[T7-P-3] 福岡県西部,糸島半島周辺に産する花崗岩類の年代値
キーワード:北部九州、花崗岩類
北部九州には白亜紀に活動した花崗岩類が広く分布しており,現在17岩体に区分されている(大和田・亀井,2010など).福岡県西部に位置する糸島半島周辺には,糸島花崗閃緑岩,北崎トーナル岩,志賀島花崗閃緑岩及び深江花崗岩の4岩体が分布する.本発表では,糸島花崗閃緑岩2試料,北崎トーナル岩1試料,志賀島花崗閃緑岩1試料,深江花崗岩1試料の年代測定の結果を報告するとともに,冷却史についても考察する.一部の年代データは昨年の地質学会にて発表したが,新たに得られた年代データとあわせて改めて報告する.
糸島花崗閃緑岩は北部九州で最も広く産する白亜紀花崗岩体で,東西約60km,南北約35kmの分布面積を誇る.また,同地域で最も初期に活動した花崗岩体ともされ,深江花崗岩,佐賀花崗岩,早良花崗岩,福岡花崗岩,三瀬花崗岩に貫かれる.北崎トーナル岩は糸島花崗閃緑岩とは変成岩のルーフを挟んで北側に分布し,さらに北側には志賀島花崗閃緑岩が分布する.志賀島花崗閃緑岩は北崎トーナル岩を貫き,累帯深成岩体を形成する.深江花崗岩は脊振山地南部に広く産するほか,糸島花崗閃緑岩に伴って散点的に産する.
糸島花崗閃緑岩,北崎トーナル岩及び志賀島花崗閃緑岩については,同一露頭のサンプルを用いて,ジルコンU-Pb年代,黒雲母K-Ar年代及びジルコンFT年代を測定した.また,深江花崗岩はジルコンU-Pb年代のみ測定した.糸島花崗閃緑岩からは106.1±0.9Ma ,105.0±1.4MaのジルコンU-Pb年代,96.1±2.1Ma,91.4±2.0Maの黒雲母K-Ar年代,105.1±4.7Ma,101.5±6.1MaのFT年代が得られ,北崎トーナル岩からは111.5±1.3MaのジルコンU-Pb年代,94.3±2.1Maの黒雲母K-Ar年代,100.±6.0MaのFT年代,志賀島花崗閃緑岩からは110.1±0.5MaのジルコンU-Pb年代,92.9±2.0Maの黒雲母K-Ar年代,100.8±6.0MaのFT年代が得られた.深江花崗岩からは100.3±0.5MaのジルコンU-Pb年代が得られた.
年代測定の結果,北崎トーナル岩のジルコンU-Pb年代が最も古く,最初期に活動した可能性が示された.さらに,北崎トーナル岩に貫入する志賀島花崗閃緑岩も糸島花崗閃緑岩より古い年代を示すため,累帯深成岩体を形成した一連のマグマ活動が,糸島花崗閃緑岩マグマの活動に先立って起こった可能性が考えられる.
一方,一般的な各年代測定の閉鎖温度はジルコンU-Pb年代が約900℃,黒雲母K-Ar年代が約300-350℃,FT年代が約250℃とされる.このことを踏まえるとFT年代が最も若い年代を示すと推測されるが,糸島花崗閃緑岩,北崎トーナル岩,志賀島花崗閃緑岩の3岩体4試料については,黒雲母K-Ar年代が最も若い値を示したため,年代値の扱いや冷却史の解釈には慎重な考察が必要である.この点について本発表では,測定鉱物の粒径と閉鎖温度の関係から検討を行う.
【引用文献】大和田・亀井 (2010) 日本地方地質誌 8, 朝倉書店, 304–311.
糸島花崗閃緑岩は北部九州で最も広く産する白亜紀花崗岩体で,東西約60km,南北約35kmの分布面積を誇る.また,同地域で最も初期に活動した花崗岩体ともされ,深江花崗岩,佐賀花崗岩,早良花崗岩,福岡花崗岩,三瀬花崗岩に貫かれる.北崎トーナル岩は糸島花崗閃緑岩とは変成岩のルーフを挟んで北側に分布し,さらに北側には志賀島花崗閃緑岩が分布する.志賀島花崗閃緑岩は北崎トーナル岩を貫き,累帯深成岩体を形成する.深江花崗岩は脊振山地南部に広く産するほか,糸島花崗閃緑岩に伴って散点的に産する.
糸島花崗閃緑岩,北崎トーナル岩及び志賀島花崗閃緑岩については,同一露頭のサンプルを用いて,ジルコンU-Pb年代,黒雲母K-Ar年代及びジルコンFT年代を測定した.また,深江花崗岩はジルコンU-Pb年代のみ測定した.糸島花崗閃緑岩からは106.1±0.9Ma ,105.0±1.4MaのジルコンU-Pb年代,96.1±2.1Ma,91.4±2.0Maの黒雲母K-Ar年代,105.1±4.7Ma,101.5±6.1MaのFT年代が得られ,北崎トーナル岩からは111.5±1.3MaのジルコンU-Pb年代,94.3±2.1Maの黒雲母K-Ar年代,100.±6.0MaのFT年代,志賀島花崗閃緑岩からは110.1±0.5MaのジルコンU-Pb年代,92.9±2.0Maの黒雲母K-Ar年代,100.8±6.0MaのFT年代が得られた.深江花崗岩からは100.3±0.5MaのジルコンU-Pb年代が得られた.
年代測定の結果,北崎トーナル岩のジルコンU-Pb年代が最も古く,最初期に活動した可能性が示された.さらに,北崎トーナル岩に貫入する志賀島花崗閃緑岩も糸島花崗閃緑岩より古い年代を示すため,累帯深成岩体を形成した一連のマグマ活動が,糸島花崗閃緑岩マグマの活動に先立って起こった可能性が考えられる.
一方,一般的な各年代測定の閉鎖温度はジルコンU-Pb年代が約900℃,黒雲母K-Ar年代が約300-350℃,FT年代が約250℃とされる.このことを踏まえるとFT年代が最も若い年代を示すと推測されるが,糸島花崗閃緑岩,北崎トーナル岩,志賀島花崗閃緑岩の3岩体4試料については,黒雲母K-Ar年代が最も若い値を示したため,年代値の扱いや冷却史の解釈には慎重な考察が必要である.この点について本発表では,測定鉱物の粒径と閉鎖温度の関係から検討を行う.
【引用文献】大和田・亀井 (2010) 日本地方地質誌 8, 朝倉書店, 304–311.