日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE42] 小中学校での保護者としての活動経験が地域活動への動機づけおよび参加に与える影響

吉田琢哉1, 吉澤寛之2 (1.岐阜聖徳学園大学, 2.岐阜大学)

キーワード:PTA活動、地域住民との関わり、地域活動への参加

 超高齢社会を迎えた日本では,地域社会の担い手不足が深刻な問題となっている(総務省, 2014)。本研究では住民が地域活動に参加する契機として,小中学校での保護者としての活動に注目する。中山(2016)は,保護者がPTA活動を通じて,自己評価の向上と人間関係の広がりから成る内的報酬を得ることで,地域活動への参加意向が促進されうることを示している。近年は地域住民の学校活動への参加が広がりを見せており,学校活動を通しての地域住民との関わりも,保護者の地域活動への参加を左右するだろう。保護者世代の地域活動参加を促すためには,子どもと積極的に関わる地域住民を保護者が好意的に評価することが重要と考えられる。特に感謝感情は援助行動を促し(蔵永ら, 2018),地域活動も援助行動の一つと位置づけられることから(e.g., 妹尾・高木, 2003),地域住民に対する感謝感情が喚起されるほど互恵性規範が働くことで地域活動への動機づけを高め,地域活動への参加を規定すると考えられる。そこで本研究では,小中学校での保護者としての活動経験が地域活動への動機づけおよび参加に与える影響を検討する。地域住民同士の交流が盛んな地域性の影響も考えられるため,学校外での地域住民との交流を統制変数として扱う。
方  法
対象者 調査会社に依頼し,直近3年間の間に小学校・中学校でPTA役員経験のある保護者510名にweb調査を実施した。年齢層は30歳代から50歳代とし(平均年齢43.52, SD = 5.48),男女比は1:1に割り付けを行った。
測定変数 PTAでの役員の種類,学校活動への地域住民参加の有無(登下校の見守りや学習支援、地域清掃等),地域活動への参加(自治会・町内会,まちづくり協議会,青少年育成会議,民生委員等)のほか,下記の心理尺度について5件法で回答を求めた。(1) PTA活動から得る内的報酬 中山(2016)の尺度16項目を用いた。(2) PTA活動に対する負担感 奥村(2008)の情動への評価尺度の負担感因子を参考に5項目を作成した。(3) 地域住民に対する感謝感情と負債感情 吉野・相川(2017)の尺度10項目を用いた。(4) 学校外での地域住民との交流 吉田ら(2011)の地域交流尺度10項目を用いた。(5) 地域活動への動機づけ 石盛ら(2013)によるコミュニティ意識尺度短縮版のうち,「連帯・積極性」3項目を用いた。
結果と考察
 地域活動への動機づけを目的変数とした重回帰分析,及び地域活動への参加(0 = 不参加, 1 =参加)を目的変数としたロジスティック回帰分析を,サンプル全体と,学校活動への住民参加があると回答した群それぞれに実施した(Table 1)。その結果,学校外での地域住民との交流とともに,学校への地域住民の参加も,地域活動への参加及び動機づけに正の影響が見られた。さらに,地域住民に対する感謝感情が強いほど地域活動への動機づけが高い傾向が見られた。このことから,学校での地域連携が保護者世代の地域活動への動機づけを高める上で,PTA活動から得る内的報酬に加え,地域住民と保護者が感謝感情によって繋がる関係性を築くことの重要性が示唆された。今後は地域住民組織の性質や新規参入者の受け入れ形態等についてのより詳細な検討が望まれる。