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[G3-O-2] 旧韮山町地下水・地盤沈下シミュレーションの事後監査(その2)
キーワード:地盤沈下、事後監査、地下水シミュレーション
韮山町(2005年に伊豆長岡町・大仁町と合併して伊豆の国市に)の地下水・地盤沈下シミュレーションを1991年に実施した(韮山町,1992).これは1980~1990年を内挿検定期間とし,1991~2001年を予測期間とするものであった.内挿検定期間中の水準点変動量データがなかったため,隣接する函南町の水準点変動量を用いて内挿検定をおこなった.2003年にシミュレーション結果の事後監査をおこなった(藤崎,2003).一点しかデータがないが,水準点K-18の沈下量は1989~1999年で73mmに達し,揚水量増加案の予測値より大きな値を示していた.揚水量は横ばい傾向であったので,計算値は過小な予測をしていたといえよう. 今回,2015年までの水準点変動量データ(静岡県,1992-2017)によって,再び事後監査をおこなった.韮山町北部の水準点K-17では,1989~2002年の実測沈下量は111mmに達し,揚水量増加案の計算値より大きく,検定されたモデルは地盤沈下量について過小評価していたと評価される.韮山町中部の水準点K-18は,上記のとおりモデルは過小評価していた.その西の水準点K-19でも1989~2002年の沈下量は83mmで揚水量増加案を上回り,モデルは過小評価していた.韮山観測井付近の水準点K-20では,1991~2001年の累積計算沈下量が10~40㎜であるのに対して,1992~2015年の実測値は隆起を示していた.ここではモデルは沈下量を過大評価していた.韮山町南部の水準点136-005では,1992~2002年で3㎜の沈下を示し,揚水量減少案の計算値と対応していてモデルは妥当であったと評価される. 函南町の水準点K-13は1980~1988年で隆起していた.水準点K-16は1980~2008年で隆起していた.計算値はいずれも沈下をしており,モデルにおける韮山町の延長で設定した粘土層厚が誤りであったと評価される.K-12は内挿検定に使用した水準点であるので,実測値は計算値とほぼ一致している.伊豆長岡町の水準点K-21では,1994~2005年の沈下量が130mmを越え,計算沈下量は著しく過小評価となっている.K-22では1994~2015年で20mm程度の隆起をしめし,揚水量減少案の計算値に近く,モデルはほぼ妥当であると評価できる. 内挿検定に利用できる地盤沈下量データがわずかであったため,モデルの精度が低く地盤沈下量を過小評価していたことはやむを得ないと考えられる.また,一つの町のデータでモデルを構築するため,粘土層厚などのデータを外周に延長せざるを得ず,そこでもモデルの精度を低下させていた.地下水盆の一部分をモデル化することの限界があらわれている. 参考文献 韮山町,1992,韮山町の自然環境(ビデオテープ).藤崎克博,2003,第13回環境地質学シンポジウム論文集,321-326.静岡県,1992-2017,地下水調査報告書.