日本地質学会第129年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

T6.[トピック]日本列島の起源再訪

[3oral201-13] T6.[トピック]日本列島の起源再訪

2022年9月6日(火) 08:45 〜 12:00 口頭第2会場 (14号館101教室)

座長:磯崎 行雄(東京大学)、佐藤 友彦(岡山理科大学)、澤木 佑介(東京大学)

10:00 〜 10:15

[T6-O-6] 日本の白亜紀-古第三紀の火成活動の時空間変遷とテクトニクスとの関連

*山岡 健1、ウォリス サイモン1 (1. 東京大学)

キーワード:珪長質火成活動、白亜紀、古第三紀、テクトニクス、海嶺沈み込み

火山弧における火成活動の時空間変化はプレート運動と密接に関連し、テクトニクス復元に向けた重要な制約となる。白亜紀は環太平洋地域で海洋プレートの活発な生産と沈み込みに伴って火成活動が活発化した時期であり、各地に形成された火成岩区はプレート収束境界における大規模な火成活動の栄枯盛衰を知る上で重要な情報源である。日本には約130 Ma以降の島弧型の珪長質火成岩類が広く分布している。東北日本では約130–100 Maの範囲で単調な東から西への年代の若化が観察される[1]。一方、西南日本では約120 Ma以降の幅広い年代の火成岩がやや複雑に分布しており、それらを説明するために、主に海嶺の沈み込みに関連したテクトニックモデルが提案されている[2–5]。しかし、これらのモデルは、論文公表当時のプレート復元モデルに大きく影響を受け、海嶺の沈み込み時期や海溝との位置関係が一致していない。また、議論の基礎となる年代データにはRb–Srアイソクロン年代やモナズ石CHIME年代など、信頼性に疑問の余地がある[6]年代値も多く用いられている一方、ジルコンのU–Pb年代データの蓄積も進んでいるため、改めてデータセットを見直す必要がある。 本講演では、ジルコン晶出年代を中心に、閃ウラン鉱やトール石のU–Th–total Pb年代[7]も含めて、東北日本および西南日本における白亜紀-古第三紀珪長質–中間質火成岩の年代データ約1200点を新規にコンパイルした結果を示す。K–ArおよびAr–Ar年代は冷却年代を示すが、適切に結晶化年代と比較することで、データ不足の地域を補完することが可能である。 まず、西南日本では、120–60 Maの範囲で、現在の緯度方向によく対応して北に向かう火山フロントの移動が明瞭に確認される。ただし、120–100 Maの火成活動は朝鮮半島も含めて、大陸側に広範囲に認められる。また、60–50 Maには明瞭な火成活動の停止が見られる。50 Ma以降は日本海沿岸に沿って現在の中央構造線や海溝とほぼ平行に火山フロントが位置している様子が確認され、西南日本における火山フロントは、火成活動の停止期を挟んで約20°斜交していることが明らかとなった。また、テクトニクス制約に有効と考えられる高Mg安山岩質マグマやアダカイト質マグマは、東北日本・西南日本に共通して、130–100 Ma(イベント1)、70–60 Ma(イベント2)、50–30 Ma(イベント3)に集中する。 これらの分布を説明するテクトニクスとして、イベント1は沈み込み開始[8]、イベント2は海嶺沈み込み直前、イベント3は海嶺沈み込み直後に対応付けられる可能性が高い[9]。 また、西南日本と同様の火成活動の停止は朝鮮半島からサハリンまで共通するため、海嶺は海溝とおおよそ平行に沈みこんだと考えられる[9,10]。130–60 Maの西南日本および東北日本の大陸側への火山フロントの移動は、沈み込むスラブの若化に伴う沈み込み角度の浅化によって説明可能である[4]。また、古地磁気学的データから示唆される西南日本における70から20 Maの間での約20°の時計回り回転[11]は、海嶺沈み込み前後の火山フロントの斜交と非常に整合的である。この回転は、海嶺沈み込みに誘発されるリフティングに対応付けられる可能性がある。以上より、現在観察される日本列島の主要な火成活動の時空間分布は、60–50 Maにかけての海嶺沈み込みによって大規模に改変された結果を反映している可能性が高い。
文献: [1] Tsuchiya et al., 2015, doi:10.2465/gkk.131228; [2] Kinoshita & Ito, 1986, doi:10.5575/geosoc.92.723;[3] Nakajima et al., 1990, doi:10.1007/BF01575616; [4] Iida et al., 2015, doi:10.1111/iar.12103; [5] Wu et al., 2022, doi:10.1016/j.epsl.2022.117445; [6] Skrzypek et al., 2016, doi:10.1016/j.lithos.2016.04.025; [7] Yokoyama et al., 2016, Mem. Natl. Mus. Nat. Sci., Tokyo, 51, 1–24; [8] Endo et al., 2012, doi:10.1016/j.lithos.2012.05.010; [9] Wu & Wu, 2019, doi:10.1130/G46778.1; [10] Liu et al., 2020, doi:10.1016/j.earscirev.2020.103317; [11] Uno et al., 2021, doi:10.1186/s40623-021-01457-6.