[T6-P-1] (エントリー)西南日本外帯秩父帯,高知県梼原地域の蛇紋岩と地質構造形成史
キーワード:蛇紋岩、秩父帯、デュープレックス構造、クロムスピネル
【はじめに】 蛇紋岩層は,沈み込み帯の形成史を語るうえで重要な岩石であり,地帯構造区分境界の分類において,最も重要とされるものの一つとされている(磯崎ほか,2010).対象地域である高知県高岡郡梼原町は,西南日本外帯で最大級の層厚を持つ蛇紋岩層とペルム紀の付加体から白亜紀の堆積岩類までといった幅広い年代の地層を持つ.本地域の地質構造は,広域的に,辻󠄀(2014),村田・前川(2013),Ishizaki(1962)によって明らかにされており,白亜紀堆積岩類に関しては,香西ほか(1991)および甲藤ほか(1994)によって議論されている.しかし,蛇紋岩層の記述および蛇紋岩層から見た本地域の地質学的見解は乏しい.そのため,蛇紋岩層と周辺地層の構造関係の理解を目的とし,蛇紋岩中クロムスピネルの化学組成分析および地質調査を行った.
【地質概要・手法】 本調査地域は,北域からペルム紀付加体である大野ヶ原ユニット,トリアス紀変成岩類である四万川ユニット,中央域に白亜紀堆積岩類,田野々断層を挟みジュラ紀付加体である大平山ユニットとその南域にジュラ紀堆積岩類の鳥巣層群が分布する.このうち,蛇紋岩層は,大野ヶ原ユニットの南限断層付近,四万川ユニットの中央部,白亜紀堆積岩類の境界部に位置する.
クロムスピネルの化学組成分析は,山口大学機器分析センターにある電子マイクロアナライザ(EPMA:JXA-8230)の波長分散型分光器(WDS)を用いて行った.
【結果】 本地域の蛇紋岩層を,単斜輝石岩,かんらん石輝石岩,結晶片岩のブロックを含むタイプAと,それらを含まないタイプBに区分した.タイプAは,東側蛇紋岩体と田野々断層沿いの蛇紋岩層である.タイプAの一部である東側蛇紋岩体はデュープレックス構造を形成しており,大野ヶ原ユニットの緑色岩やチャートの一部と同調した分布,白亜紀堆積岩類の東西方向への不連続性,そして白亜紀堆積岩類の東へのプランジ(礫岩の分布)が確認できる.タイプBは,西側蛇紋岩体と四万川ユニット中の蛇紋岩,白亜紀堆積岩類北限・南限断層に沿って分布する蛇紋岩が対象である.その一部である西側蛇紋岩体で一貫した複合面構造のTop-to-the-Southの剪断センス成分を観察した.また,これらのクロムスピネルの分析結果としてCr# = 0.67-0.78, Mg# = 0.33-0.45, TiO2 < 0.3 w%という値を得た. これらに加えて,タイプAに属する東側蛇紋岩体付近で,蛇紋岩礫を含む泥質砕屑岩の露頭を観察した.露頭位置は,太田戸川中流付近に分布する.黒色の泥質な基質であり,蛇紋岩岩片を含むことが特徴である.露頭位置は白亜紀堆積岩類中であるが,黒色の泥質基質を持つ特徴から,白亜紀堆積岩類との違いを確認した.
【考察】 本地域の形成史の考察を以下に示す.1)ペルム紀付加体である大野ヶ原ユニットが付加した後,トリアス紀変成岩類である四万川ユニットの接合. 2)横ずれ断層によるプルアパートベイズンの形成により白亜紀堆積岩類の堆積. 3)褶曲および白亜紀堆積岩類の北限・南限を切る断層の形成.同様の断層運動により圧砕花崗閃緑岩および石英に富む花崗質岩が併入.4)タイプBの蛇紋岩がTop-to-the-Southの剪断センス成分を伴い定置.5)大野ヶ原ユニットが調査地域中央部でデュープレックスを形成し,タイプAの蛇紋岩が定置.6)デュープレックス構造の形成による変動により,蛇紋岩片を含む泥質砕屑岩を形成したと考えられる.また,本地域の蛇紋岩の原岩形成のテクトニックセッティングは,島弧から前弧域で形成された可能性が高く,それらが,本地域の地形形成後に貫入および併入したと考えられる.
【参考文献】 Ishizaki (1962) Strati graphical and Paleontological Studies, Tohoku University. 134-136.磯崎ほか .(2010) 地学雑誌, 119, 1022-1026. 甲藤ほか (1994) 高知大学学術研究報告,32,193-199.香西ほか (1991) 高知大学学術研究報告, 40, 223-236. 辻 (2014) 博士論文 23-25.村田・前川 (2013) 徳島大学ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 27 ,89-98.
【地質概要・手法】 本調査地域は,北域からペルム紀付加体である大野ヶ原ユニット,トリアス紀変成岩類である四万川ユニット,中央域に白亜紀堆積岩類,田野々断層を挟みジュラ紀付加体である大平山ユニットとその南域にジュラ紀堆積岩類の鳥巣層群が分布する.このうち,蛇紋岩層は,大野ヶ原ユニットの南限断層付近,四万川ユニットの中央部,白亜紀堆積岩類の境界部に位置する.
クロムスピネルの化学組成分析は,山口大学機器分析センターにある電子マイクロアナライザ(EPMA:JXA-8230)の波長分散型分光器(WDS)を用いて行った.
【結果】 本地域の蛇紋岩層を,単斜輝石岩,かんらん石輝石岩,結晶片岩のブロックを含むタイプAと,それらを含まないタイプBに区分した.タイプAは,東側蛇紋岩体と田野々断層沿いの蛇紋岩層である.タイプAの一部である東側蛇紋岩体はデュープレックス構造を形成しており,大野ヶ原ユニットの緑色岩やチャートの一部と同調した分布,白亜紀堆積岩類の東西方向への不連続性,そして白亜紀堆積岩類の東へのプランジ(礫岩の分布)が確認できる.タイプBは,西側蛇紋岩体と四万川ユニット中の蛇紋岩,白亜紀堆積岩類北限・南限断層に沿って分布する蛇紋岩が対象である.その一部である西側蛇紋岩体で一貫した複合面構造のTop-to-the-Southの剪断センス成分を観察した.また,これらのクロムスピネルの分析結果としてCr# = 0.67-0.78, Mg# = 0.33-0.45, TiO2 < 0.3 w%という値を得た. これらに加えて,タイプAに属する東側蛇紋岩体付近で,蛇紋岩礫を含む泥質砕屑岩の露頭を観察した.露頭位置は,太田戸川中流付近に分布する.黒色の泥質な基質であり,蛇紋岩岩片を含むことが特徴である.露頭位置は白亜紀堆積岩類中であるが,黒色の泥質基質を持つ特徴から,白亜紀堆積岩類との違いを確認した.
【考察】 本地域の形成史の考察を以下に示す.1)ペルム紀付加体である大野ヶ原ユニットが付加した後,トリアス紀変成岩類である四万川ユニットの接合. 2)横ずれ断層によるプルアパートベイズンの形成により白亜紀堆積岩類の堆積. 3)褶曲および白亜紀堆積岩類の北限・南限を切る断層の形成.同様の断層運動により圧砕花崗閃緑岩および石英に富む花崗質岩が併入.4)タイプBの蛇紋岩がTop-to-the-Southの剪断センス成分を伴い定置.5)大野ヶ原ユニットが調査地域中央部でデュープレックスを形成し,タイプAの蛇紋岩が定置.6)デュープレックス構造の形成による変動により,蛇紋岩片を含む泥質砕屑岩を形成したと考えられる.また,本地域の蛇紋岩の原岩形成のテクトニックセッティングは,島弧から前弧域で形成された可能性が高く,それらが,本地域の地形形成後に貫入および併入したと考えられる.
【参考文献】 Ishizaki (1962) Strati graphical and Paleontological Studies, Tohoku University. 134-136.磯崎ほか .(2010) 地学雑誌, 119, 1022-1026. 甲藤ほか (1994) 高知大学学術研究報告,32,193-199.香西ほか (1991) 高知大学学術研究報告, 40, 223-236. 辻 (2014) 博士論文 23-25.村田・前川 (2013) 徳島大学ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 27 ,89-98.