日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T1.[トピック]変成岩とテクトニクス

[1oral308-11] T1.[トピック]変成岩とテクトニクス

2022年9月4日(日) 14:30 〜 15:30 口頭第3会場 (14号館102教室)

座長:大柳 良介(国士舘大学)

15:00 〜 15:15

[T1-O-3] 板状鉱物の形態選択配向の変形による改変:マーチモデルを用いた2次元シミュレーション

*増田 俊明1 (1. 静岡大学防災総合センター)

キーワード:マーチモデル、シミュレーション、板状鉱物、選択配向、塑性変形

板状鉱物の形態選択配向の変形による改変:マーチモデルを用いた2次元シミュレーション 増田俊明(静岡大学)  板状鉱物のpreferred orientationにより生じる面構造(スレート劈開や片理)の形成過程について、ランダム粒子回転説に基づいたマーチモデル (March, 1932) を用いて解析した。 ★ 発端  上記面構造は変成岩の変形解析を行う場合に必ず意識する構造である。野外でその走行や傾斜を計測し、薄片を作成する際にもその方向を意識して岩石の切断を行うのが普通である。面構造の成因については1815年以来多くの議論がなされてきたが、依然として納得できる解釈には到達していない(e.g., Wenk et al., 2020)。1970年〜80年代に盛んに議論が行われたが、当時のコンピューターの計算速度が十分でなく、randomnessをuniformで代用して簡略的なシミュレーションを行ってきたのが、あいまいさの最大の原因であると考える。 ★ マーチモデル  変形場に置かれた線分(両端の2点で規定)は、一様変形に伴い座標が変化する(アフィン変換)。2点の座標の変化は、結果としてその線分の方位の変化に現れる(March, 1932 を参照されたし)。 ★ 目標  片理面と歪楕円の関係を徹底的に調べる事 (片理面は歪楕円の長軸と平行だと思っている研究者が多いが・・・ それは本当なのか???) ★ 本シミュレーションの特徴 (これまでの研究との違い) (1)扱う粒子数を最大100万個にまで拡張した。 (2)simple shear とpure shear を端成分とする広い範囲のvorticity に対応した。 (3)方位分布にvon Mises分布を採用し、片理や劈開の強度を定量化した。 (4)粒子配列のrandomnessを定量化した。 ★ 結果 (1)Vorticityは結果に影響しない。 (2)変形前の粒子の方位分布が一様の場合とランダムな場合とで、結果は同じではない。 (3)測定粒子数が少ないと(例えば <50)、信頼できるデータが得られない。 (4)マーチモデルを仮定した歪解析は可能である。 (5)歪楕円の長軸と平均方位は、厳密には平行でない。 ★ 波及  研究者が野外で片理面の走行・傾斜を測定する際に、あるいは岩石を切断し薄片を作る作業を行う際に、その作業の意義と限界を意識するようになるかも? (これまで私は、深く考える事なく面構造に垂直な薄片を作っていた。この研究を進めながら、その事に思い至り・・・・) [引用文献] March, A., 1932. Mathematische Theorie der Regelung nach der Korngestalt bei affiner Deformation. Z. Kristall., 81, 285 – 297. Wenk, H.-R. et al., 2020. Fabric and anisotropy of slates: From classical studies to new results. Journal of Structural Geology, 138, 104066.