日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T8.[トピック]文化地質学

[2oral520-25] T8.[トピック]文化地質学

2022年9月5日(月) 16:00 〜 17:30 口頭第5会場 (14号館402教室)

座長:猪股 雅美(広島大学)、森野 善広(パシフィックコンサルタンツ株式会社)

17:15 〜 17:30

[T8-O-13] プレート境界地震発生の再現模型の作成とその意義

*小泉 奈緒子1、松野 茂富1 (1. 和歌山県立自然博物館)

キーワード:プレート境界地震、博物館

模型開発の目的と経緯  和歌山県立自然博物館では2019年7月から8月にかけて第37回特別展「われる!ゆれる!地震のひみつ」を開催した.本特別展は「災害としての地震」としての側面よりも,「自然現象としての地震」に焦点を置いた展示会を目指したものである.断層の剥ぎ取り標本や液状化実験など,屋内での展示であっても地震発生による現象を視覚的に捉えられるような展示に重点をおいた.この特別展において目玉展示のひとつとしたものが,プレート境界地震の発生を再現した可動式模型である.  近年,コンピューターグラフィックス(CG)等で再現したプレート境界地震の発生モデルの動画は,メディアなどでもよく目にするものとなっている.しかし,CGを用いた再現は2次元的な知覚に止まらざるを得ず,地震の発生を3次元的な物理現象として捉えにくいという側面がある.そこで,シンプルでありながらもプレート境界での地震発生のメカニズムを複合的に再現する模型を作成し,来場者に地震の発生という「現象」を実感してもらうことを目的に模型の開発を行った.
模型の開発  模型の作成は,ホームセンターなどで手に入る素材に限り,各パーツの切断や成形,組み立てまでの全ての工程を博物館職員のみで行った.模型本体の枠は木の板で作製し,大陸プレートはプラスチックボードで作製した.大陸プレートは海洋プレートの沈み込み時に海溝と反対側に張り出すように形状をL字状に加工し,圧縮によるひずみの蓄積を視覚的に捉えられるようにした。また、圧縮時に上方に撓む程度にボードの厚みを調整することで,プレート上の引張場を再現した.海洋プレートには障子紙を使い,ベルトコンベア様で稼働させることによってプレートの沈み込みとその繰り返しを再現した.両プレートにはマジックテープを貼付してアスペリティとし,不規則な地震発生間隔や規模の違い、前震や余震などを表現した.また,大陸プレートの「陸上」に相当する部分には建物の模型を設置し,小学生など年少の来館者にも地震による揺れをイメージしやすいようにするなどの工夫も行った.
「われる!ゆれる!地震のひみつ」での模型展示  作製した地震模型は,和歌山県立自然博物館の特別展会場において,約1ヶ月半の間,展示を行った.期間中はより来場者の理解が深まるように担当者(演者)による解説を行い,会場では感想,意見を収集した.期間中来場者は2万5千人を超え,本特別展を通して地震という現象への興味・関心を高め,理解が深まったなどの意見が寄せられた.
「手作り」の地震模型作製の意義  プレート境界地震の再現模型はすでに様々な教材が作成されているが,手作りものに限れば,素材や費用、設置場所の問題もあり,プレートの動きやひずみの蓄積などの再現に止まっていることが多かった。今回,複合的な地震発生メカニズムの再現模型の作成を手作りで可能としたことにより,地震をテーマとする地学教育の発展に役立てることができると期待される.本模型は2019年の特別展終了後にも,大阪市立自然史博物館で開催された「大阪アンダーグラウンド –掘ってわかった大地のひみつ–」でも展示を行い,また,高槻市立自然博物館(あくあぴあ芥川)の常設展示ではこの模型を元に作成された模型の展示が行われている.今後は小型化,手動化などを目標に開発・改良を続け,博物館だけでなく,より身近な現場,特に学校現場での教育普及に有効な教材の開発につなげていきたい.