日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

[2oral101-10] T14.[トピック]大地と人間活動を楽しみながら学ぶジオパーク

2022年9月5日(月) 09:30 〜 12:00 口頭第1会場 (14号館501教室)

座長:天野 一男(東京大学空間情報科学研究センター)、松原 典孝(兵庫県立大学 大学院 地域資源マネジメント研究科)

11:30 〜 11:45

[T14-O-9] 日本海拡大事件とジオパーク

*天野 一男1,2 (1. 東京大学空間情報科学研究センター、2. 日本ジオパーク学術支援連合)

キーワード:ジオパーク、日本海拡大、グリーンタフ、日本列島形成史

ジオパークでは,地球・大地(ジオ)の上に広がる動植物の生態系の中で,人間の文化,産業,歴史を学び,地域の魅力を知るとともにそれを教育や観光に活用しようという目的をもって,活動が展開されている.その際,日本列島形成史に関する知識が基本となる.地質学を中心とした地球科学の学術研究の最新の結果を組み入れた知識の枠組みの中で,ジオパークのストーリーが学際的に展開されることが必要となろう.
 日本列島形成史は,7億年前から5億年前の大西洋型受動的大陸縁のステージ,5億年前から2000万年前の太平洋型活動的大陸縁のステージ,2000万年前以降の島弧のステージに分けられる(磯﨑ほか, 2011).活動的大陸縁ステージを特徴づけるものは付加体であり,島弧のステージを特徴づける事件は日本海の拡大である.日本列島形成史は,現在も精力的に進められている研究対象であるが,必ずしも定説はない.しかし,歴史の大部分が活動的大陸縁と島弧であったと言う大きな枠組みは今後も変わることはないものと考えられる.
 2022年1月現在,日本には9地域のユネスコ世界ジオパークを含む46地域のジオパークがある.それぞれのジオパークでは,地域のジオの特徴を生かしたストーリーが作られている.大部分は工夫された良いストーリーであるが,日本のジオパークが総体として世界に何をアピール出来るかという点では課題が残る.活動的大陸縁から島弧の形成という,日本列島の地球科学的特徴を前面に押し出したストーリーの構築が必要となろう.
 日本のジオパークの分布を地域別に調べてみると,東北,中部,九州,関東,北海道,近畿・中国地方は13〜18%で大きな差はない.四国は7%であるが,面積が狭いことを考慮すると,全国にジオパークはおおよそ均一に分布していると言える.日本列島形成史の様々の局面のストーリーを網羅することが可能と思われる.次にそれぞれのジオパークの主要テーマを1ジオパークにつき1つのキーワードを当てて分類して見ると,『第四紀火山』が最も多いが,『日本海の形成』と『グリーンタフ』を合わせたものがそれに続いている(図1).これは,島弧の形成に関するテーマを扱っているジオパークが多いことを示している.
 日本海拡大事件は,日本列島形成にとって重要であるが,現時点で必ずしも定説はない(柳井ほか, 2010; 天野・細井, 2021).本講演では,日本海の形成に関するストーリーが各地のジオパークでどう扱われているかを検証し,日本のジオパークのストーリーが今後一層国際性を持つための課題ついて考察したい.

[文献]
 天野一男・細井 淳, 2021, 東北日本のグリーンタフ地域における日本海拡大期に関する研究史.地質雑, 127, 381-394.
 磯﨑行雄・丸山茂徳・中間隆晃・山本伸次・柳井修一, 2011, 活動的大陸縁の肥大と縮小の歴史-日本列島形成史アップデイト-. 地学雑誌, 120, 65-99.
 柳井修一・青木一勝・赤堀良光, 2010, 日本海の拡大と構造線:MTL, TTLそしてフォッサマグナ.地学雑誌, 119, 1079-1124.