[認定P-20] 胃瘻により栄養管理している重度のパーキンソン病患者へ評価および訓練指導を行い,経口摂取を継続した症例
【緒言・目的】 パーキンソン病は軽度の場合でも摂食機能障害の症状がみられることがあり,重度になればより経口摂取は困難とされ禁食を継続している患者が多い。本症例では嚥下機能評価および訓練指導を行い,経口摂取を継続可能となったため報告する。 【症例および経過】 85歳女性。パーキンソン病のHpehn & Yahr stage 5で自宅で寝たきりの状態で,長期に胃瘻で栄養管理し,お楽しみの範囲で経口摂取をしていた。誤嚥性肺炎を短期間に繰り返したため,担当医より禁食の指示となったが,患者本人の経口摂取の希望が強く,禁食開始から6ヶ月後に訪問かかりつけ歯科から当科に依頼を受けた。初診時は覚醒し,意思疎通は可能だった。口腔内は残存歯が少なく,義歯もないため咀嚼は困難な状態であった。また,口腔機能が低下し,発音は不明瞭だった。嚥下内視鏡検査にて痰の貯留や嚥下反射の遅延があったが,ベッド上座位の状態で頸部前屈位の姿勢にし,一口量は小スプーン1杯量に調整することで直接訓練が可能と判断したため,家族に摂取方法を指導し,嚥下調整食学会分類2021コード1jから開始した。当科は月1回の頻度で介入して、嚥下機能評価および家族への訓練指導を行うと共に,週1回に介入している訪問のかかりつけ歯科に舌訓練を依頼した。介入後は徐々に痰の量が減少し口腔機能が向上し,コード3まで摂取可能になった。現在はパーキンソン病の進行により覚醒状態が不良な時はあるが,ゼリーや全粥をお楽しみの範囲で経口摂取を継続している。なお本症例の発表に対し,患者より同意は得ている。 【考察】 本症例でHpehn & Yahr stage 5という重度でも嚥下内視鏡検査後に食事方法や訓練指導を行ったことで経口摂取の再開および継続が可能となった。寝たきりや病態の重症度を考慮して禁食にせざるを得ないことはあるが,評価や訓練,指導を行い,かかりつけ歯科と連携をとって治療計画の立案,遂行をすることにより経口摂取の可能性があることを本症例で示した。歯科医師として多職種や家族と連携した上で患者の生活環境および全身状態を考慮し,口腔および嚥下機能に視点を向けたことで患者のQOLを上げることに寄与することができると本症例で考えられた。 (COI開示:なし,倫理審査対象外)