日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T6.[トピック]日本列島の起源再訪

[3oral201-13] T6.[トピック]日本列島の起源再訪

2022年9月6日(火) 08:45 〜 12:00 口頭第2会場 (14号館101教室)

座長:磯崎 行雄(東京大学)、佐藤 友彦(岡山理科大学)、澤木 佑介(東京大学)

08:45 〜 09:00

[T6-O-1] 地球化学データベースから見る、日本列島基盤岩組成の東西差、地域性と、日本列島形成モデルとの関係

*原口 悟1、上木 賢太2、岩森 光1 (1. 東京大学地震研究所、2. 海洋研究開発機構)

キーワード:地球化学データベース、データ分布、シームレス地質図、日本列島の化学的特徴

日本海拡大前の日本列島の中国大陸縁辺における「原位置」は、日本海拡大モデルの構築に関連して、これまでに多くのモデルが提示されている。モデルを考えるに当たっては、日本海拡大前の地質を年代ごとに特徴をまとめ、地質形成過程の中での位置付けを明らかにするすることが重要となる。一方、日本列島の地質構造発達の地球化学分野からの検討も、各時代における化学分析の動向、および地質発達モデルの構築と改訂を反映しながら進められてきた。また、これらの検討に用いる化学データも、分析技術の進歩に伴い、質、量ともに急速に充実してきており、これらの研究を通した、日本列島の地球化学的な発達プロセスの解析は、今なお進行中の研究課題である。原口他(2019年地質学会秋季大会、JpGU-AGU Joint Meeting 2020)では、日本列島地殻構成要素の岩相ごとの「東西差」を、地球化学データベース「DODAI (Haraguchi et al., 2018)」に収録されたデータを基に、地殻の化学組成の形成過程を考察した(図1)。一方、同データベースの化学組成データと、地質調査所発行のシームレス地質図に基づく、岩相ごとの露出面積比との比較から、岩相ごとの化学組成データ数が大きく異なることが明らかになった。DODAI収録のデータでは、深成岩のデータ数が全体の約45%と、シームレス地質図での面積比の約11%に対して多く、深成岩への地球化学分野からの注目度が高いことが窺える。また、火山岩のデータも約30%を占めており、火成岩のデータ数が充実している。一方で変成岩、堆積岩は、面積比はそれぞれ約19%、25%に対して、DODAI収録データはそれぞれ約12%と少なく、化学方面からのアプローチの難しい分野であることが窺える。このような化学データ数の特徴は、国際的なデータベースのGEOROCの日本列島のデータでも同様に認められる。また、これらのデータ数の少ない岩相は、特定の研究によるデータ数が全体に対して大きな割合を占めることがあり、日本列島のような広域の化学的特徴を考えるに当たって強いバイアスをかけることがある。このため、日本列島地殻の形成モデルに火成岩以外の岩相の化学的特徴を導入するに当たっての大きな課題となっている。本報告では、これらの地質、地球化学データの特徴に基づく、日本列島の地球化学組成および形成モデルを考える上での現状と課題を紹介したい。

シームレス地質図に基づく岩質ごとの面積比算出にあたり、ご協力いただいた産総研・西岡芳晴氏に感謝いたします。

引用文献
Haraguchi, S., et al (2018) 地質学雑誌, 124, 1049-1054
原口他 (2019) 日本地質学会秋季大会, R18-P-4
原口他 (2020) JpGU-AGU Joint Meeting, MGI39-P03