一般社団法人日本老年歯科医学会 第34回学術大会

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認定医審査ポスター7

2023年6月16日(金) 12:00 〜 13:30 ポスター会場 (1階 G3)

[認定P-35] 右側下顎骨区域切除により口腔機能低下と低栄養リスクを認める高齢者に義歯製作と口腔機能向上を図った症例

○楠 尊行1、髙橋 一也1 (1. 大阪歯科大学高齢者歯科学講座)

【緒言・目的】
 フレイル予防において口腔機能改善の重要性が提唱されている。今回,右側下顎骨区域切除によって口腔機能低下と低栄養リスクを認める高齢者に対して義歯製作と機能回復訓練を指導したことによって口腔機能が向上した 1 例を経験したので報告する。

【症例および経過】
 80 歳,男性。多発性骨髄腫の既往あり。他院にて2021年2月に右下6部腐骨除去。腐骨除去後のMRONJにて病的骨折。9月に下顎骨区域切除,チタンプレートによる再建術。11月に顎義歯製作依頼で当科外来受診。口腔内診査,パノラマ写真により右側下顎骨の高度吸収を認めた。口腔精密検査によって舌圧と舌の巧緻性低下を認めたため,舌抵抗訓練と発音訓練を開始した。初診時のBMIは20.3であった。通法にしたがい義歯を製作し,人工歯は硬質レジン歯を使用し両側性平衡咬合を付与した。2022年2月に新義歯装着。調整を繰り返し3月には疼痛なく使用できるようになったが,5月まで義歯使用時の違和感があった。装着時から山本式咀嚼可能食品表改変シートを用いて,咀嚼可能食品を把握し,患者と配偶者に対して食事指導を行った。6月に義歯の違和感が消失したため機能回復訓練と食形態の変更を指導し,2023年1月,口腔機能の向上を認め,BMIは23.0となった。今後も,機能回復訓練を継続し経過観察を行う。
 なお,本報告の発表について患者本人から文書による同意を得ている。

【考察】
 硬質レジン歯を用いた両側性平衡咬合を付与し義歯の安定を図ったことで比較的早期に義歯に慣れることができたと考えられる。また,義歯装着前から口腔機能精密検査を行い,口腔機能の向上を目的とした訓練を行った事によって咀嚼能率は早期に改善を認めたと考えられる。オーラルディアドコキネシスの結果から特に奥舌の動きが低下していると考えられるが,発音訓練を継続することで徐々に機能回復している。また,キーパーソンである配偶者にも毎回治療に同席してもらうことで,食事風景の詳細な聴取が可能となり、患者本人だけでなく配偶者へも訓練指導を行うことができ,早期の機能回復につながったと考えられる。

(COI開示:なし)
(倫理審査対象外) 3例以下の症例報告