一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター6

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-30] 訪問診療にて認知症患者とのラポール形成により新義歯製作に成功した症例

○續木 アナスタシア1、小林 健一郎1 (1. こばやし歯科クリニック)

【緒言・目的】
 義歯装着による咀嚼機能の回復が期待できる一方、認知症患者は歯科治療に非協力的な場合がよくみられる。特に義歯不適合により疼痛を知覚しても調整が十分に行わないまま義歯の使用を諦めて、軟食中心に食事することで、義歯の必要性が感じない患者が少なくない。今回、訪問診療にて認知症患者とのラポール形成により新義歯製作に成功した経験したので報告する。
【症例および経過】
 88 歳,女性。現病歴:アルツハイマー型認知症、不安症、高血圧症。脳梗塞の既往あり。2021年10月に左下5の自発痛のため施設に訪問。左下5は全部鋳造冠、失活歯で根尖病巣を認めなかった。下顎の部分床義歯が不適合のため未使用。初診時左下5の咬合調整及び下顎の部分床義歯のクラスプ調整を行ったが、義歯の安定が得られなかった。患者が義歯に対して消極的で、使用しないため新製作を断れた。症状が収まったが、経過観察及び口腔衛生管理のために定期的に訪問診療を続けた。
 2022年5月に左下5の歯根破折により炎症が発症し、保存的治療が不可能と判断し抜歯を行った。抜歯後、口腔機能低下症の検査を行い、咬合力低下(残存歯16本)、舌口唇運動機能低下(/pa/ 5.8 /ka/5.4回/秒)及び低舌圧 (20.2kPa)が認められた。患者に検査結果や義歯使用の必要性について説明し、新義歯製作の同意が得られた。
 なお、本発表について患者本人から文書による同意を得ている。
【考察】
 義歯装着後は疼痛や違和感がなく、食事も早い段階からできるようになった。咀嚼機能の上昇(117から178 mg/dL)が確認できた。現在は訪問診療で定期的に咬合確認と口腔衛生管理を行なっている。初診から新義歯製作までに約9ヶ月かかったが、継続的な訪問診療を行うことで、患者との信頼関係と義歯の必要性の理解が深まり、義歯装着と咀嚼機能改善につながった。本症例は、認知症患者の訪問診療で定期的な口腔機能管理の重要性を示していると考えられる。
(COI開示:なし) (倫理審査対象外)