日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[2oral101-10] T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2022年9月5日(月) 09:30 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学 大学院 地域資源マネジメント研究科)

10:15 〜 10:30

[T14-O-4] GigaPanを用いて作成した超高解像度露頭画像の活用:山陰海岸ジオパークを例として

*川村 教一1、澤口 隆2、佐野 恭平1、松原 典孝1 (1. 兵庫県立大学大学院地域資源マネジメント研究科、2. 東洋大学経済学部)

キーワード:ギガパン、ジオサイト、山陰海岸、神鍋山、ウェブページ

背景
GigaPan架台は,モザイク合成のための写真撮影に特化したコンピュータ制御のカメラ雲台である。この架台を用いて自動撮影した多数の画像をモザイク合成することで,数十ギガバイトにも及ぶ1枚の画像(以下,GigaPan画像と称する)を作成できる(例えば,澤口,2022)。GigaPan画像はその解像度の高さを生かし,海外では地質工学分野での利用(Lee et al., 2019)のほか,地質学教育(例えばStimpson et al, 2010; Piatek et al., 2012)にも導入されている。

経緯
演者のうち澤口は,秋田県,男鹿半島・大潟ジオパークの安田ジオサイトの露頭のGigaPan画像を撮影した(川村・澤口,2021)。さらに,露頭の高解像度画像を自由に拡大・縮小して閲覧できるウェブサイトを開発した(澤口ほか,2021;澤口,2022)。野外活動の災害リスクに関する授業において,このウェブサイトを用いて大学生の露頭画像閲覧状況について授業前後で差異を見出すことができ,授業の評価に使用可能であることが明らかになった(澤口ほか,2021)。

ねらい
演者らは,ジオパークのジオサイトにある露頭の観察に利用できるのではないかと考えた。そこで今回は,山陰海岸ジオパークのジオサイトである,豊岡市日高町の後期更新世の神鍋火山,豊岡市竹野町の(通称)猫崎半島の中新統の堆積岩・火山岩体で2ケ所,計3カ所で露頭のGigaPan画像を撮影した。いずれも画像の拡大縮小を繰り返すことで,地質や構造について閲覧者自身が形成過程などについての考えを持てると推測される対象である。これらの画像は,学校教育,社会教育の教材として活用するために撮影した。

撮影方法
澤口(2022)を参照されたい。

作例1:スコリア丘の断面
神鍋火山の画像は,スコリア層の露頭を撮影したものである。GigaPan画像を利用者に閲覧させることで,粒径が異なる粒子で地層が構成されていることや,粒子の形状・内部構造の特徴を画像から見出させることを企図としている。画像閲覧を通じて,火山体(スコリア丘)が,噴火に伴うマグマの飛散により形成されたことを推測させることが可能ではないかと考えている。
作例2・3:堆積岩と堆積構造や火山岩体との関係
猫崎半島の露頭2カ所は,層理が明瞭な堆積岩中の荷重痕と推測される構造および堆積岩と火山岩の境界面である。前者(作例2)は上位の礫岩が下位の砂岩泥岩互層に下方に貫入した堆積構造を撮影したものであり,大規模な荷重痕の形成過程を推論する教材として好適である。後者(作例3)は堆積岩中に流紋岩の岩床が貫入,もしくは溶岩流が堆積岩を覆ったものである。層理や節理の有無を観察することで地質の境界面を見出せることができ,観察を通じて露頭から情報が得られることがわかる。

展望と課題
これらの画像は,山陰海岸ジオパークの観光用,教育用,保全計画用に活用することを想定している。GigaPan画像を閲覧することによる効果を明らかにすることが今後の課題である。

文献
川村教一・澤口 隆(2021):日本地球惑星科学連合2021年大会.
Lee, H., Mostegel, C., Fraundorfer, F., Kieffer, D. S. (2019) : IAEG/AEG Annual Meeting Proceedings, San Francisco, California, 2018. Springer International Publishing AG, Vol. 6. p. 207-215.
Piatek, J. L.et al. (2012): Developing virtual field experiences for undergraduates with high-resolution panoramas (GigaPans) at multiple scales. In Google Earth and Virtual Visualizations in Geoscience Education and Research, Geological Society of America Special Paper, 492, 305-313.
澤口 隆(2022):東洋大学紀要 自然科学篇,66,15-32.
澤口 隆ほか(2021):日本科学教育学会研究会研究報告,35(5),1-4.
Stimpson, I., et al. (2010): Multi-scale Geological Outcrop Visualisation: Using Gigapan and Photosynth in Fieldwork-related Geology Teaching. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2010EGUGA..12.4702S/abstract