一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター6

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-29] パーキンソン病の進行がある患者を訪問歯科診療にて口腔衛生管理と口腔機能管理を行った症例

○山下 裕輔1、西 恭宏2 (1. 山下歯科、2. 鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科 口腔顎顔面補綴学分野)

【緒言・目的】 歯科処置に加え,口腔衛生管理と口腔機能維持を目的として訪問歯科診療にて介入したパーキンソン病患者の症例について報告する。 【症例および経過】 86歳,パーキンソン病,レビー小体型認知症,起立性低血圧症,前立腺肥大症を有するほぼ寝たきりの男性。2016年7月,歯痛により訪問歯科診療が開始し,2019年4月から担当医となり,主に口腔衛生管理と口腔機能管理を週1回行っている。認知機能の低下は少なく,パーキンソン病は徐々に進行し,手指振戦,筋拘縮,下顎運動のジスキネジアを認め,セルフケアが困難で食物残渣やプラークが付着し,口腔衛生不良であった。家族も高齢で口腔清掃が難しくカリエスが進行し,抜歯と義歯作製を繰り返した。現在歯は,7654321┴12,上顎は部分床義歯,下顎は全部床義歯を装着している。口腔機能検査は,口腔水分量(ムーカス):20.6,咬合力(残存歯数)6本,舌口唇運動機能:/pa/:4.8回/秒,/ta/:4.8回/秒,/ka/:3.2回/秒,舌圧:17.8kPa,咀嚼能力:111mg/dlで,舌の可動域が少ないため,あいうべ体操,舌・口輪筋の訓練,歌を歌う訓練を指導した。パーキンソン病のon-off現象で調子が良いときは,訓練を積極的に取り組んでいる。これらの結果,食物残渣やプラークは減少した。食事は,ビフテキを食べたいとの希望もあり肉類はペースト食からきざみ食に変更できた。口腔機能は再評価にて,改善は認められなかったが,舌の可動範囲は増えた。また,訓練によって意欲的に声を発するようになり,デイケアでのカラオケ大会出場の目標を持っている。 なお,本報告の発表は患者本人から文書による同意を得ている。 【考察】 退行性疾患に対して口腔機能維持を図ることは難しかった。機能低下が進行する中で,誤嚥性肺炎防止には口腔衛生状態を保つことが重要である。しかし,口腔衛生管理は,毎日多職種が介入し,家族に負担が生じるため週1回の専門的ケアの介入になり,う蝕を進行させ口腔環境の維持が困難だった。多職種連携により口腔ケアの強化の必要が考えられる。今後,訪問の依頼患者は増えてくるが,外来患者のように口腔機能の維持・改善だけでなく,適切で十分な栄養を摂取でき,全身疾患の悪化につながらない口腔衛生状態を保つための歯科診療を行う必要があると感じた。 (COI開示:なし) (倫理審査対象外)