日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-66)

2019年9月14日(土) 15:30 〜 17:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号15:30~16:30
偶数番号16:30~17:30

[PC21] プログラミング入門教育の学習効果に与えるモチベーションの影響

今野紀子1, 土肥紳一2 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学)

キーワード:プログラミング入門教育、学習効果、モチベーション

目  的
 大学生のプログラミング入門教育において,学習者のモチベーションを高める教育システムSIEM(Systematical Information Education Method )を構築し実践している。SIEMとはセメスター内の前期・中期・後期の3回,学習者のモチベーションをモニタリングして教授者へフィードバックし,学習者のモチベーションに最適化した授業改善を企図するシステムである。本研究では,プログラミング入門教育の学習効果に与えるモチベーションの影響について分析・検討した。
方  法
 モチベーションのモニタリングで使用するSIEMアセスメント尺度の評価項目をTable 1に示す。モチベーションの変化は,期待度と重要度の積で算出している。各項目の評価は,5件法により学習者自身が行う。
 調査対象は, Processing言語によるプログラミング入門教育の授業である。Processingは,スケッチブックに絵を描く感覚でプログラミングを学習できるように開発された言語であり,簡潔な命令を入力し,その結果を順次絵で確認しながらプログラミングを学習できる特長を持っている。本授業の学習効果は,課題・プログラムコンテストでの学習者の相互評価・中間試験・期末試験の結果をもとに総合的に算出した。対象者は受講生63名のうち,有効回答を得られた49名(77.8%)である。分析方法は,目的変数を学習効果,説明変数をSIEMアセスメント尺度の後期モニタリング評価結果とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を行うことでプログラミング入門教育の学習効果に影響を与えている要因を分析した。
結  果
 重回帰分析の結果(パス図)をFigure 1に示す。
 学習効果には,知覚的喚起度(標準偏回帰係数:0.38),向上努力度(標準偏回帰係数:0.45)が5%水準で有意に影響していた(決定係数:0.23)。また,向上努力度と将来の有用度(r=0.71)・自己コントロール度(r=0.65)に,それぞれ1%水準で有意な正の相関が認められた。将来の有用度と自己コントロール度には1%水準で有意な正の相関が認められた(r=0.63)。
考  察
 上記の分析の結果,高精度ではないが,作成したプログラムの実行結果を映像的に見ることで楽しめる,知覚的興味・関心を喚起するような授業構成因子が学習効果に影響していることが示された。授業での「目玉がマウスの方を見るプログラム」の演習では,目玉が動く様子を見たくてプログラミングに励む学生の姿が印象的である。受講対象者がデザイン工学系学生であったこともあり,実行結果が絵で表示されるProcessing言語が適していたと言える。加えて,更にプログラミングの勉強を努力しようと思うといった,自発性因子である向上努力の姿勢も学習効果に影響しており,これには将来に役立つという有用感と,自分で工夫して勉強してみようと思う自己コントロール感との繋がりが示唆された。