[T2-P-4] Revision of the Mio–Pliocene Hoki Flora from the border area between Tottori–Okayama Prefectures, with its implications in paleovegetation, paleoclimate and paleogeography
Keywords:Mio–Pliocene, Plant macrofossil, Mitoku-type flora, Hoki Flora, Tottori–Okayama Prefectures
鳥取―岡山県境地域は後期中新世の陸上植物相を代表する三徳型植物群の模式地であり,当時地質調査所に所属していた棚井敏雅と尾上亨によって1961年に報告されて以来,多くの古植物学的研究が行われてきた(Tanai and Onoe, 1961; Ozaki, 1979, 1980a, b, 1981; Uemura, 1986など).Tanai and Onoe (1961)は,「三徳型」の名前の由来となった三徳植物群(鳥取県三朝町吉原)とともに,人形峠植物群(鳥取―岡山県境)と恩原植物群(岡山県鏡野町)という大型植物化石群集を報告し,それら3つをあわせて伯耆植物群と呼んだ.これらの植物化石群集は温帯性の落葉広葉樹と針葉樹に若干の常緑広葉樹を含む組成で,特に後2者にムカシブナFagus stuxbergiを多く含むなど組成的類似性があるものの,中期中新世からつづく温暖要素の割合などに違いが認められていた.Tanai and Onoe (1961)は,その原因を化石群集の時代差に求め,中期中新世以降,鮮新世まで一様に寒冷化するという当時の古気候論に沿って,もっとも温暖な組成を持つ三徳植物群を後期中新世に,恩原植物群を中新―鮮新世に,人形峠植物群を鮮新世に対比した.これら鳥取―岡山県境域の中新―鮮新統は主として陸成層(湖成層)からなり,層序が複雑であることに加え,近年まで信頼性の高い放射年代値も得られずにいたため,その後の地質学的研究の中では,しばしば植物化石にもとづいた化石群集の時代論が参照されていた.しかし,近年得られるようになった年代値や花粉層序学的なデータは,これらの時代論に見直しが必要なことを示唆していた(Yabe and Yamakawa, 2017).演者らは,日本の温帯林植生の起源を考える上で重要な「三徳型」の時代や環境そして植生の広がりを解明するため,現在,伯耆植物群の再検討を進めている(清水ほか, 2022).講演では,赤木ほか(1984)で報告され,吉原と同層準と推測される三朝成の化石群集の検討結果と,新たに得られたU-Pb年代の測定結果を報告するとともに,峠を挟んで恩原と対照的な位置にあり,層序学的に対比可能な辰巳峠植物群化石産地での花粉分析結果(齊藤・市谷, 2007)を踏まえて,伯耆植物群が互いにほとんど時代の変わらない堆積物であり,概ね5-6Maの年代に集中することを述べる.また,三朝成での研究から,少なくとも同化石群集については,当時成立した内陸湖近傍の植生を反映していると予想されることから,植物化石群集の組成から堆積盆の高度などを議論して,中国地方のテクトニクスの議論に貢献できるデータとなる可能性がある.
<参考文献>
赤木三郎ほか, 1984, 鳥取大教育研報. 自然, 33: 49-70; Ozaki, K., 1979, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (26), p. 31-56; Ozaki, K., 1980a, Bull. Natl. Sci. Mus., C, 6: 33-58; Ozaki, K., 1980b, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (27): 19-45; Ozaki, K., 1981, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (28): 47-75; Uemura, K., 1986, Bull. Nat. Sci. Mus., C, 12: 121-130; 齊藤 毅・市谷年弘, 2007, 日本花粉学会会誌, 53, 29-39; 清水道代ほか, 2022, 鳥取地学会第27回総会・記念講演会・研究発表会講演要旨, 11-12; Tanai, T. and Onoe, T., 1961, Rept. Geol. Surv. Japan, (187): 1-63; Uemura, K., 1986, Bull. Nat. Sci. Mus., C, 12: 121-130; Yabe, A. and Yamakawa, C., 2017, Paleont. Res., 21: 309-328.
<参考文献>
赤木三郎ほか, 1984, 鳥取大教育研報. 自然, 33: 49-70; Ozaki, K., 1979, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (26), p. 31-56; Ozaki, K., 1980a, Bull. Natl. Sci. Mus., C, 6: 33-58; Ozaki, K., 1980b, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (27): 19-45; Ozaki, K., 1981, Sci. Repts. Yokohama Natl. Univ., II, (28): 47-75; Uemura, K., 1986, Bull. Nat. Sci. Mus., C, 12: 121-130; 齊藤 毅・市谷年弘, 2007, 日本花粉学会会誌, 53, 29-39; 清水道代ほか, 2022, 鳥取地学会第27回総会・記念講演会・研究発表会講演要旨, 11-12; Tanai, T. and Onoe, T., 1961, Rept. Geol. Surv. Japan, (187): 1-63; Uemura, K., 1986, Bull. Nat. Sci. Mus., C, 12: 121-130; Yabe, A. and Yamakawa, C., 2017, Paleont. Res., 21: 309-328.