日本地質学会第129年学術大会

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セッションポスター発表

T1.[トピック]変成岩とテクトニクス

[8poster01-13] T1.[トピック]変成岩とテクトニクス

2022年9月11日(日) 11:00 〜 13:00 ポスター会場 (ポスター会場)

[T1-P-6] (エントリー)山口県南部、大津島に産する変成岩類の変成作用

*LU ZEJIN1、大和田 正明1 (1. 山口大学創成科学研究科)


キーワード:高温低圧型、変成履歴、ジルコンU-Pb年代

1、地質概要 山口県南部には、三畳紀高圧型変成岩類(周防帯)、白亜紀領家変成深成複合岩体、白亜紀火山岩類が分布する。大津島は周防帯と領家帯の境界部に位置する。大津島に産する変成岩類は主に泥質片岩から構成され、珪質片岩や少量の石灰珪質片岩と変玄武岩を伴う。片理面は東西方向で北南に傾斜し、褶曲構造が認められる。また、南部には走向とほぼ平行で、20-30 ˚北傾斜の衝上断層が発達する。島の北東部には白亜紀の花崗岩が貫入している。
2、岩石記載 野外の産状から3ステージの変形作用が想定される。ステージ1:原岩の層理面とそれに平行な片理面の形成(S1面の形成)、ステージ2:波長数mの閉じた褶曲構造の形成と軸面劈開(S2面の形成)、ステージ3:衝上断層の形成(S3面の形成)。 泥質岩の鉱物組み合わせは以下の通り。ステージ1:黒雲母(Bt)、白雲母(Ms)、斜長石(Pl)、石英(Qtz)を含み、低変成度では緑泥石(Chl)、高変成度では紅柱石(And),珪線石(Sil),ざくろ石(Grt),菫青石(Crd)、カリ長石(Kfs)とコランダム(Crn)を含む。ステージ2では褶曲軸面に沿ってMsとBtが再結晶し、ステージ3は衝上断層沿いにのみ発達し、BtがChlに置換される。
3、変成分帯 ステージ1は最高変成時の組み合わせを示し、鏡下組織と鉱物組み合わせなどからBt zone、And-Crd zoneとSil zoneに区分できる。 
Bt zone:
 Bt+Ms±Chl 
And-Crd zone:
 Bt+Crd+And+Kfs; Bt+Ms+Grt±Kfs; Bt+Crd+Ms+Kfs±Chl; Bt+And+Ms 
Sil zone:
  Bt+Crn+Crd+Sil+Kfs; Bt+Grt+Kfs+Crd 
 各帯は、北から南へSil zone、And-Crd zoneそしてもっとも低変成度のBt zoneが分布し、向斜軸を挟んで再びAnd-Crd zone、Sil zoneが分布する。そして、ステージ3の衝上断層を挟んでAnd-Crd zoneの変成岩類が最南部に分布する。
4、議論 (1)変成履歴And-Crd zoneでは、Andの中にMsとQtzを包有されることから以下の反応が推定される:Ms+Qtz =And+Kfs+H2O。また、Crd中にはChlやMsが包有されることから、Chl+Ms+Qtz =Crd+Bt+H2Oの反応が想定される。これらは昇温期の変成作用に相当する。
 Sil zoneでは、面構造を形成するCrdがBtを含むことからSil+Bt+Qtz=Crd+Kfs+H2Oの反応が考えられる。Sil zoneはコランダム(Crn)を含むが、CrnはしばしばMsに置換される。これは、Crn+Kfs+H2O = Msが温度低下によって進行したことを示す。すなわち、大津島の変成岩は時計回りのP-T Pathを示すと推察される。
(2)大津島変成岩の原岩:大津島の砕屑性ジルコンの最も若いU–Pb 年代年代は249.2±1.3Maで、原岩の堆積年代はトリアス期であると考えられ、周防帯に相当し、その後、高温低圧型の変成作用を受けたと考えられる。先行研究による砕屑性ジルコン年代と変成作用の類似性から、田川北東地域約250Ma(柚原ほか、2021)、久留米地域260〜250Ma(Tsutsumi et al.,2003)、そして大牟田地域約250Ma(Miyazaki et al.,2017)も大津島と同じ地質体に属すると推察される。
参考文献
Tsutsumi, Y., Yokoyama, K., Terada, K. and Sano, Y., 2003, SHRIMP U–Pb dating of detrital zircons in metamorphic rocks from northern Kyushu, western Japan. J. Mineral.Petrol. Sci., 98, 181–193.
Miyazaki, K., Ikeda, T., Matsuura, H., Danhara, T., Iwano, H.and Hirata, T., 2017, A high-T metamorphic complex derived from the high-P Suo metamorphic complex in the Omuta district, northern Kyusyu, southwest Japan. Isl. Arc, 26, e12208, doi: 10.1111/iar.12208.
柚原 雅樹, 清浦 海里, 日髙 万莉亜, 外田 智千, 早坂 康隆, 北部九州東部に分布する田川変成岩類の変成作用, 地質学雑誌, 2021, 127 巻, 8 号, p. 447-459