[T11-P-7] (エントリー)モンゴル西部ゴビ・アルタイ県のカンブリア系下部Bayan Gol層から産するオンコイドの特徴と形成環境
キーワード:オンコイド、石灰質微生物類、空隙、モンゴル西部、カンブリア系下部
オンコイドは,生砕物などを核として,その周りに同心円状ラミナが発達する球状粒子である.ラミナが発達する被覆部は,微生物活動によって形成される.先カンブリア時代からもオンコイドは報告されているが,カンブリア紀に入って,多様な石灰質微生物類を含むオンコイドが多数報告されるようになる.モンゴル西部ゴビ・アルタイ県に分布するBayan Gol層(カンブリア系下部)では,層厚約8mにわたるオンコイド層が発達する.本研究では,オンコイド層およびオンコイド層から分離した各オンコイドを研究対象とし,オンコイドのタイプを分類し,各タイプの形成様式や層準ごとの分布をもとに,堆積環境を明らかにする.
砂岩層に挟在するオンコイド層は,オンコイド-ウーイドgrainstone,ウーイド-オンコイドgrainstone,オンコイドgrainstoneから構成される.オンコイドは,微細組織に基づいて5タイプ(層状,一部波状,一部斑点状,斑点状,樹状タイプ)に分類される.発表では,明確に区分される層状,斑点状,樹状タイプを取り上げる.1)層状タイプは,層状ラミナで特徴付けられ,明層(幅0.5~2 mm)と暗層(幅0.5~2 mm)の互層が明瞭である.フィラメント状を示す石灰質微生物類Girvanellaが豊富で,明層ではラミナに対して垂直方向に,暗層では水平方向に分布する傾向がある.被覆部には,不規則形態の微小な空隙(直径0.2~2 mm)が多数発達するが,空隙内や空隙間で部分的にGirvanellaのフィラメントが認められる.2)斑点状タイプでは,ラミナが不明瞭であるが,暗色ミクライトからなるドーム状構造が散点的に発達する.ドーム状構造中では,短いフィラメント状を示す石灰質微生物類が豊富である.被覆部では,内部をぺロイド状粒子で充填された空隙(直径1 mm~10 mm)やウーイドが多く認められる.3)樹状タイプは,核の周りで放射状に樹状構造が発達することで特徴づけられる.樹状構造の内では,部分的にGirvanellaを含むラミナが認められる.空隙は稀である.一方,樹状構造間には,ぺロイド状粒子の他に石英粒子が稀に堆積する場合もある.
オンコイド層内では,ウーイドとオンコイドの占める割合が変化する.ウーイド優占のオンコイド-ウーイドgrainstoneでは斑点状タイプのオンコイドが多く,オンコイド優占のウーイド-オンコイドgrainstoneやオンコイドgrainstoneでは層状タイプのオンコイドが多くなる傾向がある.
検討したオンコイド層は,ウーイドを豊富に含むことから,浅海のウーイドによる砂瀬周辺で形成されたと推定される.層状タイプはGirvanellaが豊富な明暗のラミナで特徴付けられ,水流の影響で定常的に転がりながら,明層ではGirvanellaが活発に光合成をおこない垂直方向へ成長,暗層では水平方向に成長することで形成された.微小な空隙は,シアノバクテリアの光合成による酸素の泡の捕捉に由来すると説明された (Wilmeth et al., 2015).しかし,空隙内に微生物類のフィラメントが残存していることから,空隙は,微生物類の密集部の分解や,石灰化が弱い部分の溶解に起因すると考えられる.斑点状タイプでは,短いフィラメント状微生物類が多方向に成長することでドーム状構造を次々と発達させた.また,斑点状タイプではウーイドが被覆部にトラップされていることが多いことから,ラミナの発達が抑制された可能性がある.一方,樹状タイプでは,Girvanellaなどの微生物類が上方へと成長することで樹状構造を形成したが,水流の影響で稀に転がり,成長方向を変えることで樹状構造が放射状に発達したと推定される.樹状タイプは,石英粒子を多く含むことから,他のタイプとは異なり,陸源性砕屑物が頻繁に流入する環境で形成されたと考えられる.
〈引用文献〉
Wilmeth, D.T., Corsetti, F.A., Bisenic, N., Dornbos, S.Q., Oji, T., and Gonchigdorj, S. (2015) Punctuated growth of microbial cones within early Cambrian oncoids, Bayan Gol Formation, western Mongolia. Palaios, 30, 836-845.
砂岩層に挟在するオンコイド層は,オンコイド-ウーイドgrainstone,ウーイド-オンコイドgrainstone,オンコイドgrainstoneから構成される.オンコイドは,微細組織に基づいて5タイプ(層状,一部波状,一部斑点状,斑点状,樹状タイプ)に分類される.発表では,明確に区分される層状,斑点状,樹状タイプを取り上げる.1)層状タイプは,層状ラミナで特徴付けられ,明層(幅0.5~2 mm)と暗層(幅0.5~2 mm)の互層が明瞭である.フィラメント状を示す石灰質微生物類Girvanellaが豊富で,明層ではラミナに対して垂直方向に,暗層では水平方向に分布する傾向がある.被覆部には,不規則形態の微小な空隙(直径0.2~2 mm)が多数発達するが,空隙内や空隙間で部分的にGirvanellaのフィラメントが認められる.2)斑点状タイプでは,ラミナが不明瞭であるが,暗色ミクライトからなるドーム状構造が散点的に発達する.ドーム状構造中では,短いフィラメント状を示す石灰質微生物類が豊富である.被覆部では,内部をぺロイド状粒子で充填された空隙(直径1 mm~10 mm)やウーイドが多く認められる.3)樹状タイプは,核の周りで放射状に樹状構造が発達することで特徴づけられる.樹状構造の内では,部分的にGirvanellaを含むラミナが認められる.空隙は稀である.一方,樹状構造間には,ぺロイド状粒子の他に石英粒子が稀に堆積する場合もある.
オンコイド層内では,ウーイドとオンコイドの占める割合が変化する.ウーイド優占のオンコイド-ウーイドgrainstoneでは斑点状タイプのオンコイドが多く,オンコイド優占のウーイド-オンコイドgrainstoneやオンコイドgrainstoneでは層状タイプのオンコイドが多くなる傾向がある.
検討したオンコイド層は,ウーイドを豊富に含むことから,浅海のウーイドによる砂瀬周辺で形成されたと推定される.層状タイプはGirvanellaが豊富な明暗のラミナで特徴付けられ,水流の影響で定常的に転がりながら,明層ではGirvanellaが活発に光合成をおこない垂直方向へ成長,暗層では水平方向に成長することで形成された.微小な空隙は,シアノバクテリアの光合成による酸素の泡の捕捉に由来すると説明された (Wilmeth et al., 2015).しかし,空隙内に微生物類のフィラメントが残存していることから,空隙は,微生物類の密集部の分解や,石灰化が弱い部分の溶解に起因すると考えられる.斑点状タイプでは,短いフィラメント状微生物類が多方向に成長することでドーム状構造を次々と発達させた.また,斑点状タイプではウーイドが被覆部にトラップされていることが多いことから,ラミナの発達が抑制された可能性がある.一方,樹状タイプでは,Girvanellaなどの微生物類が上方へと成長することで樹状構造を形成したが,水流の影響で稀に転がり,成長方向を変えることで樹状構造が放射状に発達したと推定される.樹状タイプは,石英粒子を多く含むことから,他のタイプとは異なり,陸源性砕屑物が頻繁に流入する環境で形成されたと考えられる.
〈引用文献〉
Wilmeth, D.T., Corsetti, F.A., Bisenic, N., Dornbos, S.Q., Oji, T., and Gonchigdorj, S. (2015) Punctuated growth of microbial cones within early Cambrian oncoids, Bayan Gol Formation, western Mongolia. Palaios, 30, 836-845.