MSLQ)の日本語版(伊藤,1996)の中で,自己効力感に係る9項目を用いた。回答は5件法。
(4)自律的動機づけ測定尺度:伊藤(2010)を用いた。4つの下位尺度で3項目ずつからなる(外的調整,取入れ的調整,同一化調整,内発的動機づけ)。5件法による評定を求める。さらに本研究では,伊藤(2010)に則り,学業に対する自律性という観点から下位尺度ごとに得点の重みづけを実施した。すなわち個人ごとに,自律性得点を算出した。
(5)愛着の内的作業モデル測定尺度:Bartholomew & Horowitz (1991)が開発した(RQ)の日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の記述内容について該当する程度を7件法によって回答させた。さらに4つのタイプの程度を個人ごとに調べて,これらの得点に基づいて自己観得点と他者観得点について調べた。 自己観得点が多いほど,見捨てられ不安が弱く,他者観得点が多いほど,親密性の回避傾向が弱いことを示す。
結果・考察
パス解析(AMOS 21による)を実施した。適合指数はGFI=.991, AGFI= .974, RMSEA = .000 であり,モデルの適合性の高さを示す。Figure 1に示すように,愛着の内的作業モデルの自己観(β= .46,p<.001)と他者観(β=.15,p<.05)からセルフコンパッションへの正のパスが有意であった。次に,セルフコンパッションから,自己効力感(β= .29,p<.001)と自律的動機づけ(β= .19, p<.01)への正のパスがいずれも有意であった。最後に,自己効力感(β= .37,p<.001)と自律的動機づけ(β= .16,p<.05)から学業的満足遅延行動に対する正のパスがいずれも有意であった。
幼少期の養育者との交流の良好さが,「見捨てられ不安」「親密さの回避」を抑止し,失敗や挫折など逆境時の自己への慈しみを育み,自己批判や恥辱を軽減して精神的な安定や自己成長的な志向性を促す。これにより高まった学習課題解決の期待や自ら取り組もうとする動機づけが相俟って,遠大でより価値ある目標達成を志向する学業的満足遅延行動を促すことが示唆された。
学業的満足遅延行動とは学業達成場面で,「試験に合格する」「良い成績を取る」等,将来の,より価値の高い目標を達成するために,「今すぐ遊びたい」等の欲求あるいは衝動の直接的及び即時的充足を自制し,先延ばしすることと定義されている(Bembenutty & Karabenick, 1998)。本研究は,学業的満足遅延の及ぼす要因としての愛着の内的作業モデルに端を発して,引き続いてセルフコンパッションと自己効力感や自律的動機づけを媒介要因として想定して,学業的満足遅延に至るプロセスについて検討することを主な目的とした。
方 法
調査対象 大学生170名(男名41,女128名,不明1名)。平均年齢20.09歳(SD=0.948)。
手続き:下の測定尺度からなる質問紙を実施した。
測定尺度
(1)学業的満足遅延行動測定尺度:小川内・龍・大塚・光冨(2013)の14項目。回答は5件法。
(2)セルフコンパッション測定尺度:宮川・谷口(2016):8回答群からなる。自分が失敗や挫折をしたことを想定。セルフコンパッションに該当する2項目と非セルフコンパッションに該当する2項目の計4項目。4項目中から2項目を選択。
(3)自己効力感測定尺度:Pintrich & DeGroot (1990) の(MSLQ)の日本語版(伊藤,1996)の中で,自己効力感に係る9項目を用いた。回答は5件法。
(4)自律的動機づけ測定尺度:伊藤(2010)を用いた。4つの下位尺度で3項目ずつからなる(外的調整,取入れ的調整,同一化調整,内発的動機づけ)。5件法による評定を求める。さらに本研究では,伊藤(2010)に則り,学業に対する自律性という観点から下位尺度ごとに得点の重みづけを実施した。すなわち個人ごとに,自律性得点を算出した。
(5)愛着の内的作業モデル測定尺度:Bartholomew & Horowitz (1991)が開発した(RQ)の日本語版(加藤,1999a)を用いた。安定型,拒絶型,とらわれ型,恐れ型の記述内容について該当する程度を7件法によって回答させた。さらに4つのタイプの程度を個人ごとに調べて,これらの得点に基づいて自己観得点と他者観得点について調べた。 自己観得点が多いほど,見捨てられ不安が弱く,他者観得点が多いほど,親密性の回避傾向が弱いことを示す。
結果・考察
パス解析(AMOS 21による)を実施した。適合指数はGFI=.991, AGFI= .974, RMSEA = .000 であり,モデルの適合性の高さを示す。Figure 1に示すように,愛着の内的作業モデルの自己観(β= .46,p<.001)と他者観(β=.15,p<.05)からセルフコンパッションへの正のパスが有意であった。次に,セルフコンパッションから,自己効力感(β= .29,p<.001)と自律的動機づけ(β= .19, p<.01)への正のパスがいずれも有意であった。最後に,自己効力感(β= .37,p<.001)と自律的動機づけ(β= .16,p<.05)から学業的満足遅延行動に対する正のパスがいずれも有意であった。
幼少期の養育者との交流の良好さが,「見捨てられ不安」「親密さの回避」を抑止し,失敗や挫折など逆境時の自己への慈しみを育み,自己批判や恥辱を軽減して精神的な安定や自己成長的な志向性を促す。これにより高まった学習課題解決の期待や自ら取り組もうとする動機づけが相俟って,遠大でより価値ある目標達成を志向する学業的満足遅延行動を促すことが示唆された。