日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G1-1.ジェネラル サブセッション構造地質

[1oral201-12] G1-1.ジェネラル サブセッション構造地質

2022年9月4日(日) 09:00 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:岡崎 啓史(広島大学)、中村 佳博(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、神谷 奈々(同志社大学)

11:30 〜 11:45

[G1-O-11] 単純な地形パラメータによる浅部プレート境界断層における摩擦分布推定手法の開発

*高下 裕章1、芦 寿一郎2、朴 進午2、宮川 歩夢1、矢部 優1 (1. 産業技術総合研究所、2. 東京大学大気海洋研究所)

キーワード:沈み込み帯、ジオメカニクス、日本海溝、摩擦分布

クリティカルテイパーモデル(CTM)は,プレート収束域において海溝に向かって先細る楔(ウェッジ)形を示すfold-and-thrust beltや付加体の,断面形状と断層強度の関係を理解するために考案された手法であり,ウェッジ形状を示す斜面傾斜角αとデコルマ傾斜角βからプレート境界断層の摩擦係数(μb’)を計算することができる.
ただし,地形パラメータでもデコルマ傾斜角βを求める際に問題が存在していた.βは基本的に反射法地震探査断面から推定されるため,断面の深度処理の精度に大きく影響を受ける.そのため断面ごとにμb’を比較する目的の場合,深度変換の精度が高い断面が必要となるため,結果としてCTMを適用できる断面の数が限られてしまう.
本研究ではこの状況を改善するために,CTMの力学的意味を再検討した.その結果,CTMに対するデコルマ傾斜角βの影響は小さく,特に①間隙水圧比が大きい場合と②内部摩擦が小さい場合,あるいはその両方の条件を満たす場合,斜面傾斜角αがμb’のプロキシとなりうることを発見した.更に,本研究で新たに導入したパラメータWOA(Weight of Alpha)によりαとμb’の近似の妥当性を検証できるようにした.検証の結果、多くの沈み込み帯でこの近似のための条件が満たされていることも明らかにした.
改めてこの近似を日本海溝に適用し,既存の水深測量データ71点のαを求め,浅部プレート境界断層の摩擦係数分布を推定した.その結果,摩擦係数が最頻値より小さい領域は2011年東北沖地震(Mw9.0)で大きな浅部破壊が発生した区間に相当することがわかった.