日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[2oral101-10] T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2022年9月5日(月) 09:30 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学 大学院 地域資源マネジメント研究科)

10:45 〜 11:00

[T14-O-6] 筑波山地域ジオパークにおけるジオサイトの再設定と評価

*高木 秀雄1 (1. 早稲田大学)

キーワード:筑波山地域ジオパーク、ジオサイトの評価

2015年のユネスコの正式事業化に伴い,ユネスコのガイドラインの設定に伴ったジオサイトの定義の変化への対応が求められてきた.ジオサイトの見直しは,筑波山地域ジオパークの緊急の課題となっている.そこで,筑波山地域ジオパーク推進協議会事務局による見直しとは別個に,昨年度に筑波山地域の旧ジオサイトを取材し,ジオサイトの整理と新たなジオサイトの提案も含めながら,Suzuki and Takagi (2018) に基づくジオサイトの評価を行った.この評価法は,6つの主項目(教育的価値Ved,科学的価値Vsc,観光価値Vtr,安全性とアクセスVsa,保全状況とサイトの持続可能性Vcs,情報の整備状況Vti)を3つづつの副項目に分けて,各々1点〜4点まで4段階評価した平均値を各主項目の点数として評価したものである.また各ジオサイトについての課題を検討しつつ,今後のジオツーリズムの活用につなげる基礎資料を作成し,2022年3月に事務局に提供した. 旧来の定義に従った広い面積を持つ「ジオサイト」は26箇所設定されており(筑波山地域ジオパークHP),それらを今回「エリア」と読み替えて新しい定義のジオサイトを設定した.ただし,これまで取材・評価できたのは地質や岩石が優先的にみられる14エリア,19ジオサイトである.なお,旧採石場跡については,事務局からの情報でジオサイトから外す方針であることから,取材対象から外した.結果をまとめると以下のようになる.
(1)ジオサイト評価の総合点で24点満点中18点を超えるジオサイトは筑波山山頂エリアの3ジオサイトと筑波山南麓エリアの筑波山梅林ジオサイト, 崎浜・川尻のカキ礁ジオサイトだけであった.いずれも共通するのはジオサイトに案内板が存在し,観光価値が高いのが特長である.
(2)15点〜18点のジオサイトは, 高峯山麓の花崗岩, 椎尾山薬王院, 閑居山の百態磨崖仏, 滝野不動堂の石灰岩である. 高峯山麓の道路沿いの花崗岩は新鮮であることから,案内板が必要.他の3ジオサイトは歴史や文化と関連性が深く,ジオの見どころがあるサイトである.
(3)残りのジオサイトは15点未満となっている. それらが共通する点はVti(情報の整備状況)の評価が低いことであり,拠点には大きな案内板があっても,ジオサイトに案内板がないサイトが大部分であることから,ガイドなしで訪問するのが難しい.個別のジオサイトの案内板は大きくなくても良いので,早急に整備が必要である.そのほか,誘導版,パンフレット,webサイトなどの情報の充実が望まれる.
(4)今回新たに設定した林道今泉吾国線沿いのジオサイトは,八溝帯の要素である付加体の重要な岩石の組み合わせ(石灰岩,チャート,砂岩泥岩)が道路沿いで見られるサイトであることから,変成作用は受けているものの今後の整備と活用が期待される.
文献
Suzuki, D. A. and Takagi, H., 2018, Geoheritage, 10, 123-135.
筑波山地域ジオパーク・ホームページ(https://www.tsukuba-geopark.jp/sp/).(2022.6.29参照)