[T4-P-4] (エントリー)沖縄県久米島の礁性微生物皮殻中に見られるスフェルライトの起源
キーワード:微生物岩、礁性微生物皮殻、スフェルライト、ホヤ骨片
微生物岩は過去37–35億年間の生命活動や地球環境を記録しており,近年では石油貯留岩など資源的な観点からも注目されている.微生物岩は,先カンブリア時代では広く見られた一方で,現在の海洋環境にはほとんど見られないことから,モダンアナログを用いた形成過程の研究はあまり進んでいなかった.しかしながら近年,サンゴ礁石灰岩の空隙中に礁性微生物皮殻 (RMC; reefal microbial crusts) や骨格内・穿孔充填微生物岩 (IBFM; intra-skeletal and boring-filling microbialite) が発見され,微生物岩のモダンアナログとして注目を集めている.そこで本研究は,沖縄県久米島の完新統サンゴ礁石灰岩中に見られるRMCおよびIBFMの特徴を調べた. RMCは主に無節サンゴモの表面を被覆しており,一方のIBFMはサンゴモ中に形成された穿孔内を部分的に充填していた.これら微生物岩の内部またはその近傍にはスフェルライトが見られた.一般的にスフェルライトは微生物岩中によくみられるため,しばしば微生物起源とされる.しかしながら,顕生代ではホヤが骨片としてスフェルライトを形成することから,それらの解釈には注意が必要である.そこで本研究は,久米島に生息する現生ホヤも採集し,偏光顕微鏡などを用いてRMCおよびIBFMに含まれるスフェルライトと比較した.観察したホヤ骨片は球状または突起を持った金平糖状の外形を呈し,内部は針状結晶の太い束が複数集合して構成されていることが薄片上の消光パターンとして確認された.同様の特徴を示すスフェルライトはRMCおよびIBFMにも含まれており,それらはホヤ骨片起源であると考えられる.しかしながら,RMCおよびIBFM近傍の空隙中のスフェルライトは,細い針状結晶が放射状に配列しており,隣接するスフェルライトと密接しているためにその外形は他形を示した.さらには,内部には直径約1ミクロンのフィラメント状構造がしばしば認められ,中心部から放射状に配列する場合もあった.このような特徴はホヤ骨片とは明らかに異なっていることから,微生物起源である可能性が考えられ,今後の検討によってその成因が特定できると期待される.