16:00 〜 18:30
[R8-P-3] 相模湾プレート境界域の海底浅部の堆積と変形構造
キーワード:活断層、崖錐、冷湧水、付加体
相模湾の中央部には,水深1300m以深の相模トラフのトラフ軸が北西-南東方向に分布し,東側にはそれに平行して海丘群(沖ノ山堆列)が並ぶ.海丘群の西側斜面の麓をつないだ線は相模構造線と呼ばれ(木村, 1973, 科学),活断層が推定されている(活断層研究会,1991, 新編日本の活断層).その深部構造については,東傾斜のプレート境界断層とそこから派生する断層が大規模反射法地震探査により捉えられている(佐藤ほか,2010,科学).これら派生する断層の浅部の構造の報告はあるが(Yamashita et al., 2013, JAMSTEC-R; No et al., 2014, EPS),1923年大正地震,1703年元禄地震などの最近の海底変動との対応を議論できる海底面近傍の構造と試料に基づく年代の報告は無い.海底下浅部は一般的にサブボトムプロファイラー(以下SBP)などの高周波の音波を用いて探査されるが,複雑な地形の所では音波が散乱・減衰して構造を捉えることが困難である.そこで無人探査機に搭載したSBPを用い海底近傍での発振・受信で高解像度の断面記録を得る探査を白鳳丸KH-10-3,KH-11-9, KH-16-5次航海において行った.また,無人探査機による海底観察とピンポイントでの試料採取を行った.
調査域は三浦海丘の西側斜面および相模海丘の南側斜面である.三浦海丘は水深1000 m付近の小さな平坦面を除き海丘頂部の水深600 mから1100 mまで急崖が連続する.急崖は北西-南東方向に連続するため,海底下に同方向の断層の存在が推定でき,大河内(1990, 地学雑誌)では崖の麓付近に活断層が推定されている.本研究では,この崖を横断する方向のSBP探査を5測線において行い,3点において海底面に達する反斜面を確認した(Misawa et al., 2020, Geo-Marine Lettersで一部公表).崖下の平坦面におけるピストンコア採泥では,暗緑色のシルトに細粒砂の薄層を複数挟む試料が得られており,浮遊性有孔虫の放射性炭素年代測定の結果,千年で約1mの堆積速度が得られている.断層が海底面に達する位置は,急崖から平坦面への傾斜の変換点に一致すること,早い堆積速度の場であるにも関わらず断層が埋積されていないことから,平均変位速度の大きな断層の存在が推定される.北西-南東方向に連続する急崖の基部を結んだ線は右雁行配列を示し,400 mずれたステップ部を横断するSBP記録には他と異なりフラワーストラクチャーとみられる高角の断層が認められる.これは地下で雁行配列する断層のジョグに相当し横ずれ変位よる構造である可能性が高い.
無人探査機を用いた急崖基部の柱状試料には,海丘側に傾斜した断層とみられる面構造が認められたが,年代の逆転はほとんど無く副断層とみられる.試料には暗緑色のシルト質粘土とシロウリガイの貝殻片を含んだ含礫泥層の互層が深度1.2 mまで認められ,断層に沿った湧水にともなうシロウリガイコロニーの発達と崖錐性の堆積作用の繰り返しを示しているものと考えられる.白鳳丸KH-19-5次航海では,無人探査機のカメラにより崖基部に生きたシロウリガイが広く分布し,シンカイヒバリガイの生息も確認された.このような化学合成生物群集は崖基部に沿って北西-南東方向に連続していることから,断層に沿った活発なメタン湧水が行われているものと考えられる.同地点では,湧水変動を調べるため自己浮上式熱流量計を設置し約1年間の長期観測を実施した.白鳳丸KH-20-8航海で回収を試みたが機器の切り離し装置の不調により現在のところ回収には至っていない.
調査域は三浦海丘の西側斜面および相模海丘の南側斜面である.三浦海丘は水深1000 m付近の小さな平坦面を除き海丘頂部の水深600 mから1100 mまで急崖が連続する.急崖は北西-南東方向に連続するため,海底下に同方向の断層の存在が推定でき,大河内(1990, 地学雑誌)では崖の麓付近に活断層が推定されている.本研究では,この崖を横断する方向のSBP探査を5測線において行い,3点において海底面に達する反斜面を確認した(Misawa et al., 2020, Geo-Marine Lettersで一部公表).崖下の平坦面におけるピストンコア採泥では,暗緑色のシルトに細粒砂の薄層を複数挟む試料が得られており,浮遊性有孔虫の放射性炭素年代測定の結果,千年で約1mの堆積速度が得られている.断層が海底面に達する位置は,急崖から平坦面への傾斜の変換点に一致すること,早い堆積速度の場であるにも関わらず断層が埋積されていないことから,平均変位速度の大きな断層の存在が推定される.北西-南東方向に連続する急崖の基部を結んだ線は右雁行配列を示し,400 mずれたステップ部を横断するSBP記録には他と異なりフラワーストラクチャーとみられる高角の断層が認められる.これは地下で雁行配列する断層のジョグに相当し横ずれ変位よる構造である可能性が高い.
無人探査機を用いた急崖基部の柱状試料には,海丘側に傾斜した断層とみられる面構造が認められたが,年代の逆転はほとんど無く副断層とみられる.試料には暗緑色のシルト質粘土とシロウリガイの貝殻片を含んだ含礫泥層の互層が深度1.2 mまで認められ,断層に沿った湧水にともなうシロウリガイコロニーの発達と崖錐性の堆積作用の繰り返しを示しているものと考えられる.白鳳丸KH-19-5次航海では,無人探査機のカメラにより崖基部に生きたシロウリガイが広く分布し,シンカイヒバリガイの生息も確認された.このような化学合成生物群集は崖基部に沿って北西-南東方向に連続していることから,断層に沿った活発なメタン湧水が行われているものと考えられる.同地点では,湧水変動を調べるため自己浮上式熱流量計を設置し約1年間の長期観測を実施した.白鳳丸KH-20-8航海で回収を試みたが機器の切り離し装置の不調により現在のところ回収には至っていない.