16:45 〜 17:00
[T10-O-12] 南鳥島マンガンノジュールのOs同位体層序年代決定とμXRF元素マッピングによる成長ハイエイタスの実態解明
キーワード:マンガンノジュール、Os同位体比、MCMCベイズ推定、μXRF元素マッピング、成長ハイエイタス
マンガンノジュールは,マンガンや鉄の酸化物・水酸化物を主成分とする化学堆積岩であり,マンガンと鉄のほかに,コバルト,ニッケル,銅,希土類元素等の希少金属元素が高濃度で含まれていることから,将来の資源として開発が期待されている [1].2010年には,南鳥島沖の日本の排他的経済水域 (EEZ) 内でも,マンガンノジュールの大規模な密集域が発見された [2].さらに,2016年と2017年には,YK16-01航海およびYK17-11C航海がそれぞれ実施され,マンガンノジュールが南鳥島EEZの東方から南方にかけての広大な範囲に分布していることが明らかにされるとともに,それぞれ8回ずつ合計16回の潜航調査により,多くのノジュールサンプルが採取された [3].
発表者らは,これまでに南鳥島EEZの東部から採取された2試料のマンガンノジュールに対してOs同位体層序年代決定を行い,これらのマンガンノジュールが約35 Maに成長を開始している事を明らかにするとともに,30~10 Maにかけて20 Myr程度の無堆積期間(ハイエイタス)が存在している可能性を指摘した [4].本研究では,さらに南鳥島EEZの南東部および南部から採取されたマンガンノジュールに対してもOs同位体層序を用いた年代決定を行い,海域によるマンガンノジュールの成長履歴の違いについて比較・検討を行った.また,鉄マンガン酸化物層の微小部蛍光X線 (μXRF) 分析を実施し,ハイエイタスが存在する部分の成長構造および鉱物化学組成についての検討も行った.
Os同位体比分析は,時間・空間解像度を上げるために直径2mmのタングステンカーバイド製ドリルを用いて2mm間隔でそれぞれ約1mgの粉末試料を削り出し,千葉工業大学次世代海洋資源研究センターに設置されているMC-ICP-MSに気化法を組み合わせて実施した [5,6].またその際,極少量の試料から高精度で同位体比を得るために,イオンカウンターを用いて測定した [6].そして,分析によって得られたOs同位体比を海水のOs同位体比変動曲線にフィッティングすることで,年代値を制約した.フィッティングに際しては,マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) によるベイズ推定 [7] を用いることで,可能性の高い年代値を絞り込んだ.さらに,Os同位体分析用の試料を削り出した半割ノジュール試料に対して,鉄マンガン酸化物各層の年代値と化学組成の対応を見るためにμXRFによる酸化物層の元素マッピングも行った.
本発表では,得られた年代値およびμXRF分析の結果について報告し,南鳥島マンガンノジュールの成長履歴とハイエイタスの発生年代およびその原因について議論を行う.
<引用文献>
[1] Hein et al. (2013) Ore Geology Reviews 51, 1-14. [2] Machida. et al. (2016) Geochemical Journal 50, 539-555. [3] Machida et al. (2021) Marine Georesources & Geothechnology, 39, 267–279. [4] 青柳ほか (2021) 日本地質学会第128年学術大会 [5] Nozaki et al. (2012) Geostandards and Geoanalytical Research,36, 131-148. [6] Ohta et al. (in press) Journal of Analytical Atomic Spectrometry. [7] Josso et al. (2019) Chemical Geology 513, 108-119.
発表者らは,これまでに南鳥島EEZの東部から採取された2試料のマンガンノジュールに対してOs同位体層序年代決定を行い,これらのマンガンノジュールが約35 Maに成長を開始している事を明らかにするとともに,30~10 Maにかけて20 Myr程度の無堆積期間(ハイエイタス)が存在している可能性を指摘した [4].本研究では,さらに南鳥島EEZの南東部および南部から採取されたマンガンノジュールに対してもOs同位体層序を用いた年代決定を行い,海域によるマンガンノジュールの成長履歴の違いについて比較・検討を行った.また,鉄マンガン酸化物層の微小部蛍光X線 (μXRF) 分析を実施し,ハイエイタスが存在する部分の成長構造および鉱物化学組成についての検討も行った.
Os同位体比分析は,時間・空間解像度を上げるために直径2mmのタングステンカーバイド製ドリルを用いて2mm間隔でそれぞれ約1mgの粉末試料を削り出し,千葉工業大学次世代海洋資源研究センターに設置されているMC-ICP-MSに気化法を組み合わせて実施した [5,6].またその際,極少量の試料から高精度で同位体比を得るために,イオンカウンターを用いて測定した [6].そして,分析によって得られたOs同位体比を海水のOs同位体比変動曲線にフィッティングすることで,年代値を制約した.フィッティングに際しては,マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC) によるベイズ推定 [7] を用いることで,可能性の高い年代値を絞り込んだ.さらに,Os同位体分析用の試料を削り出した半割ノジュール試料に対して,鉄マンガン酸化物各層の年代値と化学組成の対応を見るためにμXRFによる酸化物層の元素マッピングも行った.
本発表では,得られた年代値およびμXRF分析の結果について報告し,南鳥島マンガンノジュールの成長履歴とハイエイタスの発生年代およびその原因について議論を行う.
<引用文献>
[1] Hein et al. (2013) Ore Geology Reviews 51, 1-14. [2] Machida. et al. (2016) Geochemical Journal 50, 539-555. [3] Machida et al. (2021) Marine Georesources & Geothechnology, 39, 267–279. [4] 青柳ほか (2021) 日本地質学会第128年学術大会 [5] Nozaki et al. (2012) Geostandards and Geoanalytical Research,36, 131-148. [6] Ohta et al. (in press) Journal of Analytical Atomic Spectrometry. [7] Josso et al. (2019) Chemical Geology 513, 108-119.