日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T11.[トピック]堆積地質学の最新研究

[2oral401-11] T11.[トピック]堆積地質学の最新研究

2022年9月5日(月) 08:45 〜 12:00 口頭第4会場 (14号館401教室)

座長:松本 弾(産総研)、横山 由香(東海大学海洋学部)、山口 悠哉(石油資源開発株式会社)

11:30 〜 11:45

[T11-O-17] 秋田県男鹿半島生鼻崎露頭における更新統北浦層砂岩の淘汰度と孔隙率の関係

【ハイライト講演】

*野口 貴德1、千代延 俊1、荒戸 裕之1、佐藤 宏大2、間所 洋和2、永吉 武志2 (1. 秋田大学大学院国際資源学研究科資源地球科学専攻、2. 秋田県立大学)

世話人よりハイライトの紹介:著者を含むグループでは,堆積物の地質セッティング,および砂岩貯留岩性状の調査を踏まえ,露頭画像と合わせた機械学習による岩相のモデル化技術という先進的な取り組みを実施している.本講演では,秋田県男鹿半島生鼻崎露頭における更新統北浦層砂岩を対象とし,岩色が砂岩の不均質を示していること,その要因として粒度の違いのみならず,孔隙率・孔隙径およびその形状も重要であることを示し,砂岩貯留岩の不均質性を取り込んだモデル構築に資することを期待する内容となっている.※ハイライトとは

【はじめに】
 秋田県西部に位置する男鹿半島には上部新生界が広く分布し,露頭の連続性も良いことから日本の代表的な上部新生界の標準層序として,多くの研究がなされてきた.本研究対象である男鹿市生鼻崎地域には砂岩,シルト岩,及び泥岩の互層が発達した北浦層の上部が海食崖を形成し大露頭を成している(鹿野ほか,2011).また,この露頭を対象に千代延ほか(2021)は北浦層砂岩泥岩互層における堆積物の地質セッティング,及び砂岩貯留岩性状を調査し,露頭画像と合わせた機械学習によるモデル化技術を検討した.その中では,単層スケールでの不均質性を画像上で明らかにするため,北浦層の砂岩部の色の違いに着目し,岩色と粒径分布及び孔隙率に相関があると認めた.ただ一方で北浦層砂岩部の色と孔隙率の関係は定性的な解釈にとどまり,定量的に評価しモデル化するにはより多くの測定点を加える必要があった.そこで本研究では,測定点の記録を増加し,砂岩層の岩色や岩相の違いと孔隙率,淘汰度の関係性から砂岩の不均質性を抽出する目的で検討を行った.
【研究手法】
 本研究では露頭調査として,対象とした岩相の柱状図を作成するとともに,幅6 m に渡り露頭のスケッチを行った.併せて砂岩単層を1 m 四方に区切り,定方位試料を合計101個採取した.さらに,調査対象層の孔隙率の分布を明らかにする目的で合計30枚薄片を作成し,定方位試料の鉛直方向面を観察した.孔隙率は撮像した検鏡画像から画像編集ソフトを用いて計測した.
【結果】
 調査対象とした砂岩の単層は砂岩優勢砂岩シルト岩互層中の中粒~極細粒の砂岩である.単層の上部には平行葉理が見られ,炭質物も多く認められた.砂岩の岩色は,赤褐色,褐色,灰色を呈し,この3種類に大きく区分することが可能である.その分布は褐色の割合が最も大きく,赤褐色及び灰色の割合はほぼ同程度であった.また灰色の部分に生物擾乱が顕著に発達している.
 砂岩の薄片の観察からは,全岩相で石英と有色鉱物が多く,わずかに斜長石も認められた.粒子の円磨度を見ると,褐色,灰色,赤褐色を呈する岩相のいずれも亜角礫~円礫であった.有色鉱物の量は,赤褐色が最も多く,褐色,灰色と減少した.孔隙率の測定結果からは,赤褐色の平均孔隙率は15.9%,中央値は15.8%で,褐色の平均孔隙率は 16.8%,中央値は16.6%,灰色の平均孔隙率は19.0%,中央値は19.1%であった.孔隙径やその連続性に注目したところ,赤褐色の孔隙径は約0.2 ~0.3 mmであり,連続性も乏しい.一方の褐色及び灰色の孔隙径は約0.5 ~0.6 mmであり,灰色の岩相で孔隙径の大きさに差違が認められた.孔隙を埋めるように存在する粘土鉱物も観察でき,赤褐色で最も多く認められた.また,石英や斜長石などの鉱物の大きさは灰色が最も大きく,次いで赤褐色,褐色と小さくなる.
【考察および結論】
 以上の結果より,中粒~極細粒砂岩の単層内で岩色の違いにより粒度の違いが認められ,岩色が砂岩の不均質性を表していることが明らかとなった.また,不均質性をもたらす要因として,粒度の違いだけでなく,孔隙率,孔隙径及びその形状も重要となることが示された.孔隙率や形状の変化は,孔隙を二次的に埋める粘土鉱物に大きく影響を受けていることが指摘できる.本調査より砂岩の不均質性は,粒度の違いだけでなく,孔隙率,孔隙径及びその形状の違いによることが明らかにできた.この結果は砂岩貯留岩の不均質性をモデル化する上で重要であり,今後の貯留層モデル構築への基礎データとなることが期待できる.
 
<引用文献>千代延ほか,2021:JAPT講演要旨,鹿野ほか,2011:地質図幅