一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター7

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-34] 口腔機能低下症患者に対し補綴治療ならびに口腔周囲筋訓練を行い、口腔機能が改善した症例

○谷 明日香1、柏﨑 晴彦1 (1. 九州大学病院高齢者歯科・全身管理歯科)

【緒言・目的】
多数歯欠損の高齢者において、義歯装着のみならず口腔周囲筋に対する運動での口腔機能向上や栄養状態改善が大切である。今回、歯の喪失による咀嚼機能低下が見られた患者に対して義歯の作製により咀嚼機能回復を行った。その後、口腔機能精密検査を実施し、口腔機能低下を認め口腔機能向上体操(以下、体操)を実施して口腔機能の改善を認めた症例を経験した。
【症例および経過】
77歳男性。2021年3月に前医の退職に伴い治療を開始した。欠損部顎堤は高度に吸収を認めたが前歯部顎堤の水平的対向関係は正常であった。残存歯は上顎5本と残根2本、下顎2本で咬合支持はなく、Eichnerの分類C1、宮地の咬合三角ではareaⅣであった。有床義歯の使用がなく、咀嚼機能低下を認め、咀嚼能力検査の実施は不可能であった。口腔清掃時にバランスの取れた食事摂取のために臼歯部咬合の必要性を説明して、義歯の製作を開始した。下顎残存歯の歯冠補綴物の再製作と、多数欠損歯および咀嚼障害に対して有床義歯を製作、調整を継続した。咬合が安定した後に口腔機能精密検査を実施したところ、咬合力(デンタルプレスケールⅡ)および舌口唇運動機能(オーラルディアドコキネシス(ODK))の低下が見られ、口腔機能低下症と診断し、口腔周囲筋に対する本体操を提供した。義歯を装着したことで、臼歯部咬合および咬合高径を回復した。本体操実施から1週間で咬合力が214Nから351N、ODK/ta/が5.4回/秒から6.0回/秒、/ka/は4.8回/秒から5.6回/秒に改善を認めた。しかし、舌圧は32kPaで変化は認めなかった。また、山本式咀嚼能率判定表では、摂食可能食品数8から19種類に増加し、肉類の咀嚼も問題なく行えるようになった。 なお、本報告の発表について患者本人からの文書による同意を得ている。
【考察】
慢性辺縁性歯周炎及び多数欠損歯に起因する咀嚼障害に対して義歯を作製後、口腔機能精密検査を実施し口腔機能低下症と診断した患者に対して口腔周囲筋に対する機能向上体操を提供した。その結果、口腔周囲筋の改善が認められ、摂取できる食品の数も増加した。義歯装着者に対する継続的で効果的な栄養指導が摂取食品の多様性の向上につながることが報告されているため、口腔内の維持・管理と共に栄養指導を継続する予定である。COI開示:なし(倫理審査対象外)