[T8-P-1] 土佐山内家大名の墓石に使用された花崗岩の産地同定
【zoomによるフラッシュトーク有り】9/11(日)9:45-9:50
キーワード:花崗岩、磁化率、粒径、土佐山内家、墓石
全国各地には江戸時代に造営された荘厳な大名墓所が存在し、その墓所内には数メートル規模の巨石で制作された墓石が奉られており、その巨大な墓石は当時の世相を映す鏡となっている。また、大名の墓石に使用されている石材の産地、および運搬工程は当時の文化産業を知る手がかりとなりうるが、石材産地に関する文献記録が少なく、産地不明の墓石が多い。高知市筆山の北麓にある土佐藩主山内家大名墓所には花崗岩で制作された大名墓石(一代、二代、九代藩主)があるが(高知県、2015)、その産地については議論が残されていた。そこで本研究では、山内家の大名墓所の墓石を対象に非破壊岩石分析によりカリ長石の色、帯磁率、有色鉱物の粒径を計測した。非破壊分析で得られた墓石の特徴について、高知県南西部で産出される花崗岩と瀬戸内海で石材用として採取されてきた13地域の山陽花崗岩と比較を行い、石材産地の推定を試みた。花崗岩に含まれるカリ長石は白色から赤色を示すが、墓石のカリ長石は肉眼観察では白色を示した。帯磁率の平均値はいずれの大名墓碑も0.3~0.5×10-3 SIを示し、ガウス分布に従った。また、花崗岩に含まれる有色鉱物の粒径は対数正規分布に従うとともに、全鉱物に対して有色鉱物の占める割合(含有率)と粒径は他の花崗岩と比較して大きい特徴を示した。以上の3つの特徴は高知県南西部大月町(頭集・古満目地区)で産出する花崗岩にも認められた(図1)。一方、山陽花崗岩についてはすべての特徴が合致する花崗岩は確認できなかった。本研究の結果、山内家大名の墓石は高知県南西部の大月町産の花崗岩から制作されたものである可能性が高いことが分かった。江戸時代以前の中世に造られた高知県の石造物はおおむね六甲御影石(山陽花崗岩)由来だと言われている(市村、2013)。本研究結果は江戸時代前後に高知県の石材の流通ルートの変遷とその原因について重要な示唆を与える。
[文献]
高知県(2015)土佐藩主山内家墓所調査報告書、高知県文化生活部文化推進課、167p
市村高男(2013)御影石と中世の流通、高志書院、282p
[文献]
高知県(2015)土佐藩主山内家墓所調査報告書、高知県文化生活部文化推進課、167p
市村高男(2013)御影石と中世の流通、高志書院、282p